Episode:11 未来永劫

「...オレも行かせてくんないかなー...。」

と、オレは言った。あの人を、放ってはおけなかったから。

「...これ以上、面倒事にしたくなければ、ココにい―――」

そりゃそうだよな...。オレまで巻き込みたくはないんだろ。でも―...。

「そう言うと思ってたから、"進行空間領域"くらい自分で作ればいい!!」

そう言って、自分でこじ開けた。

「...じゃあな。」

とだけ言って、中へ入っていった。


...オレは白石美月の腹部を刃物で斬った。

もう助からないと、分かっていたけれど、まだ抵抗心があった。

「サァ...今度はオマエが攻撃される番だ。」

と言い、銃を放ったが、その寸前で、白石美月は姿を消した。

「...どこへ行った?」


...何......で...。戦意喪失したんじゃなかったの...?

そもそもあそこで完全に仕留めたと思ったのに、何で死んでないの...??


「ヴォエッ」

傷を負ったのに激しく動いたせいか、その場で嘔吐してしまった。

「...大丈夫か」

聞き覚えのあるような声色だから、ワタシの知人かな...?

「...うん」

その人は決してワタシの方を向くことはなく、フードを被っていた。

とにかく謎だった。何で正体を隠すのか、分からなかった。

「...ちょっと待ってろ、アイツを仕留めてくる」

「...うん」

ちゃんとした意識を取り戻せてないワタシは、

ただただ頷くコトしか出来なかった。


...陰術・"追跡者トラッカー"。


陰は気配を隠す性質があるから、それを利用してアイツにトドメを刺す!

「黒野秀夫。一つだけ自覚させてやる。...オマエを殺すのはこのオレだ!!」

そういって、首を切断した。そのついでに、さっき召喚した陰の追跡者が、

ヤツを陰の中へと取り込んでいった。


...殺した。正当防衛だとしても、今オレは、実の父親を殺したんだ。

戸惑いを覚えた。無意識に身体が動いたというコトと、

そこに躊躇いがなかったいうコトに。


オレは戻って、ミヅキさんを聖霊都市から戻そうと、

彼女の元へ向かう途中だった。

「...片付けて来た。だから戻ろう。...帰るべき場所に!」

と、振り向いてオレは言った。

「え...カゲフミ君?」


「...!!」

目が覚めた時には、ワタシは普通に自分のベッドの中にいた。

夢...だったの......? ...いや違う!!

昨日ワタシは、確かにお父さんを助けようとして、”進行空間領域”を出現させた。

だからこれは...”現実"!!

身体を起こしてワタシは、カゲフミ君の部屋に行った。

そこには、散らかったモノだけがあった。

一人で何処かへ行くなんて、どうしたんだろ...。


...この世界では、”術"というものがある。

13歳以上であれば、誰でも使えるモノだ。

一つ目は”陰術"。主に影を駆使して戦うコトが多く、

影は暗いせいか、これを使う者も大体の人が暗い性格をしている。

二つ目は"壊術"。どの技も範囲が極めて狭いが、その破壊力は極めて大きい。

破壊力の影響で、結局は広い範囲へと攻撃が広がるため、

その範囲の狭さは、あまり重要ではない。

最後に三つ目は"月光術"。白石家の者だけが使えないためか、

それは凄まじい力を持つ。白石家の者がそれを出す姿は、

まさに神々しく、誰もが見て感嘆するモノなのだ。

...以上の三つが、この世界にある"術"の種類だ。

今画面の前にいるそこのキミ! この世界から、新しい"術"を見つけられるかな...?


「...早くオレも13歳以上になって、術を身に付けたいなー...。」


...それから2日後、黒野秀夫の完全なる死亡が、ニュースで報道された。

それに伴って、白石大輔の死亡も報道された。


―"Ultimate Curse"の部屋にて


「...クソがァアァァアァ!!!」

そのニュースを聞いて、オレは喉が壊れるくらい発狂して、叫んだ。

黒野秀夫の死への喜びよりも、白石大輔の死への悲しみが強かったからだ。

...これまで生きてきた中で一番、殺し屋を続けようか迷った。


―数週間後の12月15日、黒野秀夫の葬式が行われた。

黒野秀夫の悪行に賛成する賛成派と、反対派。

そして家族と、白石家も含め、約300人近くで行われた。


父さんの死体に火を近づける母さんの姿を、オレは遠くで見ていた。

「...カゲフミ君。」

燃えて灰と化していく父さんの姿を見ていたミヅキさんが、言った。

「...何?」

「未来永劫、一緒だからね...。ワタシと、カゲフミ君は。」

「...うん。」

涙交じりに、その言葉は出た。とても不思議だ...。

ずっと憎かったはずなのに、ずっと死んでほしいと思ってたはずなのに...。

―何故か、その感情の中に悲しみがあった。


それから二週間後の12月29日、ある異変に気付いた。

「...待てよ...。何でオレの父さんの葬式は行われたはずなのに、

何でミヅキさんのお父さんの葬式は行われないんだ...?

もう死んでから一ヶ月以上、経つはずなのに...。...!!」

やっと気付いた。何でこんなに、気付くのが遅くなったんだ...。


―ミヅキさんのお父さんは、まだ、死んでない。


-To be continued to Episode:12-

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