Episode:6 侵入

11.24 22:07


———カゲフミの両親は、そっと家へと近づいていった。

暗闇に漂う、やけに澄んだ空気。槍が落ちるように、激しく降る雨。

そんな中、奇襲は開始された。


…窓を壊して侵入し、最初に目に入ったのは、そこで寝ていたカゲフミだった。


「…!!」

カゲフミ…まさかだ…。こんなすぐ元気になったとは…!! 許せない…!!

いざ本人を目の当たりにすると、無性に怒りで自分の頭が溢れて仕方がなかった。

「…早く盗れるモノだけ盗って、立ち去りましょーよ。面倒事避けたいもん。」

「待て。そうするのもアリだけど、それでも長期戦になるコトは、

覚悟しといた方がいいぞ。もうバレてる可能性があるからな。」

「仕掛けが簡単過ぎるからよ。…だったら尚更何で来たのよ。

ホントにバカね、アンタって。マジで謎なんですけど。」

「すぐ終わらせるから、そう言うのはやめろ。オマエも死体にされたいか?」

暴力的だなぁーこの人は……。

「…はーいはい。」

父は、刃物を取り出し、カゲフミに向けた。

「サァ…。今度こそ…仕留めてやる。」

そう言って、父親は寝ている息子に刃物を突き刺そうとした。しかし———。

「…え。」

カゲフミは抵抗もせず、本当に刺されてしまった。殺したのだ、今度こそ。

「偽物…じゃないよな? ちゃんと血も出てるし…。でもホントに、こんな

アッサリと倒せるモンなのか?」

「…いや、無いね、こんなの偽物って言われても、本物としか思えないもん。

ていうかやっぱり殺したくなかったんじゃん。めっちゃ動揺してるけど?」

「…うるせーな。盗れる物だけ盗って、とっとと逃げるぞ。」

そう言って、下の階に行こうとした。その時だった。

「…!?」

父親が急に蹴られて、倒れた。月明かりが照らす窓には、人が一人いた。

「…!!」

夢じゃ無いよねコレ…。

「…誰かと思えば、テメーらかよ。クソ生意気なバカ共が。」

…カゲフミだった。父親は今までの勝手な恨みが蘇ったのか、

父親はカゲフミにまるで全てを忘れたように襲いかかった。

「…ァァアァアァァアアア!!」

———しかし、その刃物を握った手をカゲフミは掴んだ。

「…オマエらがそんなに分かりやすく入ってくるとは思わんかったぞ。

既にバレてんだよ、こっちには。分かったなら手を離せ。」

父親はその手を離すつもりは毛頭無かったが、身体が勝手に動き、

刃物は手から離れた。そして刃物が床に触れた瞬間、壊れてバラバラになった。


———その音で、目が覚めた。

「…ん」

その音で、ワタシは来たことに気付いた。

そのためまずはお父さんの部屋に行って、小声で起こした。

「…お父さん、起きて」

「……。…来たか」

…マジで熟睡してたんだな…。

「うん。だからいざという時反撃できるように、準備して。

出来次第、リビングに来てね。」

「…了解。」

次にお母さんの部屋に行った。既にお母さんは、起きてた。

「…こっちはもう準備万端よ」

「分かった。リビングに来て」

リビングには、既に準備を終えたお父さんがいた。

「…お父さん、お母さん、聞いて。私に作戦がある。とりあえず外に出よう。

コッソリとね。」

「了解」

ワタシ達は足音一つ立てずに、静かにドアを開けて、閉めた。


「いつでも行けるぞ。」

喋りかけたのは、怨霊だった。

「…っていたのかよ。」

「いやーさっきの音に反応したからさ。」

「あーね。こっちもいつでもいける。」

その瞬間に、カゲフミは姿を消した。

「…誰と喋ってたの??」

カゲフミの母親は、動揺を隠し切れず、ただただその場に立ち尽くしていた。


…遠くにミヅキ達がいた。だからオレは、走った。

「…あ、カゲフミ君!」

「待たせたね! …!」

オレとミヅキは、ハイタッチをした。しかし、そこでヤバい状況に気付いた。

「…ミヅキ達…。何で外に出た?」

「…アイツらから逃げる為だけど?」

「…ヤバいかもしんない、相当。」

「…え」

「だって、何も持たずに外行っただろ。その隙を利用されて、

貴重品とか盗まれて逃げられるかもしんないぞ。」

「…そっか!!ヤバいよどーすんの…。」

…流石にアホ過ぎだろそれは。

「待て。オレだけ行く。オマエらはココにいろ。」

「…死ぬなよ?」

心配気味に、オレは言った。

「安心しろって!死なねェから!!」

