五章 去勢してもらう!
それからは、まさにもうてんやわんやの大騒動だった。
事態に気付いた
しかし、そこには
「治療したその日のうちに、よけいひどくなってやってくるというのもめずらしい」
と、妙に呑気な感想をもらす医者の治療を受けて――呑気でもなんでも、腕は確かだった――病院をあとにした。
「入院費はうちでもちますから、入院してください!」
「
と、
それになにより、
災害はいつ起きるかわからないのだ。入院していたせいでその日数分、災害の発生に間に合わなかった……などということになれば一生、悔やむ羽目になる。
と言うわけで、
例によって布団の上に――
「今回は、まことにもって申し訳なく……」
と、怪我を悪化させた張本人である
「かくなる上は不肖、このわたし、
「い、いや、そういうのはいいですから……」
もちろん、
――正直、この人に看病されたら怪我が悪化する予感しかしない。
さしもの男の欲望も、生存本能には勝てないのだった。
そんな
「そ、それより……」
「住み込みの従業員として雇ってもらえるのは、住む家もなくした身としてはありがたいんですけど、妹さんたちはおれが一緒に住むことに賛成してくれるんですか? やっぱり、身内でもない男が一緒に住むのはいろいろ抵抗があると思うけど……」
「わたしは、かまわない」
かわることのないクールな口調でそう言ったのは、
「うちにはゴリラの遺伝子をもつ長女と、戦闘民族の次女がいる。ひ弱な男性のひとりぐらいいたところで危険はない」
「誰がゴリラよ!」
「戦闘民族って言うな!」
「おれがひ弱なわけじゃない! ……と、思う。多分」
すると、末っ子の
「あたしもいいよ。
その完全無欠ないい子ぶりに、思わず涙腺が崩壊しそうになる
――神さま。おれ、絶対、この子だけは裏切りません!
日頃、神さまなど相手にしたこともないくせに、そんな誓いをたててしまう
ともかく、これであとは次女の
姉妹に見つめられて、さすがに
「やっぱり、ダメだ!」
「オレには姉ちゃんと妹たちを守る責任がある! どこの馬の骨ともわからない男を住まわせるわけにはいかない!」
「
「そうは言わない。オレだって工場を守っていきたいのは同じだし、姉ちゃんの気持ちはわかる。だから……」
「だから?」
「テストする!」
「テスト?」
一斉に首をひねる他の四人の前で、
「明日一日、オレとふたりっきりでこの家で過ごす! それで、下心を見せなければ良し。もし、男としてなにかしたら……」
「なにかしたら?」
姉の問いに対し、
「去勢してもらう!」
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