第25話 報告
冒険者ギルドに戻ると、冒険者受付に並ぶ冒険者が疎にいた。あと、1〜2時間経てば、依頼を受けている冒険者達も戻ってくるだろう。
「あ!アレス!」
声が聞こえた方を見ると、オークに襲われていたところを助けた、アイク達がいた。
「アイク達はもう戻っていたんだな」
「ああ。あの後、森の入り口付近で薬草採取やホーン・ラビットを狩ったりして、早めに切り上げたんだ」
「また、オークに襲われるかもしれないしね」
「そうだったんだね。今日はあまり稼げなかった感じかな?」
「そうだな。いつもよりは少ないな。明日以降もオークの緊急依頼があるようなら、狩猟採集の範囲が狭まって、生活が厳しくなるかもな」
「そういえば、アレスさんは緊急依頼を受けて、オークの集落の調査をしていましたよね。どうでしたか?」
「オークの集落を発見、殲滅はしました」
「「「「おお!」」」」
「しかし、集落から出払っていたオークがいるかもしれませんし、暫くは様子を見たほうがいいと思います」
「その可能性もあるわけか。分かった。森に潜る時は十分注意するぜ」
「それで、集落の規模はどんな感じだったの?」
「上位種や王種を含めて約80体ってところでしょうか」
「そ、それをお一人で殲滅したのですか?」
「大変でしたけどね」
「確か…オークはEランク、ハイオークはDランク、オーク・アクサーはCランク、オーク・ジェネラルはBランク、オーク・キングはAランクだったよな。それを一人でって可能なのか?」
「うーん…どうでしょうか?Aランクパーティーなら安全に討伐できると思いますけど、単独となるとAランク上位、又はSランク相当でないと厳しいかもしれないです」
「てことは、アレスはSランク冒険者に匹敵するというわけか?」
「ははは!運が良かっただけですよ。まだ、Sランクには程遠いと思います」
「アレスって話し方や物腰が凄く大人って感じるわね。凄い実力があるのに調子に乗っていないというか」
「確かにな!俺だったら、俺、凄いだろ!ってアピールしたくなるしな」
「アイクはすぐ調子に乗るからね」
「レイカだって、人のこと言えないだろう!」
「はぁあ!そんなわけないじゃない!」
「二人とも落ち着いてください」
「「ごめんなさい…」」
「僕はこれから解体場に行きますので、失礼しますね」
「あのさ!俺達もついて行っていいか?」
「別に良いですよ」
「やったぜ!オークの上位種や王種がどんなものか見てみたかったんだよ!」
俺はアイク達のパーティーと一緒に解体場に向かう。
「おう!坊主!なんだパーティーでも組んだのか?」
「いえ、アイク達はオークに襲われているところを助けたのを機に、知り合いになりました。僕の今日の成果を知りたいと、ついてきたのですが、大丈夫ですか?」
「別に構わねぇよ。それより、オークの被害が増えてるって話だからな、坊主も気をつけるんだぞ」
「緊急依頼のオークの集落は既に殲滅しました。これが証拠です」
収納空間からオーク達の死体を取り出していく。その光景を見て、アイク達とおじさんは開いた口が塞がらず、固まってしまった。
「これで全部ですね。確認お願いします」
そう声をかけるも、おじさんが全く反応を示さない。
「あの、早く確認をお願いします」
おじさんの肩を揺さぶりながら、検分を促す。
「…あ、ああ…すまねぇ。こいつは凄いな。お前が一人でやったのか?」
「そうですね。オーク・キングはとても強かったです」
「ははは!本当に凄いな、坊主は!オーク・キングだけでも格上の相手なのに、他にも上位種を相手に勝ったんだから、坊主は既にAランク冒険者以上の実力はあるってことだな!」
「そうですね…。実際にオーク・キングと戦って気づくことができましたが、僕の実力はAランク下位相当だと思います。オーク・キングのレベルも65でしたし」
「確かに、レベルだけで判断するならそうかもしれねぇが、集団を相手に勝ったんだから、技量も含めればAランク上位相当だと思うがな」
「お気遣いありがとうございます」
「世辞や励ましじゃねぇからな!立派な偉業なんだから、胸を張れ!」
「そうですね。ありがとうございます!」
「アレス!お前マジで凄いな!俺はこんなの見たら震えて、その場で小便漏らすかも」
「アイクは相変わらずビビりよね。でも、アレスは本当に凄いわ!」
「それじゃ、今日の成果を確認するぞ。[ヒール草]5束、[マナ草]5束、ゴブリン3匹、コボルト2匹、オーク40匹、ハイオーク20匹、オーク・アクサー10匹、オーク・ジェネラル1匹、オーク・キング1匹。素材は全て買い取りで良いのか?」
「はい、それでお願いします」
「分かった」
おじさんから羊皮紙を受け取ると、受付に向かう。
「アメリさん、確認お願いします」
「冒険者登録以来ですね。元気そうです何よりです。確認いたしますね。………少々、お待ちください」
