フォトスタンド
誕生日、君に貰ったフォトスタンド。
アクリルでできたフレームは、まだ、透明なまま。
「ねえ、どんな写真を飾るの?」
君からの質問に、「うーん」とうなる僕。
「これから撮ろうかな」
僕の言葉を聞いて、待っていましたとばかりにほほえんだ、君。
「ふふ。じゃあ、撮りたいと思える場所にたくさん行かなきゃね」
「……誘い方が上手いな」
「えへへ」
君は鼻うたを口ずさみながら、スマホで眺めるデートスポットに想いを馳せていて。
僕はいつにしようかと、休日の予定を調べていた。
そして、いざその日になると、
「さいこー! 今日もすっごく楽しかった」
「ああ。可愛かったよ、今日も」
僕は、はしゃぎまわる君の姿に夢中になってばかりいて。
「もー。そーゆーのいいから。それはともかく、いい写真撮れた?」
「あっ、ごめん。また忘れてた」
「ふふっ。じゃあ、またお出かけしなきゃだね?」
一日の終わりに、お決まりのようにそんな約束をかわす僕らだった。
けれど、最後にかわした約束が、果たされることはきっともう無い。
僕はいつの間にか、一人には広すぎるこの部屋を持て余すようになっていて。
君から貰ったフォトスタンドは、あの日からずっと透明なまま。
今はただ、ぼんやりと眺めたアクリルフレームの、その向こう側で。
むじゃきにはしゃぐ君の姿が、浮かんでは消えてを繰り返し続けている。
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