エピローグ
——二年後。使節団は帰国し、少しずつ島国の帝国は動き出しました。今夜は鹿鳴館で華族階級の社交が行われていました。鹿鳴館での華族階級の社交は、華族階級の閉鎖的を無くすために使節団が提案したものの一つでありました。
「不破君……あ、不破子爵。ご無沙汰しております。また無事帰国なさって安心しております」
「あぁ!片桐!……じゃなくて、伯爵。お会い出来て嬉しいです。そして、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
晶彦は会釈し応える。が、その反面、尚はニシシという笑みを浮かべて、
「恋心に熱を上げてた時が懐かしいよね。私が先になっちゃったけど」
「ふっ……お前ら、元気になったな」
不破は呆れと嬉しさを交えた笑みを返す。
「妻の、尚のおかげですよ」
「晶さんのおかげ。そういえば、勘解は?」
「勘解は自分の理想を叶える新しき村を作るために府を出たよ。ま、金をせがまれるがな」
不破は表情を転がして苦笑いをした。
「面白いことをするね、勘解。私も自由に生きたいって思っちゃう。けど、晶さんの隣が居場所だからね。勘解が生きてるならいっか」
「はいはい、この新婚」
「酷っ……」
「ははっ、妬むなよ、不破君」
——留学の経験を通して、不破は世界の広さを知った。そして使節の地で頓死した姉に代わり家を継いだ。そして外交省へ入省し外交官になった。また、父と志環党に所属。政界で論争を続ける。あれだけ仲の悪かった父親とは、片桐伯爵夫妻に「それで良いのか」と言われるほどの呆気ない仲直りをしたそう。片桐家は、衰退した速水家を吸収し統合し家を強化。片桐晶彦は爵位を継ぎ文部省へ入省、国の教育に尽力。また、政界で論争する不破子爵の援護をした。そして速水尚は片桐尚に、政略結婚をした。元々所属していた玉響部隊参謀長は教育した心強い後継に託し去る。その後は、夫の補佐を買い、国の教育に尽力した。
——東京帝国の日向(ひなた)県。この地で、ひとりの身分制度に疑問を抱いた人道主義者が唱えた、誰もが平等に一緒に労働するという理想。それに協調する人たちで「新しき村」を創る活動を行っていた。
日が真上から照らすこの地で、桑を片手に立つ一人の女性。その人は人道を謳う詩歌などを創り、村を創る……元華族である勘解由小路綾夏。眩し過ぎる日を向いて、
「今日も元気いっぱい!」
帝国物語 志水命言 @Micoto_Shisui_
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