あめを拾いたくなってきた。
あめを拾いたくなってきた。
僕はかさを投げて、拾った。
その表面にはあめがいっぱい付いている。
内側も濡れてしまったかさは被りたくない。
書きたいこと終わり。
この文章で実践しているのは、読者が一般的に採用するであろう解釈を続く文章によって遡及的に揺らしていくテクニックです。
まず冒頭文の「あめ」とは飴のことであると普通なら思います。だって雨を拾う事って一般的にはイメージがつきにくいですから。しかし直後に僕は「かさ」を投げて、地面に落ちたそれを拾い上げていますね。普通なら拾えないはずの雨をなんとかして拾ったことにしたくて「かさ」を投げたのだと解釈したほうが筋が通っていますよね。そうやって、前の文章の意味を読者一般の読解からずらしていくことを、僕は上のたった4行のテキストで実践しています。
「かさ」についても普通なら傘を連想すると思いますが、この場合の「かさ」は頭に被るものなので笠という漢字で表記するほうが正しいことになります。かさじぞうのお話で登場するタイプの円すい型の被り物ですね。少なくとも片手を塞いでしまうタイプの傘ではないはずです。読み取れましたでしょうか。
読者が一般的に想定するであろう解釈から後出しじゃんけんで逸脱する文章は、読者に寄り添って書いた結果生まれた産物であることに間違いは無いですし、そこそこの文章構成力がなければ出来ないことです。文自体は読みやすいけれど文意を読み取りにくい文章を書きやすくするテクニックでもあるので、皆さんも真似てみようとしていてください。
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