そう言って、走っていった。


家に着いて、ミヅキの父はドアを開けた。やはりカゲフミの両親は、

貴重品を探していた。そして気付かれた。

「…何のつもりだオマエら」

「アァ…? そっちこそ殺されに来たのかよ?」

「オマエなんかにできるワケ———」

「アァ!!?」

カゲフミの父親は、その場にあったモノをとりあえず投げた。

それは、ミヅキの父の頭部に直撃した。

「痛って…!!! 何だこりゃ… …!! オマエは何てモン投げてんだよ!! アホか!!?」

痛くても構わず、声を振り絞った。

「ハァ…? 避けんのが、普通だろーが。」

マジで両親が馬鹿過ぎるんだよなー…。

投げたのは、金属製の金槌だった。こんなモノを、アイツらは漁っていたんだ。

そしてドンッ、と言う音がした。身動きが取れないように、

脚を銃で撃たれたんだ。

「…!! あっちから…銃の音が聞こえた…!!」

ミヅキは激しく動揺していた。

「……戻ろう。何にせよあの人は…一番最初に死んじゃダメな人だ。」

苦渋の決断だったが、戻るコトにした。


「…オマエら…イカれてやがる…。よくも子供なんて産めたモンだ。

情けねェもんだな。」

煽る…つもりで言ったんじゃ無い。コレは本音だ。

「テメェもっかい言ってみろよ!! 殺すぞ!!?」

オレ自身、この言葉を言おうか迷った。相手を激昂させてしまうかもしれない。

でもオレ自身が…それを言わないコトを許しちゃいない。

「……オマエらが産む子供は、その子の未来を闇にするって言ってんだよ!!」

その瞬間、手に刃物を刺された。

「…ッッ!!!」

痛い…苦しい…コイツら…!!

———そして突如、過去の記憶が蘇ってきた。

ミヅキが…7歳ぐらいの時の記憶が…。

「お父さん。人間って、いずれは死んじゃうの?」

「…うん。この世界で生きている人間は、死に向かってるようなモノだからな。

何でそんなコト聞いたんだ?」

「いつか…寝ながら死ねるのはありがたいけどさ…誰かに殺されて死んだり、

突然死ぬと思うと、怖くて…。」

…本人は見られてないつもりだろうが、確かにミヅキはその日の昨日くらいに、

階段で泣いてた気がするな…。

「…安心しろよ。そんな年で死ぬくらい、オマエは弱くねェからさ。」

「でも…もし本当に来ちゃったら?」

「その時は父さんが、全員無傷で守ってあげるからね。」

「そっか。…いつかは迎えるけど、お願い、まだ…死なないで…。」

「…仮に死んだ後だとしても、オレはオマエの父ちゃんだ。

それだけは絶対に…変わらない事実だ。」

「ゥアァァアアアァァアァアァァアアア!!!!」

「何…立ち上がっただと!!? ッ!!!」

オレは、コイツの顔面を思いっきり殴った。

「どういうつもりだ!! ココには何もな———」

「…このヤロォォォォォォォォォォォォォォォォァァアァアァァアアア!!!!!」

…やってしまった。激昂させてしまった。

オレはまた、コイツに殴ったり、蹴られたりされた。だがそれ以上に、辛かったのは、

ミヅキが窓からこっちを見て、泣いてたコトだ。

死ぬことに対する恐怖…。それが素人より強いミヅキにとって、

これは怖くて仕方がないだろ。殺されるかもしれねェのに…。

「ねェ…行こうよ…! 死んじゃうじゃん…このままだと…!!」

「…でもこっちには…何も抵抗できる道具は無い…。」

「だったら…黙って見てろって言うの…? 耐えきれないよ、ワタシには…!」

…どうしたらいいの…? ワタシは…アナタを止めるべき…?

「…何をしようとしてんの!」

それを言ったのは、カゲフミの母親だった。

「…頭に来た。だから殺す。」

「アナタ、本気で———」

「嘘でこんなコト、言えるワケねェだろ。」

オレは、マッチに火をつけた。一瞬躊躇したが、オレにそんな物はいらない。

「…地獄で嘆け。」

「…!!」

「…やめてーーーー!!!!!!」

もしお父さんが助かるなら、ワタシは何だってしただろう。

…でもその時、カゲフミ君の父親は何者かによって蹴られた。

「ハァ…ハァ……ァ…..。誰だ?」

「遅れて本当に申し訳ありません。…助けに来ましたよ。」


———22:56 “Ultimate Curse” 応戦


-To be continued to Episode:7-

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