運命の出会い
運命の出会い1 港町
「運命の恋なんてステキよね。白馬の王子さまが
※『とある酔っ払い女の妄想』より
あれから四年の月日が流れた。俺、アベルは13歳になり、村から南西の魔族と
「あーっ、やっぱりここにいた」
その食堂の看板娘、アステシアが
「もうっ、
⋯住み込みと言ったほうが正しいかもしれない。まあ、ほとんど
「道に迷ったんだ」
あからさまな嘘で
「ばっか。薪は私がやっといたから、買い物いくよっ」
腕を
「なにか文句ある? 」
アステシアはニヤニヤとなにか思いついたようで、
「
アステシアの赤みの入った紫髪が、首元にさわさわと触れてくすぐったい。
「⋯わかったよ、早く行こう」
やれやれと崖を去る俺とは
□
「次は、シオとコショウと、あとは⋯、マトマトね」
結論から言うと、アステシアは荷物持ちの役には立たなかった。
小さなメモ書きを見ながらあれこれと文字通り指で指示をするアステシアと、
「なにをぶつぶつ言ってるの?」
せっかく
「俺を見て何も思わないのか?
「たいぐう? の改善? ご
この状況のどこが『ご褒美』なんだ?
「男の子は女の子の前ではカッコつけたい生き物だから、女の子にお願いされると喜ぶ。 ってダイツさんが」
ダイツめ、何を吹き込んでるんだよ。
「あと、男の知性と筋肉美に
本当に何を教えてるんだよ。アステシアの教育に悪いから、ダイツを近づけないようにしよう。
「いいか、
サラッと自分に有利な状況も付け加えておいたら、
「うん? わかった」
って言ってきた。 本当に分かってるのかねえ?
「よし、まずは荷物を半分持つこと。それからミルクモチは全て俺に差し出すこと。 あとは⋯」
「あっ、おばちゃん、こんにちはーっ」
アステシアはさっさと野菜売りの店主の元へ
「アステアちゃんすっかり美人さんになったねえー。 今日は2人でデートかい?」
店主、ついに目までおかしくなったのか。両手が
「はい、二人のデート記念にサービスだよ」
店主はマトマトを注文より多く袋に入れて、
「⋯アリガトゴザマス」
アステシアはこちらを見ずにさっさと歩いていく。こっちは大荷物を
□
港町『シャクィア』の商店通りは港から商品を
そして、これから帰る食堂は階段を
アステシアは隣で、余分に貰った果物、トラフナシに小さな口を大きく開けて
「ん」
アステシアはトラフナシを俺の口に押し込んできた。 食べかけのやつを。
アステシアは顔の半分を
「ねえ、アベル」
なんだよ。だが、アステシアは少し
「 崖の上で今日は何考えていたの?」
また
「崖の上にいたアベル、少し悲しそうだったから」
昔の事を考えていたからな。 あの日の事、シアン姉さんの事を。
「前に住んでいた村の事を考えていたんだ」
俺は遠く、村の方角を見ながら言った。
「ダイツさんや、シアンって魔族のお姉さんと住んでいた村?」
ああ、と軽く返事をした俺に、聞いた事を反省するように、急に落ち込むアステシア。 コロコロと感情の変わる表情は見ていて飽きない。 別に話したく無い訳じゃないんだ。 俺から話さないだけで。
無駄に長い坂道を大荷物を
「少し、聞いてもらおうか」
アステシアはほっと胸を撫で下ろし、
「うんっ!」
また笑顔に戻った。 本当に飽きない奴だ。
俺は、ぽつりぽつりと語り始めた。 シアンお姉ちゃんの事、燃える村の事、その後の事を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます