じんせい

こたろ

ぼくのじんせい/かれのじんせい 幼少期/小学生編

ミレニアムだと世間が祭り騒ぎになった西洋の暦の2000年から数年がたったある日僕は生まれた。

正確に言うと生まれた記憶はないので、実感の上では「ある日いきなり自分が存在していることを認識した」が正しいのだろうが、僕は自分の「生まれた」と言われる日付が好きなので、その日に生まれたということを受け入れている。


僕は生まれた頃からわんぱくでやんちゃで、とにかく手の掛かる子供であったと自覚している。気に入らなければ泣き、反抗し、壁に頭突きを繰り出し、時には白目をむいて幼稚舎の先生に驚かれたこともあった。


そんな僕は幸運にも商社マンである父の転勤によって幼少期に米国に住んでいた。余りにも興味が尽きず、目を離すとすぐ何処かへと徘徊して行ってしまうため、「安全を保証できない」とナーサリーを退園になったこともあった。母親はあなたは2歳まではただ可愛かったのに、3歳からはイタズラっ子になってしまったねと言われたこともあった。

そんな手のかかる小坊主を産んでしまった両親には今も頭は上がらない。


自分が他と違うことを自覚したのは、帰国して小学の2年に上がったころであった。当時も色々に興味が尽きなかった僕は、入学から1年が経ち環境に慣れてきたので立ち歩きがちになった。当然、他の級友からの目は好ましくないものとなる。そして3年に上がった時には、クラスも変わり(僕の小学校は2年に一度クラス替えがあったのである)、僕をよく知らない級友は口々に不平を言うようになった。


当然僕が悪いのだが、僕は自分の飽くなき探究心のままに日々新たな発見を積み重ねるのに夢中で、若干8歳の少年には周りを慮る心などまるで備わっていなかった。しかし、問題行動があるたびに母が呼び出され、教師に謝っていた。時期に学区の中学校に進学するのでは肩身が狭かろうということで両親が中学受験を勧めてくれたが、これが学校になんらかの方法で伝わってしまった。当時の担任に言われた言葉は未だ心に深く刺さっている。


「受験だなんてあなたは無理。養護学校をお勧めするわ。」


養護学校という言葉は、ものを知らない小学生の僕にも理解に難くなかった。

「自分は周りと違う。自分はおかしいんだ。」

そう思って自暴自棄になったのもその頃だった。

その頃には、周りで生きている他の児童が皆違う生物に見えた。みんな僕を遠巻きに観察し、距離を置き、関心をなくす。

檻の中に閉じ込められたようだった。


漢字の書き順を指摘してくれた担任も、軸足の向きを指摘してくれたサッカーのコーチも、皆が敵に見えてとても荒れた。

母親が「自閉症」関連の本を図書館で借りてきたのを見てさらに自分が嫌いになった。


そんな僕に真正面からぶつかってきてくれた級友がいた。(仮にMとする)

Mは率直に僕の改善点だけを述べ、一言の非難や雑言も言うことはなかった。そんな大人びていて、人のことまで観察する余裕のあるMが気に入らず、僕はある時彼の持っていたアレルギーを論ってしまった。その時に訪れた刹那の沈黙と彼の哀しそうな顔は忘れることはない。彼にも彼なりの人生と苦労があるんだと、そしてそれが人それぞれにあるんだと悟った日でもあった。


こんな僕に注意欠如多動性障害(AD/HD)という診断が出たのは、小学校の終わりが近づく小学校4年の末のことであった。

定期で通っていたカウンセラーの先生に紹介されたその医院はその分野でご高名なIという先生がいらっしゃった。診断が出たことで周りにも周知がしやすくなったという側面もあり級友の皆にも説明をした。


ちょうどそのころ私はどうしても新たな環境に身を置きたい、という信念で中学受験なるものに挑戦することにした。当時はあまり有名ではなかったGという塾に通わせてもらい、迫る関門への準備をした。

当時から、読書が好きで配られた教科書などは一度全て目を通してしまわなければ気が済まなかった僕は、小学校では退屈してしまっていたが、塾で配られる毎週の教材、そして参考書は僕のまだ見ぬ知識がたくさん詰まっており、塾に通学するのが毎週楽しみで仕方がなかった。

そのうち僕は当時ヤギを校内で飼っていた名門某M中高に憧れて、目指すようになった。しかし、自分の努力不足か、結果は芳しくなかった。しかし第2志望校にご縁をいただきそちらに入学することとなった。


このようにして私は級友、先生方、そして両親の支えを得て波乱の小学校生活を終えたのである。

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じんせい こたろ @kota6_me

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