一九章 乳闘民族ウフト人
妙に気分が高ぶって眠れない。体もなにか火照っているようだ。落ち着かない気分で布団のなかで何度もなんどもモゾモゾと寝返りを打った。どうしても眠れない。眠れないなかで時間だけが過ぎていく。
「駄目だ! 眠れる気がしない」
結局、
――
邪魔をしないようそっと様子をうかがう。すると、目に入ったのは工場の床でなにやら熱心に体操している
あぐらをかいて座った姿勢で胸の前で両手を合わせて合掌していたかと思えば、今度は手を頭の後ろで組んで顔の前で肘をつける。それから、腕立て伏せとつづく。すぐそばの台には豆乳の一リットルパック。
「……空手の練習か? こんな時間にも稽古なんて、全国大会常連と言うだけあってさすがに熱心だな」
「み~た~な~」
「わあっ!」
思わず飛びあがった
「こ、
叫ぶ
「……静かに。あなたは見てはいけないものを見てしまった。
「け、消されるって……」
「あれこそ、
「バ、バストアップ……?」
「そう。
「豆腐? 豆乳?」
「豆腐は乳に効く。芸能界やAV業界では定説」
「そ、そうなのか?」
そう言えば、かつての仲間だった
――
「あああっ⁉ それじゃ、
「嫌味か⁉」と。
豆腐料理にそう言う意味があったならそうとられても仕方がない。とんでもないことをしてしまった、と、頭を抱える
「
「そ、そうなんだ……。大変だね」
「そう。それこそが日々、己の貧乳と戦う乳闘民族ウフト人の姿。下級乳士であっても、必死の努力を重ねれば天才乳士を凌ぐこともある。いつか、超ウフト人に覚醒し、世のエリート乳士たちを打ち倒す」
「で、でも、ふたりともすごい美人じゃないか。
「……男にはわからない。妹に胸囲で負ける屈辱は。揺れないバストと、できない谷間に、どれほど悩むかは。ブラと胸の隙間にパッドを詰め込むその悲しみは」
――そう言えば、おれが女装するために、よく都合よくパッドなんてあったと思ったけど……
妙に納得してしまう
「だ、だけど、君はまだ中一だろう? まだまだこれからなんだから、そんなに気にしなくても……」
「デカくなる女は思春期前からデカい。事実、
「あ、ああ、そう……」
「見ているがいい。不本意ないまをかえるのは戦う覚悟。研ぎ澄まされたわたしの殺意が、いつかこの胸を巨乳にかえる」
――殺意……。誰に対する殺意なんだ?
そう思い――。
背筋の凍える思いのする
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