第4話 夜の教室に侵入してはいけません
【夜の校舎】
あなたと後輩が廊下を歩く足音。
「ごめんね、後輩くん……忘れ物取りに行くのに付き合ってもらっちゃって……」
「うん、数学の教科書……明日わたしが宿題の解答を当てられてて……どうしても必要でさ」
「やー、家で教科書がないことに気づいたときは、ほんと焦ったよー。学校までとりに戻らなきゃって…」
「それですぐに頭に浮かんだのが後輩くんの顔……きみなら付き合ってくれるかもって思ってダメ元で連絡したんだ」
「うん……やっぱりキミはいい子だよ。突然の私のお願いをイヤな顔ひとつしないで聞いてくれて。ありがと」
「……え、なんで一人でとりにいかないんですか?」
「だって、夜の学校に一人で入るの……怖いじゃん……?」
「あー、ていうかその顔、絶対にわかって聞いてるでしょ? イジワル!」
「もー笑わないでよ。自分でも子供っぽいなぁっておもってるんだからぁ」
「まったくもう……」
「あ……なんて会話してたらあっという間に教室についちゃったね」
ガラガラっと教室の扉を開ける。
教室の中、先輩の自席まで歩いていく足音。
引き出しから教科書を取り出す音。
「あーよかった。これで明日の宿題はバッチリだよ。ありがとね、後輩くん」
「……? 後輩くん、なにキョロキョロしてるの?」
「ああ、そっか……他学年の教室なんてあんまり入る機会ないもんね。ちょっと新鮮だよね」
「あ、そうだ! ねえねえ、せっかくだから後輩くん、こっちに座ってよ! そう、わたしの隣の席!」
あなたが先輩の隣の席に移動する足音。
椅子を引いて着席する音。
「ふっふーん、わたしと後輩くんがおんなじ学年でクラスメイトだったらこんな感じだったんだねー。うんうん、いい感じじゃん」
「あーあ、キミとクラスが一緒だったら毎日がもっと楽しかっただろうなぁ」
「筆記用具を貸し借りしたり……日直とか一緒になったり……修学旅行も同じ班で回ったりしてさ……」
「あ、でも……キミは優しくていい子だから……きっとクラスの人気ものだね。わたしみたいな陰キャは相手にされなかっただろうなぁ」
「……え、絶対にそんなことない? 毎日先輩とおしゃべりして、絶対に楽しかったと思います?」
「そ、そっかぁ……えへへ。嬉しいこといってくれるじゃん。後輩くん」
「……え、ええと」//恥ずかしそうに
恥ずかしさを誤魔化すため先輩ガタッと音を立てて机から立ち上がる。
「そ、それじゃ……後輩くん! 忘れ物も回収したことだし、そろそろ戻ろっか!?」
「え、顔が赤いです? そ、そんなことないよ! 何でもないから、いこ?」
そのとき教室の外からこちらに近づく足音が聞こえる。
「……! 足音……!」
「やばっ……! きっと見回りの先生だ……! 見つかったら怒られちゃうよ……!」
「こ、後輩くん! どうしよう……!」
「……え? 隠れましょうって。ど、どこに……!?」
「ロッカー……!? あっ……」
あなたは先輩の手を引く。
ロッカーに向かう二人の足音。
ガチャリとロッカーが開く音。
「この中に入るの……? う、うん……!」
まず先輩がロッカーに入る音。
続いてあなたもロッカーに入る音。
「……あっ」
ロッカーを閉める音。
以降、先輩の声、耳元で響く。
「こ、後輩……くん。せ、狭いね……」
「ううん、イヤじゃない。仕方ないよ。不可抗力だもん」
「通り過ぎるまでじっとしてよう……」
「……」先輩の吐息(10秒くらい)
先生の足音近づく。
「……静かにね」
先生がガラッと教室の扉を開ける。
「……」//先輩の吐息(10秒くらい)
先生が扉を閉める。
教室から遠ざかっていく足音。
「……もう、いいかな?」
ガチャリとロッカーの扉を開ける音。
二人が外に出る音。
「……はぁ、よかった……通り過ぎたみたい」
「えっと……後輩くん……その……」
「ドキドキしたね……!」
「え、バレなくてよかったですね? う、うん……それもそうなんだけど……」
「後輩くんと……あんなに密着しちゃうなんて……ドキドキだよ……」//ささやくように
「え、ううん! 何でもないよ!?」
「こ、後輩くん! 先生が戻ってきちゃう前に戻ろっか!」
「うん、行こう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます