第2話 流派、自衛隊スクール

 ☆☆☆3年前


 私の父は、100人規模の冒険者のクランのリーダーだった。


 魔法剣士、冒険者ギルドで一番の冒険者として、人望があったわ。

 私は、そんな父が誇りだったの。


 義母と義妹がいたけど、関係は良好だった。


 しかし、突然、悲報が訪れたわ。


「ソニア!ダンが、大怪我したのよ。場所は冒険者ギルドよ!」


「えっ」


 これでも冒険者の娘、事故や、怪我、死も覚悟をしていたけど、場所が冒険者ギルドなのが気になった。


 義母マリアと、義妹メルルと冒険者ギルドに向かう。


 ☆☆☆冒険者ギルド


「亡くなった。どうして・・・」

「貴方!!」

「義父さん!!」

「冒険者同士の諍いを仲介して、突然、足を、妙なもので撃たれたのです・・」


「血管の太いところがあって、そこに、礫が当たったようです」

「回復術士も、ポーションも間に合わなかった」

「すまない。怖くて、見ていることしかできなかった・・・」



 話を聞くと、相手は、転移者、「じゅう」と言う武器を使う。


 たまに、この世界に現れるらしい。


 勇者、剣聖、聖女、魔道士、内政職ではない奇行種だと、


「宿を大勢で囲んだが、危険だ。相手は子供、冒険者で言えば、見習いか、駆け出しの年齢だ。お嬢様と同じ年齢です」


「そう・・なの?」


「あっ、騎士団が来た。領主様の使者と一緒だ。後は領主様に任せようぜ。


 しばらくして、とんでもない知らせを聞く。役人がやってきた。


「えっ、無罪!」


「何故!」


「ヒドイ!」


「ダンは平民である。冒険者同士のいざこざは、その場の決闘で解決する慣わしである。無罪ではない。領主様の屋敷で、一月の謹慎と、この世界の慣わしの教育を受けている。


 転移直後で何も知らなかったのだ」


「そんな。タクマは、助けると称して、冒険者の頭越しに、危険な礫を放ったと聞きます。父は、冒険者のルールを教えていただけですわ」


「フン、教え方が悪かったのではないか?」


 冒険者の助太刀は、スタンピート災害など以外は、相手の許可が必要だ。たとえ死ぬことになっても、変わらない。


 それを、魔物と近接格闘している冒険者がいるのに、危険な礫を放ったと聞いた。


 だから、父が代表して、ルールを教えただけなのに、


「それは、見たのか?」


「いえ、私はその場にいなかったので」


 役人はそれだけ言って帰った。



 ☆☆☆


 やがて、タクマは、冒険者として、ギルドに在籍するようになった。


 彼奴の「じゅう」は強力だ。


 あっという間に、付近の魔獣を狩り尽くすようになった。


「奥様、お嬢様たち、お世話になりました」


「そう、仕方ないわ」

「今までありがとうございました」

「グスン、皆様、お元気にです」


 クランに属していた冒険者たちは他領に引っ越しをした。

 止める事はできない。

 彼らも生活がかかっている。


 冒険者がいなくなって、代わりに来たのは、女冒険者モドキだ。


「「「キャータクマ様!」」」


「私とパーティを組んで!」


「え~、どうしようかな」


 お金目当てだろう。ほとんどのクエストをこなして、大金が入っている。

 これでも、反省をしていれば、と思った。


「アハハハ、でさ。変なおっさんがカラできたのさ。獲物を横取りするなって、だから、テンプレ通りで、足を撃ったら、死んじまったよ」


 許せない。まるで、路傍の石を蹴飛ばしたように父の事を話すのを聞いた。

 復讐を誓う。メラメラと、魂の底からゆっくりと、しかし、確実に、力強く決意が湧き上がる。


 私はクランで炊き出しの係をしていた。

 生活魔法と帳簿付けぐらいしかできない。


 今のままでは無理だ。


 修行に出よう。


 義母と義妹に、心中を話す。


「そう、なら、お別れね」

「グスン、お義姉ちゃん・・・」

「え、どうして」


「あのね。修行に行くのでしょう?お金が掛かります。このお金を全て使いなさい」


「でも、でも」


「馬鹿にしないで、これでも料理の腕はあるわ。メルルの平民学校に行くお金だけはいただいたわ。努力してそれでもどうにもならないことがあるの。


 しかし、努力して諦めるのと、そうしないで諦めるのとは今後の人生で全然違うのよ」


「お義母さん・・」


「隣の領地、金の鹿亭が私の親戚の店なの。そこで働いているから、どうしようもなくなったら来なさい」


「はい。お義母様!」


 私は、民間の剣術師範に弟子入りした。


 女騎士学校だと、武術の他に、礼儀作法などの余計なことを教えるから時間が掛かる。


 ☆1年後


「はあ、はあ、はあ、男にかなわない」


「ここで教えられることは全て教えた。女剣士としては、中の下だな。男を入れれば、下の中だ。君は修行を急ぎすぎる傾向がある」


「先生、しかし、帝国の鬼の姫騎士ロザリザ様は男を凌駕すると聞いています。私と変わらない年齢なのに!」


「・・・幼い頃からの英才教育の賜物だ。身体強化魔法、俊足、時間体感操作にくわえ。実戦経験が豊富だ。盗賊と死闘を繰り広げたと聞く。君はもしかして、技を覚えれば次の瞬間から使えるとか、浅はかな考えを持っていたのか?」


