第5話 結び目①
教室に飾られた聖画を説明するシスターの言葉がなぜか印象に残っている。
マリア様が結び目を解いて私達の罪を贖ってくださるのだ____と。
シスターになるくらいだから、過去に相当辛い出来事でもあったのだろうとその時はぼんやり考えていた。
家庭や仕事、それまでの人生を捨てて信仰に一生を捧げるほどの経験ってなんだろう。
私もそんな思いを知る日が来るんだろうか。
毎週火曜日、私はSの委員会が終わるのを待つようになった。
ある時は図書館で、ある時は教室で。
先に帰っても良かったけれど、少しでも長くSとの時間が欲しくて用事もないのに放課後も残るようになった。簡単な宿題を済ませたり、日誌を書いたり、本を読んだり、職員室に質問にいったりして時間を潰した。
きっかけはSのお願いだった。
早めに終わると思うから待ってて、と彼女は言ったけれど、結局下校ぎりぎりまで長引いてすごく申し訳無さそうにしていたのを覚えている。
そのうち私はSに言われなくても理由をつけては放課後も残るようになった。
ある日私が自分を待っていることに気がついたSは驚いて、予想通り喜んでくれた。
遠慮がちに期待を込めた目を向けて
「待っててくれたの?」と聞くSに私は「たまたま用事があったから」と素っ気なく答えたけれど、本当は頬が少し熱くなったのは秘密だ。
Sと過ごすようになってから、少しずつ確実に私の成績は落ちていた。
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