第31話 異世界人(改稿)
「いらっしゃいませ」
妙齢のとても綺麗な女性が出迎えてくれる。
「宿泊をしたいのですが、部屋は空いていますか?」
「ええ、空いていますよ。1泊3,000エルケーで3食付きです」
「では、3日分お支払いします。延長する場合は、その都度払います」
「分かりました。お部屋にご案内いたします」
時間帯は既に夕刻。食堂では長剣や槍などの武器を所持し、革鎧や軽鎧を装備した冒険者や身なりのいい商人が食事をしながら、談笑していた。
ここの宿屋は財力にある程度余裕のある者が宿泊できる場所だ。談笑している冒険者は【鑑定】や【心眼】が通じず、ステータスを視ることができない。
【隠蔽】がレベル4以上であることが分かり、相応の実力者であると予想する。
宿泊部屋がある2階に案内される。廊下を挟んだ両側に扉が複数ある。
「この部屋をお使いください」
「分かりました」
部屋に入り、浴室とトイレを確認する。浴室は鏡とシャワーヘッド、浴槽があった。鏡の上部の壁にシャワーヘッドあり、手で触れると魔力を消費し、温水が出る。
浴槽の幅は1mくらいで鉄製だ。表面部分は特殊なコーティングがされてあり、肌触りはとても良い。
浴槽の上部の壁には、前世の蛇口より一回り大きい蛇口があり、シャワーヘッドと同じで触れると魔力を消費し、捻ると温水が出る。
ただ、お湯を溜めるとなると、魔力を消費し続けるので、ある程度魔力量がないと、風呂には入れないだろう。
トイレは和式だが、ボットンではなく、水洗だった。
部屋にはダブルサイズのベッドが1つ、北欧風の作業机1つと丸椅子が一脚。作業机の上には光源用魔道具のランプが置いてある。
部屋の窓も大きく、街並みを一望できる。値段相応であることに安堵し、夕食を食べに1階に戻った。
夕食はホーン・ラビットの丸焼きとシャキシャキのサラダ、茶色の米だった。米とは言ったが、形と感触が米そのものだった。
「あの?この茶色いものは何ですか?」
「これはライスよ。異世界人が元いた世界の米というものに形や食感が似ていたから、そう呼ばれるようになったの」
なるほど…。ゼリス婆さんも会ったことがあると言っていた。その人が今も生きているか分からないが、生きているのなら会ってみたい。
念の為、詳しく聞いておこう。俺の認識と合っているかどうか。
「異世界人というのは?」
「この世界とは別の世界から来た人達のことをそう呼んでいるわ」
「人達ということは、異世界人はたくさんいるんですか?」
「それは…どうかしら。私が知っているのは4人よ」
「その人達が何故、異世界人だと分かるのですか?」
「本人達が「転生者です」って公言しているからよ」
「でも、それだと本当に異世界人なのか分からないですよね?」
「異世界人が所属している国も認めてるから、本当なんじゃないかしら」
どうやって確認しているのか気になるな。
「所属国と名前、どんな人物なのか分かりますか?知っている範囲で構いません」
「一人目は北の帝国[オスマン帝国]のアルベルト王子。容姿端麗で武勇にも優れ、民からの信頼も厚いわ。二人目は南の帝国[アトラス帝国]のガリアス。とても野心家で近隣の諸国に戦争を仕掛けて、領土を拡大しているらしいわ。三人目は東の王国[リヴォニア王国]のユリウス。この人もガリアスと同じで野心家でつい最近、[オスマン帝国]の[セルジューク]に兵を向かわせたみたいよ。四人目はーーー」
「待ってください」
[セルジューク]を襲ったのは[リヴォニア王国]だったのか!しかも、ユリウスが領土拡大を狙って襲撃を企てたのかもしれない。
俺の両親を殺し、犯した奴らの情報が分かった。そいつらを殲滅するだけの力をつける必要がある。
「途中で遮ってしまって、すいません。続きをお願いします」
「え、ええ。四人目は西の王国[エルサレム王国]のテレシア公爵令嬢。容姿端麗で慈愛に満ちていると言われているけど、後ろ暗い噂もあるわ。私が知っている…というより、皆も知っていることは以上よ。他にも表に出ていない異世界人もいるかもしれないわね」
「お忙しい中、貴重な情報ありがとうございます」
「気にしないで」
女性は仕事に戻り、俺もすっかり冷めてしまった食事に手をつける。正直な感想を言えば、好き放題やってるなという印象だ。まともそうなのはアルベルト王子くらいか。
ガリアスとユリウスは戦争で領土拡大を狙っているくらいだから、相当強いのかもしれない。いや、他の転生者も俺と同じように女神様から
(一体、どんな
ユリウスのスキルは俺が奪うのは、もう決めた。他の奴らは今のところは考えていないが、ガリアスやテレシアには注意しよう。
明確な目標もできたことだし、明日に備えて早めに寝るとしよう。
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