Episode:7 The dirty hearts

22:35


“Ultimate Curse”はまだ、身動きが取れずにいた。

「…長くココにいすぎちゃったな…。待て、もう来ちゃうじゃねェか…!!」

…焦って立ち上がった。…動ける!! 急いで向かおう!!


22:53


…二階の窓が開いてるな…恐らく、この窓がある部屋に人はいない…。

…よし、入るか。

「…。」

絶対護り抜いてやる、という希望でオレは満ち溢れていたが、両親の奇襲。

その現状を目の当たりにして、そんなモノは一気に絶望へと変わった。

「ァァアァアァァアアア!!!」

「…!!」

下で叫び声が聞こえた…。ミヅキちゃんかカゲフミ君の父さんか…!!

頼む…!! まだ助かる範囲でいてくれ…!!!

オレは、階段を降りた。何だアレ…火…!!?

「…地獄で嘆け。」

「…!!」

「…やめてーーーー!!!!!!」

ミヅキちゃんのお父さんはもう、目を瞑っていた。

本当に死ぬ覚悟があったからこそ、出来た行動だろう。

オレは急いで走り、カゲフミ君の父親の顔を蹴った。

「ハァ…ハァ……ァ…..。誰だ…?」

「遅れて本当に申し訳ありません。…助けに来ましたよ。」


———22:56 “Ultimate Curse” 応戦


「…。……オマエ、あの時の…!!」

カゲフミ君の父親は驚くと同時に、混乱しただろう。

確かにあそこで、身動きがとれない状態にしたんだから。

…それにしても…金槌に…脚には銃で撃たれたような跡に、

手には刃物で刺された跡…。マズい状況だな。

「…バカか、オマエら。」

と、言ってみた。本当に何でこんなにも冷静じゃないんだと思ったから。

「アァ!!?」

カゲフミ君の父親は、今にも動き出しそうだった。

やっぱ落ち着きがねェなー…。

「そういうトコだよ。アァとしか言えず、冷静になれねェトコが

馬鹿だなっつってんだよ。」

「…知るかアァァアアアァァアァアァァアアアァァアァ!!!!」

やはり冷静にはなれず、カゲフミ君の父親は、オレにに襲いかかってきた。

本当に何であの時こんなヤツの命令を易々と受け入れ、

しまいには刺されてしまったんだろ。その疑問がまだ、頭の片隅にあった。

「…そういうバカは力は強いかもしんねェがよ…。

冷静な判断が出来ねェから、隙があり過ぎるんだよ。

今から実感させてやる。オマエらの罪の重さを。」

と言って首にチョップしたら、カゲフミ君の父親は気絶した。

倒した…のか?


