Episode:9 一つの命

「…もう夕暮れだし、今日はもう、ミヅキさん達の家…じゃない。

あのホテルに戻らないとな…。」

でも、戻る気は一向に出て来ない。でも、もう選択肢は一つしかないんだ。

そう思い、少し迷ったが、扉を開けた。

「た…ただいま……。」

苦笑いの顔で言ったから、良いイメージは与えなかったただろう。

その途端、走ってくる足音が聞こえた。ミヅキさんかな?

するとやはり、その人はミヅキさんで、オレに抱きついてきた。

「おかえり…めっちゃ心配したんたんだからね…!!」

少し気まずくなるか…? と思ってたけど、全然そうでもなかったから、

少し安心した。何にせよ、関係を本当に断ち切らずに済んだんだから。


その後オレ達は夕食を食べ風呂に入り、また一日を終えようとしていた。

「ていうかさー、カゲフミ君って学校、ずっと行ってないの?」

と、ミヅキさんが訊いてきた。それに対してオレは、

「うん。入学式以来…ずっと行ってないんだ。」

と答えた。

「何で? なんかあったの?」

「別になんかあったってワケじゃないけど…苦手なんだよ、人付き合いが。

新しい場所に期待なんてモノは出てこなくて、逆に不安に満ちてたよ。」

それはずっと自分の悩みだった。

「そーなんだ…じゃあさ、ワタシが行ってる学校、一回行ってみない?」

「…でも…久しぶりに行ってみたい、っていうのはあるかな」

他人の提案には基本的”No”とは言えない。

それは自分の性質でもあり、欠点でもあった。

「でも…そこでオレの親が知っちゃったらまずくない? それに…

…もしも自分の両親が犯罪者、なんて最悪な噂が出たとしたら…」

そう言ったら、軽くミヅキさんに肩を叩かれた。

「悲観的な想像し過ぎ。もっと楽観的になんないと、人生損だよ?

それにさ、カゲフミ君は知らない人だから、

相手もカゲフミ君のコトは知らないワケじゃん?」

ミヅキさんのいう言葉に、うん、と頷いた。

「だから、そんな噂は広まったりはしないし、転校生が冷たくされる、

なんてコトもないと思うよ?」

ミヅキさんの説明に、納得してしまった。

何で自分はこんなに悲観的なんだろうと、自分を嫌に思いながら。

それを話した後、お互いそれぞれの布団へと向かった。

最近はずっと、パッとしない日が続くなー…。


今朝、テレビでニュースを見てみたら、事件のニュースが流れてきた。

テレビのアナウンサーが、

「昨夜より、不審な男性の目撃情報が飛び交っています。何にせよ彼は昨夜、

深夜に急に苦しそうな叫び声を上げたり、その後大声で笑うという、

意味深な行動をしていた、と視聴者からの情報提供がありました。」

と言った。

「…朝からこんなネガティブなニュース見たくないなー…。」

と、オレは言った。一日中どんよりとした気分は嫌だったから。

すると、アナウンサーが、

「その男は———在住の、”黒野秀夫クロノヒデオ”。”黒野秀夫”という者のようです。

外見は全身黒い服を着ており、いつも右手にレジ袋のようなものを、

手に持っているとのことです。ご提供感謝致します。」

在住、の前のとこで砂嵐が入ったため、聞き取れなかった。

「…ハ?」

そのニュースを聞いて、思わず声が出てしまった。

「マジで何してんのコイツ…。」

まさか未だに犯罪をし続けようとしてたなんて、思いもしなかった。

「知ってる人ー?」

と、ミヅキさんが訊いた。

「いやいやいや…父さんじゃん。オレの。」

と、オレは返したが、動揺が抑えきれず、

手に持っていたリモコンを落としてしまった。

「…!?」

二人にも、衝撃が走った。その瞬間だった。

「緊急地震速報です。強い揺れに警戒して下さい。」

不協和音と共に、アナウンスが流れた。

オレ達は急いで、テーブルに駆け込んだ。

マジで全身が震えてた。特にビビリだから、人一倍震えてる気がする。

…数分後、揺れが落ち着き、オレ達の地域ではなかったコトに安心した。


一方その頃、”黒野秀夫”は、アメリカで彼の友人の、

”Lick Forgetter”と会っていた。


「...Hey Rick. I may have already done something I can't take back.

(…なぁリック。オレはもう取り返しののつかないコトをしたかもしんない。)」

と、オレは言った。

するとリックは、

「No, you are too blind to see your surroundings.

What's the use of lamenting now?

(いや、周り見えて無さ過ぎ。今更嘆いてどうすんだよ?)」

と、返した。

「Besides, I heard it was reported on the news.

(それに、オレはニュースで報道されたらしいんだ。)」

通りで街中を歩くと、自然と視線が集まるワケだ。

「Is that why you ran away? I'm not gonna hide you, okay?

(だから逃げてきたのか? 別にオレは匿ったりしないぞ?)」

別に匿ってもらう、つまりなんて毛頭ないんだけどなー…。

「No problem. That's why I came here,

but you don't have to go that far.

(問題ない。だからココに来たんだ。でも、そこまでしなくていい。)」

と、とりあえず返しといた。

「Okay. Get back in there and get caught. It's better that way.

And that plastic bag... it's got the heads of a person you killed, right?

(分かった。とっとと戻って捕まれよ。そっちの方が絶対良いから。

それにそのレジ袋…。オマエが殺した人の生首が中に入ってるんだろ?)」

何でコイツはこんなに勘が鋭いんだよ…。

「...Yes... Well, I'm going back now.

(…そうだよ…。じゃ、オレはもう戻るよ。)」

とだけ返して、オレは日本に戻っていった。

「...We'll meet again sometime.

(いつかまた会おうな。)」

と、リックは言った。オレはそれに返事はせずに進んでいった。


…夜、やけに隣が騒がしいと感じ、意識がハッキリしないまま目を開けると、

そこには怨霊とミヅキさん。そしてその間に謎のゲートが広がっていた。

「…何…コレ…。」

ミヅキさんは、その中に少しずつ進んでいく。そしてその中に、

身体が完全に入り切ろうとしていたその時気付いた。

…コレは、”進行空間領域ワームホール”だと。

「…待って…ミヅキさん!!」

「…夜に大声出すなよ。」

そのゲートは閉じて、完全に姿を消した。

「…何したんだよ…!?」

オレはとにかく、目覚める前に何があったのかが知りたかった。

「気にすんな。アイツの意思が、行動へと繋がっただけだから。」

曖昧な説明をしないでくれ、と言いたかったがやめた。


…窓を見ると、月は雨雲により一部隠れていて、雷雨が遠くから近づいていた。

…オレは聖霊都市にある、森の中を歩いていた。

どうやらココは、この地の守り神として霊が潜んでいて、

一度脚を踏み入れたら、二度と戻っては来れない場所らしい。

「…オイ。」

誰だ、と後ろを振り返ってみた。人間だった。

「…ワタシは”白石美月”。オマエからお父さんを取り返しに来た。」

いやいや、もう死んでるって、しぶといなー…。…ッ!!?


-To be continued to Episode:10-

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