第15話 君の隣
私達は2年生になった。
高校生活最後のクラス分けで、私とSのクラスは別になった。
クラスが離れても関係ない、と思っていたけれどSとはどんどん疎遠になっていった。わだかまりは黒く深い湖のようにたしかにそこにあった。はじめのうちは、心配して話しかけに来てくれた人達も私とSの関係に決定的な亀裂が走ったことを察するとだんだん離れていった。
Sのいない毎日は灰色で寂しかった。
これは私にふさわしい罰だと己を嘲笑った。己に不相応な幸せを望んだ罪。不思議とSに対する怒りは湧かなかった。
失ったわけではない、ただ元通りになっただけだ。まるでこの1年間がなかったことみたいに。ただ、ゆるゆると時間だけが過ぎていく。
いつの間にか、Sのいない毎日に慣れるようになった。
幸いにも、中学から同じ部活仲間だったRとOがいてくれたおかげで少しは気が紛れた。
必死にSを繋ぎ止めていた時には顧みることもなく疎遠になっていた昔からの友は、私を受け入れてくれた。
Sとのことは知っていただろうが、口に出さないでただ傍にいてくれた。
私も、いつまでも塞ぎ込んでいては2人に申し訳ないと思い努めて明るく振る舞った。失った時間を取り戻すみたいに3人での時間を作り、Sを忘れる努力をした。
風の噂で、Sは新しいクラスでまた「お気に入り」を見つけたと聞いた。
私と同じで、冴えない、ぽっちゃりした、どんくさい子。
Sの隣は私だけの場所だったのに。
なんであんたが。私が負けるなんて。別に誰でも良かったのね。
廊下の角で、その子と腕を組んだSとすれ違った。
カッと頬が熱くなり、怒りや劣等感や悔しさがごちゃ混ぜになる。
何がいけなかった?どうすれば良かった?いつから私達は終わっていたんだろう。
Sに出会ってからの出来事が走馬灯のように思い出された。この世に2人で1つのような気持ちでいたのに、もう二度と同じ物を見て聞いて笑って泣いて分かち合うことはないのだ。
埋めようのない喪失感を味わいながら、私はしばらくその場に立ちつくしていた。
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