第8話 Sweet Sixteen①

うちの学校の一大イベント、それが学園祭だ。

生徒、教職員、保護者の全員に担当の係が割り振られ、1年間かけて準備する。

当日は一般客に校内を開放し、物販やお化け屋敷、ダンス、脱出ゲーム等の発表だけでなく学校ツアーなどオープンスクールの要素がある催しも行われる。


私は所属する研究会で、1部屋を他の団体(漫画研究会で床にテープで魔法陣を描いていた)と半分にして展示をした。前日までにディスプレイや装飾は済ませてあり、当日はBGMを流しながら部屋に交代制で当番するだけでいい。

シフトも終わり、他に特に仕事もない私はS達のダンス発表を見に行くことにした。


Sのダンスグループ、Sweet Sixteen(通称:SS)はメンバー全員がダンス経験者で、校内オーディション予選1位通過と鳴り物入りだ。

体育館は熱気に満ちていた。既にかなりの数の観客が集まり、ライトに照らし出された舞台を皆息を詰めて見つめている。メンバーが配置に付くなり照明が落ち、客席から待ってましたと言わんばかりに歓声があがる。

期待。興奮。とんでもないものを見せてくれるという予感。

事前にステージの衣装で校内を練り歩いて宣伝したり、学内外で告知をしていたためか開演5分前にも関わらずSSの集客力はかなりのものだった。

既にメンバーの名前を呼んだり、自作のうちわを振ったり、スマホを片手に撮影の準備をしている人もいる。

彼らはメンバーと親しい子だろう。


姿を見咎められないように人の間を縫って回り道しながら席を探す。

せっかくなら近くで見ないともったいないと思い、なんとか最前列の端に座る。


_____ねぇS、私はあなたのなんだろう。友達を名乗るのは少しおこがましい気がするし、かと言って下僕になるつもりはない。

なのになぜか、後ろめたい。

私には彼女の両親や親友を前に、友達を名乗る資格なんてない。

私がSに対して抱いてる感情は、友情や親愛なんて美しいものとはほど遠い、深くどろどろとしたものだ。

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