第4話 対異世界武器戦闘術

 故郷に戻った私は、冒険者ギルドの受付嬢に就職した。


 ギルマスはこの前の地竜討伐失敗で更迭されていた。

 疑うことなく、私を雇い入れてくれた。


「そうか、君みたいな娘、待っていたよ。阿婆擦ればかりで、タクマ殿はうんざりしていたのだ」


 意味深に言われたが、このときは、分からなかった。


 ボチボチ、男の冒険者たちも帰ってきていたが、相変わらずに、女冒険者が多い。


 ここで、奴の情報を調べよう。


「あれ!新しい子?君、大空の要塞、バピュタのズータそっくりだね」

「討伐部位を確認します」


「ねえ。ねえ。仕事何時に終わり」

「また、新しい娘ニャー、お魚買ってくれる約束は!」

「そうだよ!新しい首飾りは?」


「あん!うるさいぞ!僕の話を邪魔するな!」


「「・・・・・」」


「演劇見に行こう。婚約破棄ものだ。笑っちゃうだろ。僕の元いた世界にもあったんだよ!」


 奴に目をつけられた。獣人族は貧しいと聞く。彼女らも必死なのだろう。


 無視をしていたら、領主とギルマスから、悪魔の提案をされた。



「ワシの養子になれ、そして、タクマ殿の婚約者に指定する!」

「良かったな。ソニア君!」


「はあ?」


 よりにもよって、この男に?


「ワシには娘がいるが、既に婚約者がいる。その、タクマ殿は中級の魔獣限定だ。ドラゴンスレイヤーにはなれない。婚約を解消してワシの娘と結婚させるほどの人物ではない」


「そうだな。武器もじゅう、一辺倒だ。他の、ほら、アリサ冒険者みたいに、珍しいものを召喚できるわけでもない。でも、すごい出世だよ。平民の君にとっては、貴族令嬢になれるのだから」


 そうか。この世界は、貴族は平民に対して、何だって出来る。

「お披露目は、一週間後に、このギルドで行う。近隣から人が集まるからな。そうだ。ドレスを新調してやる」


「分かりましたわ」


 そうか、一週間後に、決闘ね。


 私は、タクマの好む演劇から、婚約破棄を思いついた。

 手紙を、師匠達に書く。


 有難う。そして、さよならと、思いを綴った。





 ☆☆☆決闘に戻る


 ピカッ!


「ウワ、卑怯だぞ!」


 彼奴は、目を押さえたが、「じゅう」は片手で持っている。


 私は、ローブを脱ぎ捨て、魔法杖を放り、短刀を取り出し、彼奴に向かって、走り出した。


 刺すのではない。

 ナイスを持った肉体の体当たりだ!


「ウワワワワワワ~~~~~」


 バン!バン!バン!バン!・・・・


 乱射!360度まわりながら、脇で「じゅう」を抑えながら、銃を撃ちまくったわ。


「キャアーーーこっちはアタイ達だよ!あんたの女だよ!」

「タクマ様!あたしたちは味方だよ!撃たないで!ギャ!」


 ヒドイ、獣人族の女の子たちがいると分かっているのに撃っている。


「ウグッ!」


 私の肩に当たったか?私にも衝撃が来る。


 カン!


 胸に当たったが、貫通していない。


 後、もう少し。


 彼奴は防弾チョッキを着ている。


 だから、お父様が撃たれた所と同じ、太ももの付け根!


 ドン!グサ!


 彼奴は360度まわっていた。

 背面から、狙った所を、いや、ケツか。

 ケツに刺さった。


 筋肉の収縮で、短刀は抜けない。

 腰に隠していたもう一本の短刀で、もう一発、次は、首を・・・・


 バン!バン!バン!


「ウゲ、グハ」


 目が真っ暗になった。


「はあ、はあ、はあ、ポーションがあって助かったわ!ギルマス!僕の勝ちだよね!」


「ええ、まあ」


 壁に隠れて難を逃れたギルマスは、宣言する。これでタクマの勝ちだ。


 しかし、ハンデは、ソニアがタクマに触れば勝ちのハズであるが、もう、ここにいるのは、ギルマス、ソニアとタクマだけである。


「まだ、息があるな。とどめをさしてやる!頭を、グッチャグッチャに!」


「ちょっと、待つかな!」


 ローズが現れた。

 タクマの前に、無詠唱でウォーターボールがソニアを守るように浮かぶ。


 バン!バン!

 ピチャ!ピチャ!


