ニンゲンになりたい。/桜庭ミオ への簡単な感想

 応募作品について、主催者フィンディルによる簡単な感想です。

 指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。ただフィンディルの解釈する方角が正解というわけではありませんので、各々の解釈を大切にしてくださればと思います。

 そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。


 ネタバレへの配慮はしていませんのでご了承ください。





ニンゲンになりたい。/桜庭ミオ

https://kakuyomu.jp/works/16818093075061062814


フィンディルの解釈では、本作の方角は北北西です。


「もし桜が人の心を持っていたら」という設定で綴られた作品ですね。

もしかしたら桜庭さんとしては、設定ではなく桜の気持ちを代弁したくらいの認識かもしれません。


どうして北に近い解釈なのかというと、「人間になりたい桜」「人と同様の心を持つ桜」というコンセプトの存在感が強すぎるからです。

「人間になりたい桜」「人と同様の心を持つ桜」というコンセプトから作品を発進させたからといって、それだけで北向きと判断することはありません。

ただ本作は「人間になりたい桜」「人と同様の心を持つ桜」というコンセプトを超えた表現が見られないように感じました。

「もし桜が人の心を持っていたら、こう考えるんじゃないか」というコンセプトから良くも悪くも抜けだせておらず、「桜でないと出せない表現なのに、桜かどうかがどうでも良くなるような心情」という域に達していないように思いました。


「桜でないと出せない表現なのに、桜かどうかがどうでも良くなるような心情」という域まで掘り下げられるともっと西に傾きうると思いますが、本作はコンセプトありき設定ありきに留まっているように思いますので、設定一本で作品を持たせる数百文字の北向き掌編という判断が無難であるように思います。

現状の表現域は、真北のエンタメ作家でも書きうるように感じます。


そのうえで真北ではなく北北西としているのは、本作には展開らしい展開がないところが挙げられます。

たとえば最終的に桜が人間に変身してミノリとコミュニケーションがとれるようになったり、人間に変身せずとも桜の想いがミノリに伝わったりすれば、物語としての着地が描かれますので真北判断だっただろうと思います。

ただ本作はミノリと想いを通わせあいたいのに桜だからそれができないと嘆く一枚絵的な心情描写に終始していますので、そこで真北を指しづらくなっているかなと思います。


方角を西に傾けるうえでも、本作にもっと品質的な深みを持たせるうえでも、もっと桜庭さんの世界観を輝かせられれば突き抜けたものになれるのではないかと思います。

「桜でないと出せない表現なのに、桜かどうかがどうでも良くなるような心情」という域、桜庭さんならば出せると思います。

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