「…出来るだけ遠くに逃げましょう!! ココに留まるのは、

かなり危険です!! 急いで!!!」

“Curse”さんは今後の展開が何となく予想出来ているのか、

マジでヤバい状況になると知っていたのか、声色からそのヤバさが読み取れるな…

「…待って!!」

と、ワタシは言った。

「…お父…さんは……どうするんですか…?」

「もう助かる可能性が殆ど0に近い状態です。なので置いてきます。」

「え…!!」

悲壮感漂う状況の中、ワタシは絶望的な顔で、”Curse”さんを見つめていた。

「さあ早く!!」

そう言われて、刃向かうことも出来ずに、ワタシ達は家から飛び出した。


…辛いはずだ…。家の中は荒らされるわ、父親を半殺しにされるわと…。

でもホントに偉いなこの子は…。そんな状況でも、泣き叫んだりはせず、

冷静でいてくれるからな…。

「…止まってください。」

ココでオレは、一つの違和感に気付いた。

「…可笑しいと思いませんか? 何にせよ、追いかけて来ない…。

あくまでも自分の予想ですが、相手は恐らく、ほぼ無策で来ています。

用はその時の気分次第で行動してるんですよ。」

…あれだけ後先の考えられない行動をしてるんだ。

その時点で、そんな作戦なんてアイツらには考えられるはずがない。

「…待って下さいよ…。無策で来た、ってコトは、初めっからワタシ達を

襲うつもりは無かったんじゃないですか?」

と、ミヅキちゃんが言った。アイツらの意図が完全に見抜けた。

「…戻りましょう。アイツらは多分、カゲフミ君やアナタ達を

ビビらせたかっただけですよ。」

「…はい。」

ミヅキちゃんとそのお母さんが返事をした。オレ達は戻るコトにした。


「…戻ってやるコトは、事件の後処理です。ミヅキさんは119番通報を、

お母様は自由に動いてもらって構いません。」

「了解です!」

と言って、ミヅキちゃんはすぐさまケータイを取り出した。

部屋はそんなに荒らされてはいなかったみたいで、

少し物が崩れ落ちていた、とのコトだったので、そこは安心した。


それから9分程経った経った時に、救急隊が到着した。

ワタシのお父さんは今、生死不明で、

助かる可能性がゼロに近いと言われているけれど、

それでもワタシは、お父さんの無事を祈り続けていた。

「どうか…無事でありますように…。」


…今回の事件の後、ワタシ達の家は警察によって

立入禁止区域となされたから、あの日の夜から今日まで、

ホテルでの生活が続いていた。

「ごめんね…カゲフミ君も巻き込んじゃって…。」

「大丈夫。なんとかミヅキさん達が無事に生きて帰れて来れて、

オレは良かったよ。」

「ミヅキー。カゲフミー。病院から結果の報告が来たわよー。」

今日12月1日、病院からの手紙が届いた。

それにはこう示されていた。

「あの日からちょうど1週間が経ちますが、いかがお過ごしでしょうか。

この度手術が完了致しましたので、報告させて頂きます。

手術の結果、アナタ様のお父様の死亡が、確認なされました。

その為、コレに対する周りの動きも、ココに転載させて頂きます。

一、白石大輔様の死亡より、黒野陰文様のご両親に対し死刑を宣告致します。

ニ、白石一家の住む家とその周辺を、今後もしばらくの間、

  立入禁止区域と致します。

三、今回の事件の発生他の周辺の調査実行人として、

  秘密警察”TSP”一同を任命致します。

                         ———20XX年12月1日」

「…え?」

悲しみ…よりも、衝撃の方が強かった。こんなにアッサリと、

ヒトは死ぬんだって…。

封筒の中には、お父さんの遺書が入っていた。

悲壮感が漂う状況の中、三人でそれを見た。

「元気にしてる?本当に悪いけど、これがオレの結末らしい…。

アヤカ、13年間、一緒にいてくれてありがとう。

嬉しい時も楽しい時も、辛い時も悲しい時も、二人で分かち合えたよね。

パートナーがオマエで本当に良かったよ。これからはオマエ一人で、

白石家を引っ張っていくコトになるけど、心配すんな。

オレはずっと、空の果てから、オマエらを見守っとくぜ。

そしてカゲフミ、短い間だったけど、一緒にいれて楽しかったぞ!!

もっとカゲフミと話したいコトがいっぱいあったから、

未だに現実逃避しちゃってるよ(笑)

でもカゲフミなら、将来絶対成功出来る!自分を信じて頑張れよ!!

…ミヅキ。13年間育ててきたけど、どうだった?

まだ死にたくねーよオレは。せめて死ぬなら、オマエが大人になった姿を

見てから死にたかったなー…。

でも、大人になっても、多分ミヅキはオレが知ってる

ミヅキのままなんだろうなー。

何はともあれ、オレ達のトコに生まれて来てくれて、ありがと。

オマエを産んだコトを後悔したコトは、一回もないよ。

コレからも幸せでいてくれ。ミヅキが幸せなら、オレはそれでいい。

いつかまた、会おう。さよなら。…次は家族全員で会おうな!」

と、書かれていた。

「…ちょっと外行ってくる。」

と言って、ワタシは外に出た。

「あ…うん。」

カゲフミ君はそう応えた。


「ハッ…ハッ…..ハッ…ハッ………。」

誰もいない街を、ワタシはただ一人走った。

「…ッ……ソだ………。…死んだなんて……ウソだぁ…!!」

涙交じりに、ワタシは一人走る。そして精神的にも、身体的にももう、

限界を迎えていたのか、その場に倒れ込んでしまった。

ドンッ、ドンッと、ワタシは地面を殴った。

「何であの時何も出来なかったんだ!!何で止められなかったんだ!!

分かるでしょ!?ねェ!!?答えてよ!!!ワタシのバカ!!!!」

血が出てるのにも関わらず、ワタシは地面を殴り続けた。

「本当に…情けない……。行動力のない自分が情けない……。」

手が痛くなったのか、ワタシは地面を殴るのを止めて、

その場に疼くまっていた。

…戻んなきゃ…心配するよ……。でも……ワタシは自分を許せず、

立ち上がれない……。でも何とか、近くにあった橋に行って、

そこから景色を眺めていた。

「……少しは冷静さを取り戻せたのかな…。」

と言った、するとその時、背後から誰かに抱きしめられ、

手を握られたような感じがした。

「…誰です……か………?」

ワタシはまだ目から涙が出ていた。全然冷静にはなれなかった。

「…どこ行ってたのもー。めっちゃ心配したんだからね?しかもこの傷…。

痛いでしょ?早く手当しないと。」

その声で分かった。

「カゲフミ君…?いや、お父…さん…!?」

「…オレだよ。」

でも後ろには、誰一人いなかった。世界ではコレを、”幻覚”というらしいけど…。

「…。ねぇお父さん…。ワタシ本当に…どうかしちゃってるよね…。

急に家飛び出して、手を血まみれにして…。どうすればいいの…?」

と、ワタシは言った。本当はこんな無様な姿をお父さんに一番、

見られたくなかったのに。

「…じゃあ。気持ちが落ち着くなるまで泣きな。オレも泣きたい気分だからさ…。」

「…ありがと……ウゥ……。」

ワタシは声を上げて泣いた。でもそんなワタシをお父さんは、

何も言わずにいてくれた。


———そして、ワタシの幻覚のお父さんは、目に涙を浮かべながら、

段々と消えて亡くなっていった。


-To be continued to Episode:8-

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