青春駆け抜けボーイズ!
煌烙
出会いも悩みも恋のうち
いち、俺の青春は席替えから始まるらしい
『青春』
漫画を読んで一度は憧れるだろう。特に高校生になってから味わいたいと思う人が多い。
だがしかーし…………!!
俺は問いたい。
『青春』ってなんだ。
俺だって青春というものに憧れているさ。正常男児なら当たり前の事だ。持論だけど。しかし、現実はそう上手くいかない。
高校に入学して俺は決意を固めていた。
青春を謳歌してやる、そして、駆け抜けてやる、と。
しかし、青春を謳歌する事もなく高校の初めの一年が終わってしまった。大事な一年を無駄にした時は部屋に籠って俺は何してんだと思い悩んだ。…………メンタル弱いだけなんだけどな!!
試しにネットで青春の意味を調べてみる。
【青春】若く元気な時代。人生の春にたとえられる時期。青年時代。(『スーパー大辞林』より)
という事はつまり、人生の春を楽しむ事を『青春を謳歌する』って事か。が、意味を知ったところで更に混乱するだけだった。
友達は沢山できた。勉強もまあまあの成績。運動もそこそこできる。
あれ? 意外とちゃんと謳歌してねぇか、俺。
……っていやいやいや。無い物があるじゃないか。
俺に足りない要素。
それは部活と恋愛だ。
俺は今帰宅部だ。高校一年の時に部活強制入部の高校もある中で、俺の通う青葉高校は一年生からでも帰宅部可の学校なのだ。特に興味のある部活がなくそのまま帰宅部になってしまった。
まあ、それは別にいいのだが、問題は恋愛だ。恋愛をした事がないという訳ではない。片想いをしているのだ。まあ、これが所謂初恋なのだが……。
好きな子はいるが、挨拶だけで精一杯の始末。恋愛偏差値が低い俺はどうすればいいのか全く分からない。
………こんな俺だから! 二年生になったら本格的に青春を謳歌したいと思う!
目指せ、青春駆け抜けボーイ!
*
二年生になっての初登校。掲示板を見て新クラスを確認する。二組か。
新しい教室に向かうと後ろからドンっと押される。
「たっつん、おはっス!」
「痛ぇよ、アツ。はよ。朝から元気な、お前は」
「元気だけが取り柄っスから! たっつん何組っスか?」
「二組。アツは?」
「同じっス! あと、
「
「はよ、雅」
俺、
アツは明るい性格で誰とでも仲良くなれて、クラスのムードメーカーだ。サッカー部に入っており、勉強はできなくて、赤点ばかり取っている。
雅はクールな印象がある長身男子で、俺達三人の中で唯一の彼女持ちだ。バスケ部の期待のエースで、勉強もでき、常に学年上位に入っている。
アツと雅は幼馴染で、アツが持ち前の明るさで俺に話しかけてきてくれた事で仲良くなった。二人とも一緒に居て飽きない存在だ。
「あっ、そうそう。達矢、
「えっ……?」
「わあ、良かったじゃないっスか! これでアタックできるっスね」
「やめろ、恥ずかしい!」
俺の片想いの相手・戸田
実は去年クラスが同じだった訳ではない。
去年の夏、俺が日直だった時だ。日誌を記入し、窓などの戸締まりを確認し教室を出ようとした、その時。ガラッと教室の扉が開けられ、可愛らしい声が耳に入った。
『竹中くん居る……って居ない!?』
『アツ……は今部活だよ。アツに何か用だった?』
『あ、うん、委員会の資料を渡しに来たの』
『あとで俺、渡しとくけど…』
『ホント!? ありがとー! えっと…』
『あ、俺、磯貝達矢』
『私は戸田夏樹! ありがとね、達矢くん!』
その笑顔に一目惚れした。ホント、俺って単純すぎる……。
だけど、その日から自然と彼女を目で追うようになっていた。すれ違ったら挨拶を交わしたり、アツへの頼み事をまた頼まれたりと、戸田さんとは話す機会が少なかったがあった。
そして、二年生になった今。彼女と同じクラス。これはチャンスだ!
心で気合を入れているのがばれたのか、雅が一言教室のドアをくぐりながら呟いた。
「その勢いで頑張れー」
「おう!」
教室に入って黒板に貼ってある座席表を見て自分の席を確認する。最初は出席番号順なので、苗字が「い」の俺は一列目の前から三番目だ。
席に着くと、丁度ホームルームを知らせるチャイムが鳴り響いた。クラス担任が入室し、出席を取る。
その後、一人一人出席番号順に自己紹介をしていく。最後の人が終わると担任が黒板に新たに番号がバラバラになった座席表を書き、ある箱を教卓の上に乗せた。この中には番号の書かれた紙が入っている。
一通り新しいクラスでの自己紹介が終了すると、いきなり席替えがある。これは青葉高校では恒例行事の一つとなっている。
席替えは三カ月に一回ある。ここで最初の三カ月間の運命が決まる。
出席番号順にくじを引いていく。
俺はー…。二十七番か。二十七番、二十七番っと…………。窓際の後ろから三番目。微妙だな。と思っていると肩をトントンっと叩かれた。振り返るとそこには……。
「達矢くん、隣だからよろしくね」
「と、戸田さん!? へっ!? 隣……って!? えっ!?」
戸田さんだった。驚きすぎてかなり挙動不審になってしまったが、彼女はそれを気にする風もなく自分のくじの番号を俺に見せた。
「ほら、私、一番。ね、隣でしょ?」
彼女の番号を確認して黒板を見ると、確かに一番と二十七番が隣同士になって並んでいた。
ま、マジかよ……。これは大チャンス到来!?
心の中で暴れまくりながら、俺は平静を装って戸田さんに返答する。
「ほ、ほんとだ。よろしく、戸田さん」
「うん、よろしく」
こんな席替えだけで有頂天になっている俺にこの先さらなる青春が待ち受けていようとは全く予想できる筈もなかった。
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