アメリさんは持ち場を離れ、2階に向かう。
「どうしたんだろうな?」
「ギルドマスターに話をしに行ったのではないでしょうか?緊急依頼の件ですし」
アイク達と話していると、アメリさんが戻ってきた。
「アレスさん。ギルドマスターがお呼びです。この後、お時間はありますか?」
「大丈夫です」
「では、案内いたします。ついてきて下さい」
「アレス!また会ったら飯でも食おうぜ!」
「アレス、また会いましょう」
アイク達と別れ、ギルドマスターの部屋に向かう。
コンコン
「ギルドマスター、アレスさんをお連れしました」
「入ってくれ!」
「失礼します。アレスさんも中にどうぞ」
「失礼します」
ギルドマスターの執務室は本棚と執務机、応接用ソファがあるだけで、飾り気のない部屋だった。美術品が飾られていたり、価値の高そうな骨董品が置かれているのかなと思ったが、仕事をするための部屋という印象だった。
「座ってくれ。アメリはお茶を用意してくれるか?」
「分かりました」
アメリさんが退室すると、ギルドマスターも向かいのソファに座り、話を振ってくる。
「冒険者登録からあまり日数は経っていないが、随分と見違えたじゃないか?」
「…すいません。お金は払うので
「どれ見せてみろ」
俺は革鎧と服を脱ぎ、ギルドマスターに背中を見せる。すると、背中に液体をかけられる。ズキズキとした痛みが嘘のように無くなる。
「ありがとうございます」
「まぁ、傷はそんなに酷くなかったしな。
「今まで必要になる機会もなかったですし、装備も充実したので、油断してました。明日、狩りに行く前に買っておきます。いくらですか?」
「いや、金は良い。アレスは年齢不相応に実力はあるが、油断すると一瞬で命が奪われるのが冒険者だ。十分、気をつけろよ」
「はい、肝に命じます」
その後、アメリさんがお茶を持ってくる。アメリさんが退出した後、俺とギルドマスターはお茶で喉を潤してから話し始める。
「緊急依頼を受けてくれて助かった。やはり、オークの集落が出来ていたか」
「そうですね。まだ、集落から出払っていたオークもいるかもしれませんし、冒険者には注意をするように伝えた方が良いと思います」
「そうだな。中級冒険者であれば大丈夫だと思うが、下級冒険者では危ないな。しっかりと周知しておこう。内容はこの羊皮紙で把握したが、他に何か報告することはあるか?」
「集落に建てられていた納屋と一つに白骨化した死体と生身の死体がありました。白骨化した死体は分かりませんが、生身の死体が女性だったこと、オークの習性から同じく女性だと思われます」
「そうか。死体はどうした?」
「白骨化した死体は燃やして埋葬しました。生身の死体は収納してあります。近くに
「
収納空間から
「…確かにうちに所属する冒険者だな。生身の死体に関してはこちらで預かろうと思う」
「遺族の元に届けるのですね」
「ああ。死が隣り合わせな職業だから、遺体が家族の元に戻るなんてことは滅多にない。それでも、戻せるなら…戻してやりたいからな」
「分かりました」
「その他に変わったことはあったか?」
「いえ、特に何もありませんでした。納屋や柵も解体し、再利用もできないようにしましたので」
「上出来だ。…そのバングル、傭兵ギルドにも所属したのか?」
「はい」
「そうか。そういえば、街道上で盗賊に襲われた馬車を助けた冒険者がいたと聞いたが、アレスか?」
「そうですね。傭兵ギルドに依頼があったので」
「あっちのギルドは情報を得るのが早いからな。こちらではまだ、盗賊の件は把握してなかった」
「そうですか。なら、傭兵ギルドに登録したことは結果的に良かったですね」
「そうでもないぞ。冒険者としての実績には反映されないからな」
「それは仕方ありません。コツコツ頑張りますよ」
「アレスをできればAランクに昇格させたいところだが、この街に上級冒険者はいないからな。たまに、訪れることもあるんだが、今はいない」
「昇格には同ランクの冒険者と実技試験でもするんですか?」
「そうだ。俺が実技試験をしたような感じで試験を行い、適性があるか判断する。その結果で昇格が決まるんだ」
「うーん…ランクを上げるなら、Aランク冒険者がいる街に行かないといけないのか。そろそろ、違う街に行ってみるのもいいかもしれないですね」
「そうだな。上を目指すならそうした方がいいだろう。それじゃ、遺体を受け取るか。一度、解体場行くぞ」
「分かりました」
解体場でギルドマスターに遺体を引き渡し、受付に向かう。既に多くの冒険者が並んでおり、少し待つことになりそうだ。
「アメリさん。報酬を受け取りにきました」
「はい。こちらが報酬の1,000,000エルケーになります」
「ありがとうございます」
報酬を受け取り、冒険者ギルドを後にした。
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