第3話 閃光のソニア 

 どこを探してもいない。

 冒険者ギルドや情報ギルドでは教えてくれない。

 一流の国お抱えレベルだと、存在を秘匿されるとは聞いた事がある。


 女神教会でも聞いた。


「・・・復讐のソニア様ですね。噂になっています。復讐は何も生み出しません」


「もう、結構です!」


 父の残してくれた大切なお金だ。これ以上、無駄使いは出来ない。

 そんなとき、義母の言葉が浮かぶ。

『どうしようもなくなったら来なさい』


 隣領のレストランに向かう。


 ☆☆☆金の鹿亭


 裏口から入った。マリアの義理の娘と言うと、初め、怪訝な顔をした店員は、顔がパアッと明るくなって、問い合わせをしてくれた。


「まあ、よく来たわね。今、お仕事中だから、休憩まで、少し待っていてね」


「マリアさん。予約の4名来ました。聖女ヤスコ様、ロザリザ様、ローズ様、アリサ様です。聖女様が、お酒をご所望ですが・・・」


「フフフ、聖女様がお酒を飲んではいけない決まりはないわ。女神様も目をつぶるでしょう」


「!!!」


 あの三人がいる。


 私は義母に、紹介してくれるように懇願した。


 しかし、


「それは自分でやりなさい。私は手助けしかできないわ。そうね。シチューを作りなさい」


「シチュー?ここは高級店でしょう。私のは」

「貴方がいつも作っている通りでいいわ。実のお母様のレシピよね」


 4人分作ってお出した。いつも、クランの冒険者さんたちに振る舞っていたシチューだ。


 しばらくして、

 義母が、一緒に客席に来いと言う。

 紹介してくれるようだ。


「このシチューを作ったのは、娘のソニアでございます」

「は、初めまして、ソニアです」


「このシチュー、酒が進むは!いいわよ。ヒック」

「味が濃い。だけどしつこくない。なるほど、野営を思い出す」

「疲れているときに最適ですわ!」

「初心を忘れない優しい味かな」


「如何でしょうか?このシチューを作った者は信用におけますか?」


「野菜が均等に切られている」

「そうね。一皿にお肉が行くように配食もされている」


「・・・では、相談に乗って頂けないでしょうか?」

「まあ、マリアさんの言うことなら・・」


 話が話なので、彼女らの宿で、今までの話をした。


「・・・復讐する個人は悪くない。悪いのは、不公平を放っておく為政者・・」


 アリサさんという方が言ってくれた。


「しかし、何故、私たちに修行を頼む。今の貴方でも、やり方次第では、復讐は出来るではないか?」


「えっ」

 私の成績の事も話した。

 相手は、恐ろしい武器を持っている。


「タクマを決闘で殺したいのです。父の名に誓い卑怯な事はしたくありません」


「フ~ン。だから、決闘だからこそ勝てる道筋はある」

「ヒック、私たちは厳しいわよ」

「後戻りできないかな」

「仇討ちの助太刀は武門の誉れですわ!」


「あ、有難うございます!」


 こうして、しばらく、私の修行に付き合ってくれた。


 初めの修行は、撃たれる事だった。


 バン!バン!


 私は的の下に座らされて、アリサさんが200メートル先から撃つ。

 正直に言って怖い。


「まず、私の里では銃の怖さを教えることからはじめる。父様と母様が的の隣に立ち。撃つことを教えられる。手元が狂ったら、父様と母様の命はない」


 転移者の末裔と聞く。アリサさんの一族は厳しい。

 この世界で、銃を乱射しないように、銃の恐ろしさをたたき込むことからはじめるそうだ。


 そして、ロザリザさんからは、剣術を、主に短刀で刺突を習う。


「いい。腰を落とし。体をぶつけるように、体当たりのようにですわ!」

「はい!」


 麦わらで作った人形に、体当たりをする訓練をした。


 そして、


 ローズさんから、土壁と、ウォーターボールを披露するように言われた。


「土壁!」


 ボコボコ、バサ!


