一二章 四女と勉強
――た、助かった……。
暴発寸前で天使の声に救われて、
自分を信用し、受け入れてくれた
さしもの
「はああ~」
と、大きく安堵の息をついた。
「ごめんなさい。
「えっ?」
「男の人の生理に関しては学校の性教育で知ってるから。大変だったでしょ? 女の人三人と同じ部屋なんて」
――いまどきの小学校は、女子にそこまで教えるのか。
しかし、考えてみれば女子にこそ男の生理は知らせておかなければならないこと。将来、まちがいを犯させないためにも教えておくのは確かに必要なことだろう。
そして、
――わざわざ来てくれたんだ。
そう思い、思わず
「じゃあ、あたしの部屋に来て」
「君の部屋⁉」
――いいのか、女子小学生の部屋になんて入って⁉
常識的、良識的に考えてさすがにそれはまずいだろう。
「でないと、まずいでしょ。『宿題見て』って、連れ出したんだから。実際に宿題、見てもらわないと嘘ついたことになっちゃう」
そう言って、
さすが、姉妹。
そう思わせる態度だった。
しかし、自分の手をつかむ
いるわけがない!
そして、招き入れられた
さすがに、末っ子だからか、
しかし、そうではないからこそ『女子小学生の部屋に入る』ということに背徳感を感じてしまい『イケナイ感』倍増。罪の意識が興奮へとかわり、無性にドキドキしてしまう。
――おちつけ、おちつけ。私は女、私は女。頼まれて宿題を見てあげるだけ。変なことはなにもない。
必死に、自分にそう言い聞かせる。
「この算数なんだけど……」
「……あ、ああ、どれどれ」
「あれだけ、教科によって成績に差があるやつもめずらしい」
と、教師から言われてきたのだ。
しかし、算数ならばまさに専門分野。それなら、自信をもって教えることができる。そしてなにより――。
――変な気分にならないためには、勉強に没頭するのが一番だからな。
そう思い、
そこで感じるものは立ちのぼる暖かい体温とミルクのような甘い香り。そして、真っ白な太股。なにしろ、
――目に毒ってレベルじゃないだろ!
思わずそう心に叫ぶ
しかも、この
ロリコンでも、ペドファイルでもないからこその罪悪感と背徳感。
「どうかした?」
「い、いや、なんでもない……」
「そう? じゃあ、早く」
「あ、ああ……」
――なんで、男の生理について教えられているはずなのに、こう言うところは鈍いんだ
「怪しい人についていっちゃいけません!」
ぐらいのものだろう。
実際には、怪しい人に怪しい行為ができるわけがないのだが。
――絶対、ヤバいやつほど表面は普通にふるまうよな。でないと、目立ちすぎてなにもできるわけがない。
そう思ったが、いまのこの状況、自分がその『普通の振りをしているヤバいやつ』にならないためには、それこそ勉強に集中するしかない。
そうすると、さすがに技術畑の人間。得意分野の授業とあってすぐに没頭し、煩悩からも解きはなたれた。
何事もなく一時間ばかりの臨時家庭教師の役割を全うし、安堵の息をつく
「そう言えば……」
「
「知ってるのか?」
意外な気がして
「うん。ふたりのどっちかと結婚するの?」
「それは……」
と、
「
「ふうん。まじめなんだ」
「最低限の礼儀だ」
「
とにかく、授業が終わったので、
「
その一言を残し――。
ドアは静かに閉められた。
「これは……一番の強敵かも知れない」
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