第20話 街道上の襲撃

 「おはよう。リーナ」


 「おはよう!アレス!今日は早く起きれたんだね!」


 「うん。だらしない生活を送らないように気をつけるよ。朝食待ってるね」


 「うん!待ってて!すぐ持っていくから!」


 その後、肉と野菜を挟んだサンドイッチとかぼちゃスープを食べて、お腹を満たし、冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドは大変混雑していた。依頼書板の前で割りの良い依頼を受けるため、冒険者達が我先にと依頼書版に手を伸ばしている。


 (ははは…この中に混ざるのは勘弁だな)


 割りの依頼は諦めて、常設依頼と高ランクの魔物を見つけたら、その時狩ればいいだろう。今日は傭兵ギルドの依頼を確認してこよう。


 傭兵ギルドは冒険者ギルドとは違って、一人もいない。もう依頼を受けた後なのか、早朝から依頼を受ける人はいないのか。俺にとっては都合が良い。


 依頼書版を確認すると、昨日の盗賊討伐の依頼があるので、それを受けよう。


 「おはようございます。この依頼を受けます」


 「分かりました。十分に気をつけてください」


 受付嬢の注意をしっかりと受け止め、気を引き締めて、依頼書に記されていた被害が出ている場所に向かう。


 街道上をランニングしながら、周囲を見渡す。冒険者や行商人なども行き交っている。今のところ、盗賊による被害は出てない。


 (どうするかな…また、日程を改めるか)


 踵を返し、街道を戻ろうとすると…。


 「おい!止まれ!」


 「金目の物と女を置いていけ!」


 振り返ると、一台の馬車を10人近い男達が囲んでいる。御者の男性が周囲に助けを求めるように視線を送るが、他の冒険者達はその場を足早に去っていった。


 足早に去っていった冒険者はステータスも高くなく、人数的不利もあるので関わらないようにしたのだろう。


 (タイミングが良いし、【豪運】が働いたのかな)


 俺は馬車を囲んでいる盗賊達に近づきながら、【鑑定】や【心眼】でステータスを確認するが、レベルは15〜18程度。この人数差でも油断しなければ制圧は可能だろう。


 「お前達は盗賊か?」


 御者と盗賊達は振り向く。


 「なんだ、お前は?冒険者か?邪魔だからどっかいけ!」


 「盗賊は見過ごせないだろう」


 「ははは!この人数相手にやる気か?正義の味方気取りは早死にするぜ!」


 「「「ギャハハハ!」」」


 盗賊達が腹を抱えながら笑う。側から見れば、誰もが哀れみの目を向けるだろう。


 「実力差を分かっていないのはそっちだと思うが?」


 「…こいつ。おい!その正義の味方気取りを殺せ!」


 リーダーらしき男が指示を出すと、2〜3人が短剣を手で遊ばせながら、歩み寄ってくる。俺も短剣を構えて歩み出す。


 「ぎゃ!」


 「ぐっ!」


 「はが!」


 『スキル【釣術】Lv.2を獲得しました』


 『スキル【伐採】Lv.2を獲得しました』


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 襲ってきた男達を返り討ちにしてやる。すると、リーダーの男は驚いている。他の盗賊達も目を見開いている。先ほどの攻防で実力差を理解したのだろう。


 リーダーの男は慌てて、御者の男性を人質に取る。他の盗賊達も先ほどの油断は消え、武器を構える。


 「そこを動くな!こいつを殺ーーー」


 「一瞬で、背後を取れ、空間転移テレポート


 リーダーの男を背後から首を串刺しにする。


 「ぐ、ぐが!」


 首を貫かれ、手から武器を手放す。短剣を引き抜くと、血飛沫が舞い、倒れる。他の盗賊達が断末魔の声でこちらに視線が一気に向く。


 「大丈夫ですか?」


 「あ、ありがとうございます」


 御者の男性を救い出し、残りの盗賊達を見据える。守りながら戦うって面倒臭いな。


 「蹴散らせ、迅雷の大波、津波襲雷ライトニング・ウェイヴ

 「突き貫け、火炎の短槍、火槍ファイア・スピア


 津波襲雷ライトニング・ウェイヴ火槍ファイア・スピアで盗賊達を一蹴する。


 『スキル【逃走】Lv.2を獲得しました』


 『スキル【家事】Lv.1を獲得しました』


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 「あ…一人残しておけばよかったな」


 「だ、旦那様。外はもう安全です」


 俺が盗賊の死体を【空間魔法】で収納していると、御者の男性が馬車に声をかける。すると、馬車の扉が開き、恰幅が良い男性と美女が降りてきた。


 男性が心底安心したよう顔で男性と美女が挨拶してきた。


 「この度は私と妻の命を助けて頂き、ありがとうございます。私は行商人をしているボランと申します。こちらは私の妻のマリロナといいます。それと御者のジェフです」


 「「よろしくお願いいたします」」


 「ご丁寧にありがとうございます。私はアレスです。この容姿ですが、Bランク冒険者です」


 ミスリル製の冒険者証明書ライセンスを見せながら、自己紹介をする。案の定、三人とも目を見開いていた。


 「…失礼、正直驚いてしまいました。命を救って頂いたお礼をしたいのですが、この後ご都合は空いていますか?」


 「この後は盗賊のアジトに向かいますので。明日以降であればいつでも大丈夫です」


 「私達はこれから別の街に商いをしに行きます。一週間後にこの街に戻ってくるので、その際に冒険者ギルドに伝言をお願いします」


 「それで大丈夫です。ジェフさん、盗賊達はどちらから来ましたか?」


 「アレス様の後ろの森からです」


 「分かりました。では、これで失礼します」


 俺はボランさん達と別れ、盗賊のアジトに向かった。


 


 


 

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