壊れた私

 イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。

 イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。イツキから見捨てられた。


 あはは……もう、どうでもいいや……。











 汚れた私に価値なんてない。愛されなくて当然だ。こんな犯されて穢され切った汚い人間なんて誰が愛してくれるんだ。

 あいつも、そいつも、あの子も、その子も。


 みんな私よりきれいだ。愛されて、輝いて、絶望なんて知らなさそうな顔をして。

 汚い男の体液に塗れて、汚辱に塗りつぶされて、地獄の底で太陽を見上げることすらできない私とは、大違いだ。


 呼び出され、犯される。既にいつも通りになった日常。

 犯されるところはいつも同じ場所で、私はそこにスマホを録画モードにして隠した。


 私が犯されている一部始終を撮影する。私が今までろくに逆らわなかったから、男たちも女たちもそんなことをされているなんて欠片も思っていなかったみたいで。

 私は行為の後、その乱れた服装のままスマホを持って警察に行った。


 録画した動画には顔がバッチリ映っていて、お互いに名前も呼び合っているから誰がどんな名前なのかもはっきりとわかる。最近のスマホのカメラ機能もマイク機能も優秀だった。

 警察に聞かれたことは包み隠さず全て素直に答えた。女性の優しそうな警察官が相手だった。「話しにくかったら無理しなくていいからね」なんて言われたけど、私にはもう話しにくいことなんて何もなかった。


 イツキに見捨てられた私になんて何も価値はない。動画でもなんでもばらまくなりなんなりすればいい。どうせ価値なんてないんだ。何も怖くない。


 私を犯していた男たちと指示をしていた女、それに加担した人たちは全員逮捕された。学校は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。在学中の生徒が逮捕された、ということが話題になっただけで、どうして逮捕されたのだとか、何があったのだとかは警察からは当然だけど学校には伝えられていない。

 でも、みんなうすうすわかっていたんだと思う。私を腫れものを扱うように見る周りの目を見れば、それが感じられた。


 警察から私の両親にも連絡が入った。両親は私に対して何か言っていた気がするけど、私は何を言われたのか覚えていない。

 泣いていたように見えた気もするし、蔑んでいたように見えた気もする。


 警察からは産婦人科に案内された。感染症や妊娠の検査などが行われた。不幸中の幸いというべきか、どちらも大丈夫だった。

 警察関係のカウンセリングやヒアリングをする施設の案内もされた。


 どうでもよかった。

 全部がどうでもよかった。


 私を犯していた人間が捕まったことも。学校で噂をされていることも。両親が私とどう接していいのかわからずに困っていることも。カウンセリングとか、妊娠とか、感染症とか……。


 どうせ私に価値なんてないんだから、全部全部どうでもいいんだ。











 抜け殻だった。

 私は、私がすべてなくなった抜け殻だった。


 楽しい高校生活なんてなかった。未来への希望なんてなかった。家族からの愛情なんてなかった。私があげたかったものもなくなった。

 私の中の全部奪われて、なくなって……真っ暗闇の中に一人うずくまっていた。


 私の中に残ったのは唯一、イツキへの想いだけで。

 でもこんな汚れ切った私が、イツキのところにまた戻れるなんて思えなくて。


 泣きながら一人でいくつもの夜を過ごしていった。


 警察に足を運んで、地獄から解放された後。

 私は睡眠薬が無いと眠れなくなっていた。


 目をつむるといじめられていた時を思い出してじっとりと汗が滲んで、動悸が早くなる。

 少しでも夢を見ると犯されていた時の光景が再現されて、叫び声をあげながら飛び起きる。


 睡眠薬を飲んで、夢も見ないほど深い眠りに強制的に落とさないとまったく眠れない。


 でも、睡眠薬っていうのは飲み続けると、だんだんと効きづらくなってくる。体が慣れるのか知らないけど、一錠で眠れていたのが、二錠に。二錠で眠れていたのが、三錠に。三錠が四錠に。

 睡眠薬を飲まないと眠れないから、睡眠薬を飲むしかない。でも睡眠薬を飲み続けると効きづらくなるから、量を増やして無理やり眠るしかない。


 睡眠薬を飲む。眠る。効かなくなる。増やす。眠る。効かなくなる。増やす。眠る――。


 どんどんどんどん飲む量は増えていって、とっくに睡眠薬の規定量なんて超えてて。

 それは世間でいうところのオーバードーズと呼ばれる行為にまで発展していて。


 心が壊れて、頭がおかしくなっていた私が正気に戻れるのは、イツキとの思い出の写真を眺めている時だけだった。イツキとのメッセージのやり取りを見返している時だけだった。


 イツキ……怖いよ……寂しいよ……会いたいよ……会いたくないよ……辛いよ……苦しいよ……。


 助けて、イツキ……。

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