七章 夫婦か⁉
結局、昼食後もふたりで技術関係の話で盛りあがり、夕食をとったのはすでに一〇時をまわったときだった。ほとんど夜食兼用の夕食だったが、
「嫌味か、これは⁉」
「なんで⁉」
あまりと言えばあまりな
「なんで、豆腐料理が嫌味になるんだ⁉ 前のチームの同僚が豆腐料理が得意だったんだ。『豆腐は安くて栄養があるから貧乏所帯にピッタリ』って、よく出していたんだよ。それを教わっていたからやってみたんだけど……豆腐、きらいなのか?」
「いや……」
ジロリ、と、
「その同僚って……女か?」
「あ、ああ、そうだけど……」
それがなにか? と、表情で尋ねる
「……いや、なんでもない。早く食おう。すっかり遅くなったからな」
「あ、ああ……。そうだな」
なんでもないことはないだろう。
そう思いつつ、そう答えるしかない
ふたりは差し向かいに座って、夕食を食べはじめた。
「これ、うまいな。ルゥを使ったカレーとはなにかちがうようだけど……」
「だろう? 前のチームの同僚、『
「へえ。自分でスパイスを配合して作れるなんてすごいな。オレなんて小学校の調理実習のときからカレー作りに成功した試しがないのに」
「小学校の調理実習で、スパイスから作らされたのか?」
「……いや。普通にルゥを使ったカレー」
「……どうやったら、ルゥを使ったカレー作りに失敗できるんだよ」
「う、うるさいな!
「いや、それ、褒めてないから」
ひとしきり言いあったあと、やはり、技術関係の話で大いに盛りあがった。
ふたり差し向かいに座っての会話の尽きない賑やかな夕食。
「あー、うまかった! ありがとうな」
「どういたしまして」
笑顔でそう答えて、後片付けをはじめようとする
「あ、後片付けはオレがやるからいい。お前はもう風呂に入ってこいよ」
「えっ? でも……」
「いいって。作ってもらったんだから後片付けぐらいはオレがするよ」
「だけど……女性の前に風呂に入るのは、悪い気がするんだけど」
「いいから、いいから。風呂はお前の怪我のための薬湯だろ。お前が一番に入らなきゃ意味ないだろ」
「そうか? そう言ってくれるなら、お言葉に甘えさせてもらうかな」
「ああ、そうしろ。そんで、ゆっくり寝て、怪我を治せ。いつまでも包帯巻かれてちゃやっぱり、気になるからな」
「ああ、そうだな」
その怪我をさせた張本人――悪化させたのは姉の
改めて礼を言って風呂場に向かった。
「いやあ、親父が死んでから技術屋同士の話ができる相手なんていなかったからなあ。久しぶりに技術畑の話が思いきり出来てスッキリしたあ」
と、上機嫌。鼻歌交じりに洗い物をする。
そこで『ハタッ!』と、気付いた。
「……いや、ちがうだろ! なにやってんだ、オレ!」
水道の蛇口を全開にしたまま――いつも『水道の水を出しすぎる!』と、
「あいつをテストするために、ふたりきりになったんだろ! それなのに、なに普通に話してんだ! これじゃまるで、ふ、夫婦みたいじゃないか!」
自分で言って、真っ赤になる。
「……でも、考えてみれば、オレは色気もなければ胸もないからなあ。男連中からはずっと男友達扱いだったし。オレとふたりっきりになったって、下心なんて湧かないか」
そう言って、溜め息をつく。
「……姉ちゃんは、オレとちがって美人だし、色気あるし、胸デカいし、
で、どうするか。
「……よし。やつの本心を確かめるにはこれしかない」
そして、
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