「魔法・・・」


 私は付近で一番の魔道士の私塾に行き。教えをこいた。


 ☆1年後



「基本は全て教えた。後は、基礎訓練を忘れずに、経験を積むこと。貴族学園魔道科は無理だ。平民の魔道学院の試験は受けられるレベルぐらいかな」


「無詠唱です。無詠唱を学びたいのです!」


「アハハハハ、無詠唱とはワシでも出来ん。無詠唱とはな」


 ・・・魔法の基礎理論を頭に入れ、完全に理解して、初めて、ある日、突然、無詠唱で魔道を使えるようになるのだよ。一生の課題だよ


「それじゃ、遅いんです!不屈の魔道士ローズ様のようになりたいんです。私と変わらない年齢なのに!」


「あの方は、名門魔道一家出身だが、素質がないと迫害され、それでも、一流の魔道を幼い頃から目にする機会があった。だから、目に焼き付けていたのだよ。


 それこそ、一日、何万回も、魔道の練習をしていたからだ。あの方の人生は密度が濃いから、無詠唱が開眼して名をはせたのだよ」


「そんな・・・」


「君の挫折はこれからなのに、何故、落ち込むのだ?」


 お金はまだあるが、無駄使いは出来ない。


 何を学べばいい?


 悶々としていると、


 朗報、悲報ともとれる噂を聞いた。


 他領の食堂で食事をしているとき。


「タクマが、女相手に、逃げたってよ」

「いい気味だぜ。しかし、俺たちとは関係ない話だぜ」


「違いない。アハハハハハ~~~」



「そのお話を詳しく!」



 何でもよ。ここら一体、獲物を狩りつくして、さあ、めでたしめでたし。となるハズだったがよ。


 瘴気が湧きやがった。



 魔物が減れば、瘴気が湧き。そこから魔物が湧き出てくる。世の理だ。



「おかしくないですか?聖女様が浄化をなさるハズですが」


「それがよ。タクマはハーレムを作っているが、人族の女は、皆、処女じゃないから嫌なんだとよ。それで、聖女様を口説こうとして、警戒した貴族様が、あの領から引き上げたのさ」



 まあ、女冒険者の経験は早い。しかも、タクマ目当ての女は皆阿婆擦れだろう。


 聖女様は結婚するまで純潔を保つ。


 聖女様の婚約者は貴族が多い。


 純潔を汚されるのを恐れて、婚約者が、聖女様を引き上げたのね。




「傑作なのがよ。って、おっと、不謹慎だがな。瘴気から装甲地竜が湧き出たのよ。鱗が鋼鉄のように固い地竜だ。奴の礫が効かなかったんだ」



 ☆☆☆回想


 ダダダダダダダダ!


『タクマ様!頑張って!』


『頑張れ~~~』


 奴のパーティは、獣人族の女だ。


 タクマを気分良くする者だけを残した。


 な~んの役にも立たない。


『スゴイ』と褒め称えることしかできないのさ。


 カンカンカン!


『・・・効かない。向かってくる!一時撤退だ!』


 ここを抜ければ、街に行く。


 さあ、大変だと言うときに、颯爽と、女だらけの冒険者グループが現れた。


『ローズちゃん。私たちで注意を引くよ!だから、私の反対方向から、アイスバレットを撃ちまくって!』


『ロザリザ様、分かったかな!打撃は、アリサちゃん!頼むかな!』


 女剣士ロザリザ様、鬼の姫騎士!と不屈のローズ様が現れて、鉄地竜の注意を引く。


 地竜の左から、巨大な氷が、右から真空を利用した剣撃が襲う。

 少しづつ。鱗が削れていく。


 地竜は、たまらず、口を開け咆哮をあげた。


『グオオオオオオオオオーーーー』


 それが命取りになったのさ。


 ダダダダダダダダ!


 100メートルくらいの距離から、鉄の礫が、地竜の口の中に放たれた。


 体内を破壊された装甲地竜は、ドタンとひっくり返り。


 最期、ロザリザ様が、喉の薄い所を刺突したって聞いたよ。



『ヒドイ!獲物の横取りは禁止だ!僕があともう少しで倒せたのに!』



『・・・うん?冒険者法施行規則に、いわゆる助太刀は、以下の場合、相手の承諾を得ずに行うことが出来る・・・③緊急事態、街や村等に被害が起きると予想される場合、これに該当する』



『何だよ。そんなこと教えてくれなかった!いいから僕が討伐したと証言しろよ!』


『貴方は逃げようとしていたよね。


 じゃあ決闘いたしますか?~~私は剣士ロザリザですわ!こちらの黒髪の子がジエイタイスクールのアリサ、茶髪の子が魔道士ローズちゃん。誰でも良いですわよ。一人選びなさい! 』



『・・・フン』


『『『タクマ様!』』』


 ・・・・・・・・・・・



「ジエイタイスクール?!」


「ああ、何でも、向こうの世界の騎士団の流れをくむ流派だ。修行を積んだ者だけが、里を出られるとか、そんな話を聞いたな」


 世界は広い。タクマよりも強い人たちがいる。


「今どこに?」


「さあ、領主の接待を断り。素材を採ってどっかに行ったと聞いたよ。彼女ら、転移者が幅をきかせている冒険者ギルドを嫌って、腹いせに素材を卸さなかったときいたな」


「有難うございます。ここの支払いは私が!」


 チャリン!


「え、こんなに、嬢ちゃん。がんばりなよ」


 私は、彼女らを探した。


 仇を取ってもらう?

 いや、違う。この復讐は私がやらなければならないと決めたこと・・・


 私には剣と魔法の素質はない。


 だけど、会わなければ何も始まらない。

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