三一章 もう遅い
「おい、
チーム・ハクヨウのメンバー四人がそろって
「なんだ、みんな。どうしたんだ、そんなにあわてて?」
四人とは対照的に、応対に出た
ジーンズにサマーセーターという中性的な格好だが、
――本当に、女性になっちゃったのね。
と、
「どうしたじゃないだろう!」
「お前たち、国際NGO団体と協力して国際的なプロジェクトを手がけるそうじゃないか!」
「ああ、そのことか。耳が早いな」
――うちのことは見下していたし、興味ないと思ってたんだけどな。
それが、
事実、
「おいおい、水臭いじゃねえかよ。おれたちの仲だろう。そんなデカいヤマを手がけるんなら一声かけろよ。おれたちも協力するぜ」
要するに『お前だけそんな儲け話に乗るなんてズルい! おれにも分け前よこせ』というわけなのだった。
その
「断る」
「なんでだよ⁉」
「おれたちは仲間だったろう! 大学時代から皆で協力してやってきたんじゃないか。仕事がないときには仕事もまわしてやった。それなのに、裏切るのか⁉」
――裏切ったのは、あたしたちでしょう。
「たしかに、君たちは仲間だった。仕事がないときには助けてもらった。そのことには感謝している。ありがとう。もし、今後、君たちが苦しい目にあったならできるだけの力になるつもりだ。でも、それとこれとは別だ。今回の件に君たちを関わらせるわけにはいかない」
「だから、なんでだよ⁉」
「
「うっ……」
「今回の話を持ち込んできた国際NGOの瀬戸口まどかさんも、
「け、けど、金は大切だろう。金がなくっちゃなんにもできないのが現実なんだ。その金にこだわる人間だって必要だろう。おれたちは仲間だったんだし……」
「そうだ。
「うっ……」
まっすぐな瞳で淡々と事実を指摘され、さすがに
――だから、言ったのよ。
「そう言うわけだ。
「……チッ。わかったよ」
「せいぜい、理念でも、理想でも振りまわして良い子ぶっているがいいさ。いずれ、現実を思い知って、痛い目を見るだけなんだからな!」
「……もう、あたしたちの知っている
「ああ。そのとおりだ」
「たしかに、あたしたちはあなたのことを、あなたの語る思いを信じることができなかった。『もう遅い』と言われても仕方ないわね」
「
「えっ?」
「君たちが信じなかったのは私じゃない。自分自身の思いだ。思いだしてみるといい。大学時代、私が誘ったときには君も、
「……そうね。その通りよね。たしかに、あたしは自分自身の抱いた思いを信じられなかった。いつの間にか、忘れ去っていた」
ほう、と、
「……帰るわ。あたしはあたしで、仲間たちと一緒にいまのチームをもり立てていかないといけないから」
「ああ。でも、なにか困ったことがあったら言ってくれ。そのときは本当に、できるだけの力になるから」
「ありがとう。あなたたちもね。もし、なにかあって、あたしたちの力が必要になったらなんでも言って」
「ありがとう。頼りにさせてもらうよ」
「ええ」
そうして、
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