第18話 会者定離

このまま会わないこともできた。

Sとの約束の日の前夜、私は湯船に浸かりながら考えていた。


Sは一人暮らしの準備があるし、私もまた春から通う予備校で模試を受けながら後期の結果を待つ日々だ。


小学校の頃の友達も、中学に上がってすぐは頻繁にメールをしたものだが半年もすれば頻度は減り、気づけば年に1回ほぼ定型文の年賀状をやりとりするだけの仲になった。

彼女達が今どこで、何をしているのか私は知らない。


Sだって同じだ。今はかけがえのない存在に思えても、環境が変わり時間が経てぱそのうち忘れられる。

私達はその程度には単純な生き物なのだ。

忘れたくないこともいつか忘れてしまうのは、

そうでなければ生きていけないからだろう。

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