あの日みた星空(そら)は
菜月 夕
第1話
まずい、まずい、まずい。
鹿島小鳩は頭を悩ませていた。
確かに残っている部員は1年の私だけで先輩たちは卒業と就職を控えて残りの3年生の時期を過ごさねばならないので、部活動なんてやっていられないのは判る。
だからと言って残ったたった一人の部員である私に部長を託してしまうのはどうかと思う。
このままでは伝統ある天文部は廃部の運命しか残っていない。
もちろん、友達やクラスメイトにも声をかけたけれど、夜の活動が主の天文部なんて今どきメジャーであるはずもない。
これで来月に開催の部の発表会で何か目に付く発表でも出来れば少し新入部員を、とも思うのだが、たった一人ではなんともしがたい。
気落ちしながら学校の廊下を歩いていくと、その話が耳に入って来た。
「生命の大量絶滅は何度も起こってるけど、3億5千万年前デボン期の絶滅が超新星爆発によるものって説があってな。それにより浅い海の生物が超新星の紫外線やガンマ線で絶滅して、より深い海に隠れ住んでいた生物が今のいきものになった。恐竜の時代には隅に隠れてた哺乳類の子孫が今の地上の動物になった事と言い、隠れ住んでいた者が後の隆盛を誇るなんて面白いだろうっ!」
男の子二人組の背の高い方の子が瞳をキラキラさせながらしゃべっていた。
私は思わず、「ね、ねぇ。星に興味があるなら天文部に入ってくれない?今なら可愛い女の子が付いてくるっ!!!」と勧誘に走ってしまった。
その男の子は少しびっくりしながら「いや、俺はクラブに入る気が無くて」、そうちょっとすまなそうに話してくれた。
なんでも彼の家族は来年には引っ越しをすることになっているので、クラブなどの繋がりを遠慮していたらしいのだ。
「ねぇねぇ、それなら今年いっぱい、いえ、今度のクラブ発表会迄でもいいの。それでクラブ会員を確保出来なかったら諦めるからっ!!」
そうして限定的に彼は天文部を手伝ってくれることになった。可愛い女の子が私だけなのと、部員が2人な現況には彼も引きつっていたけれど、天文部の部室を飾る星の写真などには目を輝かせていた。よしっ。ゲットーーっ。
それからは迫っていた発表会に使えそうな写真やデータをまとめたり、企画を考えたりと 無い頭を振り絞って考えた。
そこで、最近ハヤリのタイムラプス動画はどうかとなり、彼の父親のデジカメで一晩の夜空を撮ったり、説明文を読み上げてナレーションにしたり。パソコンの苦手な私の分まで彼がやってくれたのだった。ありがたやありがたや。あの時の私を誉めてあげたい。
この動画は動画サイトにも載せたりして前評判を取っておいたり。まったく慌ただしい日々だったけれど、この時の発表で興味を持ってくれた人も多かった。
ダメ押しになんとこの動画が天文ファンから丁度新星が誕生したところが写っていると言うのが発表され、大きな記事になったお陰で、その年の末にはなんとか部員を維持できることとなったのであった。
「俺は、そろそろ引っ越しの準備もしなければならないので新年からは出てこれないし、ここまでだね」
私はその言葉を聞いた時に、いつまでも続く様な気がしたこの時間が終わる事を知った。
そして言葉にしたかった言葉を飲み込んでしまった。
部員が増えたけれど、彼のいない部室はどことなく空虚で私は自分の気持ちをその時、恋だと…。
新年度、残った部員で再び部員勧誘の机を出した。
そこへとうに引っ越したはずの彼が「やっと親たちを説得してね。こっちに一人で残って下宿する事になったんだ。親たちに『好きな娘が出来たんだ』と言ったらなんとか許してもらえたんだ。
どうだろう。部員はまだ募集しているのかな?」
私は、彼の胸に…。
こんな派手な事をしたお陰で天文部は“恋愛成就部”と噂もたち、そんな男子や女子が入って賑やかになった。私達にあてられるせいもあるのか、もともと気の有る人たちも多かったのかカップルも幾つか出来、恋愛成就部、いえ天文部としての存在は安泰となった。
もともと、星空はいつの世もそんな二人を結び付けるロマンチックに満ちている。
あの時、彼がいなくて見えないと思っていた夜空(そら)は、いつもそこにあった。
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「星空」
ひとつ数えて 星を数えて 指でなぞって 星座をたどる
あの日会えなきゃ 迷子の様に 独りの部屋で 温もりを探す
あの日のあの星空(そら)は 今は想い出だけ
日々のはざまに 隠れてしまった
独りの部屋で 君の名を呼ぶ
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この短編は以前に創作グルに居た舞姫さん主導のアニメ企画の基本プロットに味付けをしてオリジナル化したものです。
ラストの詩には自作の曲がついていますが後で載せたいと思います。
ヘタなギター伴奏付きの予定です。
アニメ企画の方でも色々な人が絵を寄せていますが、こちらでも違った感性の物を募集したいとこちらにも載せました。
あの日みた星空(そら)は 菜月 夕 @kaicho_oba
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