第13話 街を目指して

 ジルガ爺さんとゼリス婆さんの安否も確認したかったが、周囲で兵士が戦闘奴隷達を蹂躙しているため、諦めた。


 (ごめん!ジルガ爺さん、ゼリス婆さん。貴方達に報いるためにも、今は生き延びることを優先します)


 なんとか居住区を抜け、森に逃げ込む。流石に人も住んでいない、魔物が跋扈する森には来ないだろう。


 森を進みながら考える。ゴブリンの集落を1人で殲滅できるようになっただけだ。あまり奥深くまで行っても、強力な魔物に食い殺されるだけだ。


 ならば、どうする。ここは[オスマン帝国]の領土にある領都だ。近隣にある国といえば、[リヴォニア王国]だが…もしかして、領土拡大を狙ってこの街に攻めてきたのか?


 憶測の域をでないが、そう仮定するとして、東に向かうのは危険かもしれない。


 (向かうなら、西か。大陸中央には小国家群があると聞いた事があるし、近くの村や街に辿り着けるかもしれない)


 森に少し入ってから西に向かって歩き出す。薬草は採取せず、ホーン・ラビットを食用として狩る。


 他の魔物は出会したら倒すとして、今は森を抜けることだけを考える。


 「グァアアア!」


 身の丈が2mくらいある熊の魔物が現れた。その太く頑丈そうな身体を豊かな体毛が覆い、剛腕には鋭い鉤爪がある。


【ステータス】

 ・名称 剛腕の喰熊

 ・種族 魔熊族


 ・称号 


 ・Lv.33


 ・魔力 168


 ・筋力 76

 ・頑丈 76

 ・敏捷 72

 ・知力 72

 ・精神 74

 ・器用 74

 ・幸運 72


【武器・戦闘系スキル】

 ・【威嚇】Lv.2

 ・【剛拳】Lv.1

 ・【堅守】Lv.1


【生産・製作系スキル】

 ・【狩猟】Lv.2


【補助系スキル】

 ・【嗅覚感知】Lv.1


 兵士を倒したことによって【鑑定】と【心眼】のレベルが上がり、情報の開示が増えた。強さはゴブリン・ジェネラル相当。


 「グァ…ア…」


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 四足歩行で想像以上の速さで迫ってきて、その剛腕と鉤爪を振り下ろすように攻撃してきた。その攻撃を躱し、【抜き足】【差し足】【忍び足】【跳躍】で背後を取り、長剣で頸部を斬り落とす勢いで振るう。


 長剣が首の七割ぐらいで止まった。倒せたけど、首を斬り落とさなかったのは残念だ。まだまだ、強さが足りない。


 死体を【空間魔法】で収納し、歩き出す。少しずつ陽が傾いてきたので急足で移動していると、背後から攻撃が迫ってきていることに気付き、咄嗟にしゃがむ。


【ステータス】

 ・名称 鎌狩の蟷螂

 ・種族 魔蟷螂族


 ・称号 


 ・Lv.28


 ・魔力 145


 ・筋力 64

 ・頑丈 62

 ・敏捷 66

 ・知力 64

 ・精神 62

 ・器用 64

 ・幸運 64


【魔法】

 ・【風嵐魔法】Lv.1


【武器・戦闘系スキル】

 ・【奇襲】Lv1

 ・【抜き足】Lv.2

 ・【差し足】Lv.2

 ・【忍び足】Lv.2


【生産・製作系スキル】

 ・【狩猟】Lv.2


【補助系スキル】

 ・【気配感知】Lv.1


 体色が緑色で森に同化し、息を潜めていたためか気付くのが遅れた。この森の狩人のようだな。


 「キシャーーー!」


 蟷螂の魔物が攻撃を仕掛けようとしてたので、それを阻止するように【雷電魔法】を放つ。


 「貫け、雷霆の一撃、迅雷ライトニング


 迅雷ライトニングが蟷螂の魔物に直撃する。


 『レベルが46に上昇しました』


 『魔法マジックスキル【風嵐魔法】Lv.1を獲得しました』


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 「蟷螂はあまり防御に秀でてなかったから、一撃で倒せたな。今日はもうこの辺で野宿でもするか」


 適当な木の根元に座り、木の枝や枯葉などを集めて【火炎魔法】で火をつける。ホーン・ラビットを解体し、木の枝に肉を通し、焼く。


 「グギャ!」


 「はぁ…そりゃそうだよな。この暗がりの中で火なんて起こしたら、魔物が寄ってくるよな」


 ゴブリンがこちらに気付き、棍棒を振り上げながら走ってきたので、迅雷ライトニングで倒す。


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 「お!ちょうどいい感じに焼けてきたな。いただきます!」


 柔らかく脂の乗った肉に齧り付くと野生の味って感じがした。何も味付けをしていないから当然だ。


 しかし、俺はそんなことなどお構いなしに食べていく。腹が減っていたら、どんなものでも美味しい。


 「ホーン・ラビットだけじゃ足りないか…」


 できれば食べたくなかったが、ゴブリンやコボルト、熊の肉と蟷螂の身を食べる。成長期で食べ盛りというのもあって、味など関係なく食べていく。


 遂には味変とばかりに食べられそうな内臓も火を通して食べる。


 「好き嫌いなんて言ってられないよな。少しでも己の糧としなきゃ!」


 『スキル【悪食】Lv.1を習得しました』


 食べてるだけでスキルを獲得してしまった。どんなスキルなのか確認しておこう。


・【悪食】Lv.1

 人種や魔物を問わず、喰らうことができるスキル。血肉の質や量に応じて、筋骨や内臓の強靭性が増大する。


 狩猟を始めた6歳の時に欲しかったな。そうすれば、今よりも筋骨隆々で、先ほど出会した熊の魔物もワンパンで倒せたかもしれない。


 スキルの獲得条件が魔物を食べることだったとしたら、無理だったか。


 食事の合間に何度か魔物が襲ってきたが、既知の魔物で倒したことがあったので問題なかった。


 火を消して、木に背を預け、目を閉じる。瞼の裏に浮かぶのは父さんが殺され、母さんが犯されている光景。


 「父さん…母さん…俺…頑張って生きるよ」


 沸々と俺の幸せを壊した奴らへの憎しみが湧き上がるが、精神的、肉体的に疲労が溜まっていたからか、徐々に意識が遠くなっていった。


 


 


 



 


 

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