幕間 医師と管理AI
現実世界。メンタル治療施設の内部。白亜の部屋で大牟田とスタッフが言葉を交わす。
「彼女は、上手く活動してくれたようだね」
「はい。――計画は今のところ順調です。ファイズ1は完了、次いでフェイズ2へ移行します。……反対意見もありましたが、今回のプロジェクトで懸念すべき、最初の壁は越えました」
「そうだね。僕としては賭けだったが上手くいって何より。あとは次のフェイズが上手くいくかどうかだが……」
目を瞑り、目頭を揉んだ後、小さく大牟田は息を吐いた。傍らのコーヒーに手を伸ばす。
「……管理AIは? 何か問題点を抽出したかい?」
「いいえ。《アズライル》からも《ジブリル》からも概ね問題なしとの報告が。ただ……『パターン18への兆候あり。当該職員は準備を』、との指示が出ています」
「よりによってか……」
大牟田はしばし目を瞑り、小さく嘆息をもらした。
「なってほしくはないが、18番目とはね。……やはり柚葉さんの被験創造物は厄介だ」
「残念ながら。想定する中では最悪のものです。無事に乗り越えられると良いのですが」
「それでもやるしかない。――海斗くんと柚葉さんを信じよう。そして私たちの力もね」
スタッフは頷く。――ここからが本番だ。管理AIもそのうち動くだろう。海斗たちの治療が上手くいくか、失敗するか。自分たちの行動次第で、今後は大きく変わってくることになる。
大牟田医師は大きく息をついて端末を操作した。そしていくつかの指示を部下に与えていくのだった。
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