 高さ50センチくらいに土が隆起し、すぐに崩れた。


「ウォーターボール!」


 バシャ


 数個の手鞠程度の大きさのウォーターボールが現れ、すぐに地面に落ちた。


 ローズさんの見立ては辛辣だった。


「無詠唱に目をつけたのはいいかな。でも、これじゃ、対異世界武器戦闘は無理かな」


「・・そうですか」


「でも、無詠唱と同じ速さの魔法があるかな。何だと思うかな?」


 ローズさんはいつも私に考えるように促す。

 火?違う。氷?闇魔法、それとも・・・消去法で


「光魔法ですか?」


「ご名答かな。光はこの世界で最も早いかな。発生は詠唱とほぼ同時かな」

「しかし、私の光魔法は生活程度しか使えません」

「まずは、そこからかな」


 光魔法は、聖女様から教わった。


「いい。これが、光魔法よ。レーザーのように、斬れる」


 シュン!ジュワワワ~~~


 薪が斬れたわ。


「だけど、射程がね。通常の魔法と同じなの。貴方、光魔法を使えるって聞いたけど?」

「えっと、ライトぐらいなら」

「上出来じゃない。じゃあ、閃光は?」


 パシャパシャ!


「フラッシュ程度ね。いいわ。これをもっと強力にするの」


「はい!」


「いい。魔法はイメージかな。アリサちゃんが召喚した異世界の武器を使うかな。アリサちゃん。どうぞ」


「これは閃光発射筒、危険だから、普段は盗賊や魔物に使うが、これをつけて」


 ドワーフが使うようなゴーグルを渡された。


 バシュ!バンバンバン!


「これで、相手の動きを止められる。しかし、一秒と思え。この光を魔法で再現するまで鍛錬」


「はい!」


 ローズさんから、魔法の基礎を教わる。


 ドサッ!


 と本を渡された。


「魔法の基礎理論を初めから、講義するかな!」

 光は直進する。屈折角、反射・・・


 正直、役に立つとは思えなかったが、みるみる閃光は上達した。


 ピカッ!


「射程は10メートル。決闘の際は、10メートルの距離を提示しなさい。あまり、近距離だと、怪しまれる」


「はい。しかし、応じるでしょうか?」


「タクマの撃ち方は素人撃ちだ。銃は、構える動作が必至だ。しかし、奴は、こう、2動作で構えている。構えて、その位置が正しいか無意識に確認している。


 持ち方が悪い。この差が戦場では生死を分ける」


 アリサさんは、ゆっくりだが、銃の構える動作をしてくれた。


 ただ、下から、上に持ち上げたかのように見える。


「戦闘時、こうやって、前傾姿勢で、銃床を肩に当てておいて、銃口は下に向けておく。しかし、タクマは、あの時、棒立ちで、斜めにブラブラ持っていた」


 ・・・あの装甲地竜討伐の時、それを見ていたのね。


 また、刺突される側の心理を教えてもらった。


 アリサさんは、異世界から、「てれび」なる魔道具を召喚して見せてくれた。


 ナイフ対銃の戦闘シーンだ。すごい。魔道詠唱記録だ。


 ☆☆☆映像記録


『ヘイ!ストップ!』

『クレイジー!』


 バン!バン!バン!


 ・・・正直、怖い。ナイフを持ったおじさんを、じゅうを持った者目線で攻撃をしている記録だわ。


「これは、銃大国と言われた場所で起きた戦闘だ。映像はボディカメラだ」


 公園でナイフを持った男がウロウロしていると通報を受け、衛兵隊が駆けつけた。


 しかし、男は、突然、ナイフを振りかざし、衛兵隊に向かって走り出した。


 たまらず衛兵隊二人は、ハンドガンを撃つが。それでも、止らない。

 勿論、衛兵隊だ。銃の訓練は受けている。手足を狙ったのもあったかもしれない。


 だが、結構外れている。


 しかし、十発以上撃ち。やっと、警官の前で、ひざまずいた。


 脳内麻薬が出ていたのか。ドラック中毒なのかは定かではないが、


 このおっさんは数十メートル、銃に撃たれながら突っ込んだことになる。


 この映像は、ナイフを持った男に、発砲はやりすぎではないかとの非難に、衛兵隊が公開した映像だ。


「銃を持っていても、怖いものは怖いと感じる時がある。それが、近接戦闘でスキを付かれた時だ」


「ねえ。アリサちゃん。映画のDVD召喚できない!」


「靖子さん。それ、後で・・・」


「やったー」


 それから、ロザリザ様とともにカゲのように走り込みをした。私には胸当てをつけて、重りとするように言われた。


 彼女らが仕事でいないときは、独りで練習し、


 1年が経過した。

 父を殺されてから、3年、4年目になったわ。


「胸当てを差し上げますわ!」

「これは、走りこみをしたときに重りとして装着した胸当て・・・」

「これは、装甲地竜の鱗で作ってもらったものですわ。全身だと機動性が落ちるから」


「「「頑張って!」」」

「でも、諦めてもいいわよ。あいつ、自滅するから」


 お墨付きをもらった私は、故郷に戻った。






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