第44話 下見
「いらっしゃい!って、この前大量に武器を売りに来た坊主じゃねぇか」
「こんにちは」
「…特に装備が損傷している様子もねぇから、補修でも購入でもなさそうだな。今回も武器を売りに来たのか?」
「そうです」
「用件は分かった。どれ、出してみろ」
そう言われて、収納空間から次々と武器を出していく。
「おいおい、前回よりも多いじゃねぇか!凄い規模の盗賊がいたもんだ」
「厳密に言うと盗賊ではないんですけどね」
「ん?それなら、何処からこれらの武器を入手しているんだ?」
「それは…秘密です」
「おい、まさか…違法に手に入れたんじゃねぇだろうな?犯罪の片棒を担ぐようなら、買い取りはできないぞ」
「犯罪に手を染めるほど、生活が苦しいわけではないですし、違法に入手したものでもありません」
「そうか。なら、いいんだ。長剣40本、短剣52本、槍5本、斧11個、弓5張。大抵は一般的な武器だが、この2本の短剣と斧は上等なものだぞ」
「そうですね。2本の短剣も戦斧もアダマンタイトで作られた武器のようです」
「ああ、アダマンタイトとなるとAランク魔物の素材で作った武具と同等。坊主が自分で使ったほうが良くねぇか?」
確かに。短剣は被るから不要だけど、戦斧はどうするかな…。
予備武器として所持しておこう。それに、戦闘中にいきなり収納空間から戦斧を出して、相手の意表を突くことだってできるかもしれない。
「短剣のほうは売り、戦斧は予備武器として所持しておきます」
「普通は逆じゃねぇか?坊主は短剣を扱うんだから、短剣のほうを予備として所持しておくべきだ」
「僕の短剣はAランク上位のワイバーンの牙製なので、同等の武器以下では損傷しないと思います。それに、戦闘の幅を広げるという意味でも戦斧を所持していたほうが得です」
「確かに、ワイバーンの牙で作られた短剣ならアダマンタイトでも傷をつけられないと思うぜ。それと、戦闘の幅を広げるという意味は納得するが、斧は扱えるのか?」
「はい、扱えますよ」
店主の前で実際に戦斧を軽く振ってみる。【斧術】も所持しているから問題ない。
「凄いな!熟練の斧使いみたいだぞ!その大きさの戦斧を軽々と振れるなんて大したもんだ!」
「ありがとうございます」
「それで、戦斧を除いた武器の買い取りは1,500,000エルケーだ」
「それで、お願いします」
「毎度あり!」
特に武器の補修や整備は必要なかったので、金を受け取り、武具屋を後にした。良いものは長持ちするということだ。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
武具屋を後にした俺は貴族や豪商が住む上街に向かった。
そこは上街と下街を石壁で隔てられており、入口の門の左右には鎧を装備した騎士が立っていた。ステータスを確認すると、レベルは34と36。Dランク冒険者相当。
なるべく早く目的の商人と貴族を暗殺したい。なので、その住居を確認したいのだが、簡単に入れてはもらえないだろう。
「すいません」
「ん?なんだ君は?冒険者か?」
「はい、冒険者です。向こうの上街に行きたいのですが」
「ランクは?」
「Bランクです」
「では、無理だ。Aランク以上の冒険者でないと入れない」
Aランクなら入れるのか。昇格試験があるからそれを終えてからというのもありだが、こういうのは早めに動いたほうがいいからな。
「騎士さん、これでどうにかなりませんか?」
渡したのは200,000エルケー。
「…何をしに上街に行くのだ?」
「貴族様がどんな屋敷に住んでいるのか?上街で売られている商品などを確認するためです。何か問題を起こすような真似はしません」
「分かった」
そう言うと、目の前の騎士は反対側の騎士に内容を伝えに行き、門が開かれる。
「ありがとうございます」
初めて来た上街。綺麗に舗装された道を歩き、行き交う人達を流し見る。男性はアビ・ア・ラ・フランセーズを着用し、女性はローブ・ア・ラ・フランセーズを着用していた。
一目で貴族だと分かる装いに動きにくそうだなとか女性であれば谷間が見える胸元に視線が引き寄せられる。
おっと!目的を忘れてはいけない。まずはルアン・バーン商会とアイザック・ビスマルク商会を確認しに行く。
商会なので道沿いにあり、すぐに見つけることができた。建物の大きさがその財力を表すように大きく、入ることはしなかったが、店内にはアクセサリーやドレスが飾られていた。
ガラス越しに見える商品にこれも異世界人の知識が用いられているんだなと感心する。
2階建てだったので、住居兼商会ということだろう。
次はワルド・マーゴット子爵とハンニバル・バルク伯爵住居探しを行った。子爵と伯爵という身分の違いがあるので、奥に行けば行くほど身分が高い者が暮らしてそうだ。
「【捜索】ワルド・マーゴット子爵邸」
スキルを使い、あちらこちらに移動しながら探す。範囲が広いから探すのも一苦労だ。
「ここがワルド・マーゴット子爵の屋敷か」
大きさは一般的な木造家屋が3つはある屋敷。きっと、いくつもの部屋があり、高級な壺や絵画が飾られ、執事やメイド、料理人が世話をしてくれるのだろう。
貴族として優遇されるのは構わないが、しっかりと責務を全うしてほしい。犯罪組織と繋がりを持つのが貴族の責務なわけがない。
最後にハンニバル・伯爵の屋敷を確認した。大きさは変わらないが、中身が違うのだろう。飾られている物などで権威を示すみたいな。
「よし、確認はできた。夜に備えて仮眠をとることにしよう」
俺は上街を後にし、昼食と風呂を済ませ、ベッドに入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます