第10話 ゼリス婆の修行

 「あれはホブゴブリン…ではなさそうだな。ああ、切実に鑑定系スキルが欲しい…」


 木の陰から様子を伺う。身長はホブゴブリンより少し高く、身体は筋肉質で鍛えられている。もう1匹はボロボロのローブを纏っていた。


 うーん…ローブを装備している方の攻撃手段は魔法だろう。もう1匹の方が分からない…。ただ、武器は持っていないので格闘戦になるだろう。


 魔法攻撃が厄介なのでローブのゴブリン?を先に倒そう。


 「穿て、火の弾丸よ、火弾ファイア・バレット


 「グギャ…」


 魔法を放つと同時に走り出し、直撃して怯んでいるところにナイフで頸部を突き刺し、とどめをさす。


 筋肉質のゴブリンが奇襲に気付き、こちらを睨んでくる。


 「グギャーーー!」


 こちらを圧するように吠えるとこちらに向かってくる。負けじと【殺気】を放ち、駆け出す。


 筋肉質のゴブリンは殺気に怯み、足を止めてしまう。俺はナイフを右から首目掛けて刺しこむように振るう。


 筋肉質のゴブリンは咄嗟に両腕で防御し、ナイフが腕を貫通する。ナイフが使えなくなったので、左拳をフックで【剛拳】を顔面打ち込む。


 「グギャ…」


 たたらを踏む筋肉質のゴブリンに右足で【剛蹴】を胴体に打ち込み、刺さっていたナイフを引き抜き、倒れ込んでいる筋肉質のゴブリンにとどめをさす。


 『レベルが13に上昇しました』


 『レベルが14に上昇しました』


 『レベルが15に上昇しました』


 『既得のスキルは熟練度に加算されました』


 その後、狩猟を集中的に行い、ホーン・ラビットやカモフラ・スネーク、ホブゴブリンなどを狩った。


 『レベルが16に上昇しました』


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「こんにちは。ジルガ爺さん、ゼリス婆さん。今日もよろしくお願いします」


 「昨日の修行でもう来ないかと思ったが、根性はあるようだな」


 「こんにちは、アレス坊。今日は私が修行をつけるよ」


 「はい!」


 ジルガ爺さんと修行した場所に移動する。他の戦闘奴隷の人達も遠目にこちらの様子を伺う。


 「アレス坊は【火炎魔法】は習得しているようだから、私が教えられるのは【雷電魔法】だね。それと【魔纏闘鎧】を教えるよ」


 おお!雷を扱えるようになるのはとても浪漫があるな!それはいいんだが…【魔纏闘鎧】とは?


 「【魔纏闘鎧】とは何ですか?」


 「簡単に言えば魔力の鎧を纏う感じだね。物理攻撃も魔法攻撃も防げる。大袈裟に言ってしまえば鎧を装備しなくても問題ない」


 「それは…凄いですね!」


 「本来は習得するのにとても苦労するんだけど、アレス坊は【魔力感知】と【魔力操作】を既に所持しているからね。習得までそんなに時間はかからないかもね」


 「頑張ります!」


 「早速、始まるかね。まず【雷電魔法】を見せるよ。「貫け、雷霆の一撃、迅雷ライトニング」」


 ゼリス婆さんは人差し指の指先から稲光が走り、直後にバリバリと音が鳴った。まさに雷が走ったような感じだった。


 「アレス坊に【雷電魔法】の適性があればすぐに習得できるだろうね」


 「やってみます!「貫け、雷霆の一撃、迅雷ライトニング」」


 俺の指先からゼリス婆さんよりは威力が弱い雷が走った。


 『魔法マジックスキル【雷電魔法】Lv.1を習得しました』


 「よし!」


 「どうやら無事に習得できたみたいだね。適性があって良かったね」


 「あとは自分でレベルを上がれるよう頑張ります」


 「そうだね。次は【魔纏闘鎧】の練習に移ろうかね。魔力をただ放出するだけじゃなく、身体全体に這わせるようにして魔力密度を高める。言葉で言えば簡単そうに見えるけど、とても精密操作が必要だよ」


 「やってみます!」


 うーん…魔力を循環し、放出することはできるけど、身体を覆う感じは無理だな。鎧を想像イメージして魔力を操作してるけど…難しいな。


 「そういえば、【魔纏闘鎧】は詠唱は必要ないんですか?」


 「詠唱は必要ないよ。詠唱が必要なのは属性魔法のみだからね。それより、随分苦戦してるようだね」


 「難しいですね。想像イメージはできていると思うんですけど…」


 もしかして、【魔力操作】のレベルが足りないのか?


 「あの?」


 「なんだい?」


 「【魔纏闘鎧】に【魔力操作】のレベルって関係あります?」


 「あっさり気づくとはつまらないね。そのとおりだよ。【魔纏闘鎧】の習得には【魔力操作】Lv.5以上は必要だよ」


 「そうでしたか…」


 俺の現在の【魔力操作】はLv.4。あまり時間はかけたくないし、今日中に習得できるように頑張ろう!


 「ふむ…アレス。格闘訓練も同時で並行しよう」


 「え!それは無茶じゃないですか?」


 「実戦に勝るものはない。俺の攻撃を【魔纏闘鎧】でダメージを軽減できるようにしろ!いいな!」


 「は、はい!」


 それから、陽が傾くまで格闘訓練と【魔纏闘鎧】の習得訓練が続いた。


 「アレス!拳から伝わる感触が変わってないぞ!」


 「はぁ…はぁ…はい!」


 くそ!難しい!もっと集中しろ!


 「アレス!魔力の操作に集中しすぎて、防御ががら空きだぞ!」


 やばい!と思った時にはジルガ爺さんの拳が顔面に迫っていた。


 「ガン!」


 「ほぉ…この土壇場で成功させるか」


 あれ?全然耐えられる痛みだ。打ち込まれた感触からして俺には触れられていない。


 『スキル【魔纏闘鎧】Lv.1を習得しました』


 「やった!成功した!」


 「どうやら本当に習得できたみたいだね」


 「これで威力を抑えずに殴っても問題ないだろう」


 「問題だらけだよ!まだ、習得したばかりでレベルが低いからそこまで軽減できないよ!」


 「それは実戦の中で鍛えれば良いことだ!」


 この脳筋爺め!


 「今日はここまでだね。それと、アレス坊。【隠蔽】を習得したんだったら、大事なスキルは隠しときな。特に、ユニークスキルは誰しもが持っているわけじゃないからね」


 「【隠蔽】って気配を隠せるスキルかと思ってたんだけど、違うの?」


 「【隠蔽】はスキルレベルと同等の鑑定系のスキルを欺く効果もあるんだよ。レベル1だとスキルを1つしか隠せないけどね」


 「分かった!それと、ゼリス婆さんが俺の情報を視たスキルってどんなスキル?」


 「それは【心眼】というスキルだね。相手の所持しているスキルが分かるよ」


 「どうやったら習得できるの?」


 「それは私にも分からないね。いつの間にか習得するしていたから。爺さんは分かるかい?」


 「俺も同じだな。だが、相手の力量を感じ取れるようにならば習得できるのではないかと思う」


 「そうか。とりあえずは習得しているスキルのレベルを上げていくことにするよ。これからも修行お願いします」


 「覚悟しておけ!みっちり扱いてやる!」


 「お、お手柔らかに頼みます…」


 




 


 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る