に、部活バカに恋の予感!?

 俺、竹中篤哉はサッカー部所属の二年生! 幼馴染の長谷部雅也と高校に入ってから友達になった磯貝達矢の三人でつるんでるっス。楽しい高校生活を満喫してるっス。

 ただ。


 どうしよう。俺だけ恋愛してない…………。


 高校に入ったらする人は多いって聞くけど、幼い頃からサッカー一筋の俺には無縁な事だったんスけど……。

 まず、雅也んに彼女ができた。その彼女が超可愛いんス。何だよ、告られたって。しかも、俺達が知らない間にその子の事を好きだったって何なんスか!? 何でも話してくれるって言ってたのに早速話してないじゃないっスかー!! 正直、この報告聞いた時雅也んを殴りたくなったっスから。

 そして、その数日後。たっつんに好きな人ができた。名前を聞くと俺と委員会が一緒の子じゃないっスか。で、まさかの一目惚れって一体何があったんスか。まあ、挨拶だけで顔真っ赤にする所はなんか可愛いっスけど。たっつん、雅也んと違って素直で純粋な所は気に入ってるっスよ。


 こんな話ができる二人とは違ってサッカーばかりの俺は、聞くだけ。特に雅也んの惚気が腹立つんスけど、聞いている分には俺は応援だってしたいと思うし、恋愛に憧れがあったりする。


 勿論、俺だって、彼女が欲しいっス!


 男子高校生あるあるみたいなものっス。しかしながら俺はそれを実現していない。

 そもそも、恋した事ないから、何が『好き』って気持ちなのか分からない。



 恋って何なんスかぁあああああ!?





 二年生になっての初登校。雅也んは彼女と行くと言って、たっつんはそもそも家が遠いから一緒に行けず、一人で大きなスポーツバッグを持って、サッカーの試合のハイライトを見ながら学校に来た。掲示板を見に行って雅也んと遭遇して教室に向かい、たっつんを見つけてアタックして、仲良く三人で教室に入った。


 自己紹介が終わっての席替えで、窓際の一番後ろという最高のスポットを手に入れた俺はたっつんとたっつんの好きな人・戸田さんとの一部始終を目撃。


 よかったっスね、たっつん。


 このまま直ぐに二年生初日は終了して、俺はサッカー部部室まで走る。


 よーし、ここの角を曲がれば…………。


 と曲がろうとしたその時。


「わあ!?」

「きゃっ!?」


 派手にぶつかって俺は尻餅をついた。直ぐに立ち上がり、ぶつかった相手に謝罪する。


「ご、ごめんなさいっス!! 大丈夫っスか!? 怪我とかしてないっスか!?」

「あっ、はい。大丈夫です。ごめんなさい」


 大丈夫と言う女の子を見ると、膝に怪我をしていた。俺はお姫様抱っこをして彼女を保健室まで運ぼうと彼女に告げる。


「怪我してるじゃないっスか。保健室、行くっスよ」

「きゃっ、ちょっ!? いい、いいです!! 大丈夫です!! 降ろして!!」

「ダメっスよ! 女の子が怪我放っておくなんて絶対! ほら、行くっスよ」

「…………は、はい」


 俺は今直ぐ部活に行きたいという衝動に駆られた。でも、今は部活より女の子の方が優先っス。ここで女の子より部活を選んだら男として最低っス。

 そうして俺は彼女を急いで保健室まで連れて行った。





「着いたっス。椅子、座って。絆創膏どこだー?」

「あ、あの! ホントに大丈夫ですから! お構いなく…」

「だから、女の子が何言ってんスか。自分の体大事にしなきゃ」


 内気で、慌てている彼女は頑なに俺の手当てを断る。だが、俺も引かない。そういや、名前知らないな。聞くのが一番っスよね。


「あの、俺、二年の竹中篤哉っス。君は?」


 俺が絆創膏を貼りながらそう聞くと、女の子がか細い声で呟く。


「…………三好みよし春菜はるなです…二年、です」

「三好さんね。ごめん、俺のせいで」

「あの、気にしないで下さい。部活で急いでたんですよね?」

「うん……って何で知ってんスか? 俺、言ったっスか?」

「あっ………。えっと、その、いつもサッカー部に直行していくのを見るから………」


 顔を俯かせてぼそっと言った三好さんの顔がほんの少し赤く見えた。

 そんな彼女を見て、俺は笑顔で返す。


「あっ、そうなんスか。俺、サッカーだけが取り柄っスから!」


 あははは、と馬鹿な発言をしたが、三好さんはぶんぶんと首を左右に振って言った。


「そ、そんな事ない、です。あ、篤哉さんは、優しい、ですから」

「……ははっ、三好さんが優しいじゃないっスか。ありがとう。………さて、手当ても終わったし、部活行ってくるっス。一人で帰れるっスか?」

「は、はい。ありがとうございました」

「うん。じゃあ、またね、三好さん」


 そう言って保健室のドアを開けて出ようとした、その時だった。


「あ、あああああの!! 篤哉さん!!」

「はいっス!?」

 突然呼び止められて声が裏返りながらも俺は三好さんの方を向いた。

 彼女の顔を見ると、耳まで真っ赤にしているじゃないっスか。

 この次の瞬間、俺の予想を超える言葉を三好さんが言うとも知らずに。







「あ、あの……………………好きです!」

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