第18話 初日

 「ぅーん………ふぁ………よく寝た」


 窓から差し込む陽の光で目を覚ます。柔らかいベッドのおかげで疲れが取れ、スッキリとした目覚めを迎えることができた。


 窓を開けて外の空気を身体に取り込む。大通りは人が行き交い、露店が賑わっている。


 太陽が天高く昇っているので、時刻は昼頃だろう。


 今日が冒険者活動の初日なのに随分とゆっくりとしたスタートだ。でも、朝食は食べ損ねてしまった。


 冒険者ギルドに寄るついでに、露店で肉串でも買っていこう。武器や防具を装備し、姿見で自分を見てみる。


 両親の容姿も整っていたため、俺も好少年?に見える。身長が140〜150cmくらいなので、まだまだ駆け出しの冒険者に見えるが、既に上級冒険者の仲間入りを果たしている。


 (よし!頑張るぞ!)


 部屋を出て、階段を降り、一階に向かう。


 「あ!アレス、今起きてきたの?」


 「うん。ちょっと、疲れが溜まっていてね」


 「無理はしちゃダメだよ!まだまだこれからなんだから!」


 「そうだね。気をつけるよ」


 「あ!ちょっと待ってて!今、ご飯持ってきてあげるから!」


 「え!いいよ!寝過ごしたのは僕だし。露店で適当に買って食べるから」


 「大丈夫!アレスはまだ子供なんだから、こういう時は素直に甘えた方が良いよ!」


 「うーん。じゃあ、お願いできるかな?明日からはちゃんと朝食の時間に起きるから」


 「うん!分かったよ!」


 店内に人が一人もいないため、適当な席に座る。少しして、運ばれてきた料理に舌鼓をうつ。料理は少し硬い黒パンとシチュー、野菜スープだった。


 「ご馳走様でした」


 「アレス、随分とかっこよくなったね!」


 「昨日の格好は酷かったからね。今日から冒険者活動を頑張るんだ」


 「アレスなら凄い冒険者になれるよ!頑張ってね!」


 「ありがとう」


 リーナの激励を胸に宿屋を後にする。露店の品に目が引かれながら、冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルド内は数人の冒険者が酒を飲んでいるくらいで閑散としている。酒を飲んでいる冒険者達が俺に気付き、顔を寄せ合い、声を潜めながら話している。


 初日に絡んできた冒険者を殺害したのを見ていたのだろう。俺は特に気にしないように努め、依頼書版に向かう。


 依頼書板に貼られている依頼書は少ない。既に他の冒険者に依頼を受けられてしまっている。


 寝坊したのは俺なので仕方ないとして、貼り出されている依頼書は[ヒール草]や[マナ草]などの採取依頼、ゴブリンやコボルトなどの繁殖力の強い魔物の討伐依頼、町民からの市中依頼の3種類があった。


 (この中だったら、採取依頼と討伐依頼かな)


 この3種類は常設依頼なので、特に受付で手続きをする必要もない。俺は冒険者ギルドを後にし、近くの森へ向かった。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「グギャ…」


 「本当にこいつらは…ゴキブリみたいなやつだな」


 既に数十体は倒したゴブリン。小さな農村ではゴブリンによる家畜や農作物の被害が絶えないそうだ。それに、この世界のゴブリンやオークは異種族の雌を母体に種を繁栄させる。家畜や農作物同様、女性の被害も多いそうだ。


 「プギィ!」


 「お!見たことない魔物だ」


 体長は3mで体高は1m。茶色毛皮に二対の鋭く発達した牙。前世のイノシシにそっくりな魔物だ。


【ステータス】

 ・名称 牙突の魔猪

 ・種族 魔猪族


 ・称号 


 ・Lv.18


 ・魔力 93


 ・筋力 46

 ・頑丈 46

 ・敏捷 46

 ・知力 42

 ・精神 46

 ・器用 42

 ・幸運 42


【戦闘・戦術系統スキル】

 ・【威嚇】Lv.1

 ・【堅守】Lv.1

 ・【突進】Lv.2


【補助系スキル】

 ・【跳躍】Lv.2

 ・【嗅覚感知】Lv.2


 魔猪がこちらに向かって突進してきたので、【剛拳】で頭部を殴打した。ボコっと音がして、魔猪が横に倒れたので頭蓋骨が粉砕したのだろう。


 『スキル【突進】Lv.2を獲得しました』


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 猪の死体を【空間魔法】で収納し、散策を再開する。ホーン・ラビットやカモフラ・スネークも狩っていると、白い蛇を見つけた。白い体皮以外はカモフラ・スネークと同じように見える。


【ステータス】

 ・名称 グラック・スネーク

 ・種族 魔蛇族


 ・称号 


 ・Lv.5


 ・魔力 30


 ・筋力 20

 ・頑丈 16

 ・敏捷 20

 ・知力 18

 ・精神 18

 ・器用 16

 ・幸運 20


【感覚・補助系統スキル】

 ・【熱源感知】Lv.2

 ・【豪運】Lv.2


 おお!めちゃくちゃ弱いけど、【豪運】という運気に関するスキルを持っている。これは、是非とも欲しい!


 グラック・スネークは【熱源感知】でこちらに気付き、身体を塒を巻き、全身の筋肉を使って飛んで、噛みつこうとしてきた。それを半身になって躱し、短剣でぶった斬って、頭部を串刺しにしてやった。


 『スキル【豪運】Lv.2を獲得しました』


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 「冒険者活動を始めた初日に出会うとはな。次も見かけたら、積極的狩らないと!」


 その後、陽が傾きかけてきた頃に狩猟採集を切り上げ、冒険者ギルドに戻った。




【あとがき】

 ステータスの表記を一部、変更しました。


 ・【武器・戦闘系スキル】

 →【武器・武術系統スキル】

  【戦闘・戦術系統スキル】


 ・【生産・製作系スキル】

 →【生産・製作系統スキル】


 ・【補助系スキル】

 →【感覚・補助系統スキル】





 


 


 





 


 

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