 ウォーターボールは滞空し、銃弾は、その中に入ると、途端に勢いが弱まった。


「何故だよ!」


「対異世界武器戦闘術!水は空気の800倍の密度かな!ロザリザ様!」

 ロザリザがローズの後ろから、飛び越え現れ、ソニアを救出に駆け寄る。


「だから、剣が銃に勝てるかよ!」


 バン!バン!


「時間体感操作!秒速800メートルの世界は、予習しておいて良かったですわ!」


 ロザリザは剣で、銃弾を弾き飛ばす。


「弾が切れた。マガジン交換!」


 バン!


 その時、100メートル先から、7.62ミリ弾が放たれ。


 バキン!


 タクマの銃に命中し、吹っ飛び。やがて、マガジンと銃は消えてしまった。召喚が解けたのだ。



 ☆☆☆一週間後


「ウウウウ、ここは?」

「ソニア!」

「お義姉ちゃん!」


 お義母様の家にいた。


「聖王国の聖女様が、治療をしてくれたのよ」


 ヤスコ様だ。


「あの三人がここに運んでくれたのよ・・・これから、魔王軍との戦いがあるから、しばらく帰ってこられないからって」


「そう・・」


 私は、あの決闘の事を聞いた。


「タクマの勝ちですって、立会人のギルマスが宣言したのを、タクマが強硬に主張したそうよ。領主も面子があるからって、ヒドいわ。


 だけど、本当の話は、私たちは聞いたから、

 女としてお礼を言うわ。愛する男、ダンの仇を取ってくれて、有難う」


「お義姉ちゃん!優しい義父様の仇ありがとうございます」


「グスン、グスン!私こそ有難うだよ!」

 しばらく、家で厄介になり。

 義母の親戚の店で、働かないかと提案されたが、断った。


 一応、貴族籍だ。除名になっているかもしれないが、ここにいれば騒動になるかもしれない。


「そうそう、あの4人が、これを、ソニアが旅立つ時があったら、渡してくれと言われたわ」


 羊皮紙が3枚に、鉄の首飾りのようなものが一つ。鎖に、金属の板がついている。


「聖王国、デルタ王国、ザルツ帝国の入国許可証と職業紹介状じゃない・・・この首飾りには、アサカの里の入里許可書と身分証も兼ねる?」


 首飾りには、平らな金属の板があり。そこに私の名前と身分を保証すると書かれている。

 かの世界では、認識票と云われているものだと、後に知った。


「ご師匠様たち・・・」


 勝負に勝って、試合で負けた。と言うのかな。

 父の娘として、仇討ちは成し遂げられなかったが、


 やっと、前に進める。

 父の事は胸に秘め。弔い。

 生きていこう。


 私は、冒険者の街で、父の残してくれたお金で、お食事処を開いた。


 狼獣人族の娘、ソチを雇い。

 それなりに繁盛するようになったわ。


「アハハ、それでよ。聞いたか?ケツナイフの異世界人の話?」

「何それ?」


 いやな。異世界人で、ケツにナイフを刺している奴がいるんだよ。


 何でも、ミリタリーチートとして、鳴り物入りで、デビューしたが、

 奴さん。女がらみのトラブルで、ケツに刺されたんだと。

 刺された状態で、ポーションを掛けて、治ってよ。

 体に同化してさ。


「あれ、また、治療すればよくね?転生者なら、金を持っているだろう」


「それがよ。ケツに刺されてからよ。能力が消えたって話だ。領主からも見放されて、治療費を出してくれないって話だよ。今、奴は、冒険者ギルドの前で乞食をしているって話だ」

「転生者と言ってもピンキリだしな」

「ふ~ん。まあ、どうでもいいや。早く飯こないかな」


「お客様!手羽先おまちど様なのです!チップに一つ頂いてもいいのです。チップをくれたお客様は、ソチをナデナデしてもいいのです」

「ソチちゃん・・・ソニアさんに怒られるよ」

「ソチちゃん。そろそろ、休憩よ。賄いを作っておいたから食べてね」


「はい!女将様、大好き!」

「アハハハ、現金だな!」


 私はここで生きていく。


 タクマは生きていると聞いている。あの三人はトドメを刺さなかった。

 それはそうだわ。

 だって、私の決闘だもの。


 彼女らはいつも手助けをしてくれていた。

 私も、いつか。他人に手助けを出来る人族になりたいわね。

 それが、目標よ。


 後に、勝負で大敗したミリタリーチート能力者は、能力が消えるとソニアが聞くのは、もう少し先の事だ。


 だから、あの3人は、タクマにトドメを刺さなかったかは定かではない。


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婚約破棄と自衛隊スクール 山田 勝 @victory_yamada

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