第8話 老夫婦
「アレス!今日の午後は用事があるから狩りはしないように。いいな?」
「どんな用事?」
「それは秘密だ!楽しみにしておけ!」
「分かった!」
両親に見送られながら、森へと急ぐ。今日は短時間し狩らないから頑張らないと!【空間魔法】の収納空間内には薬草や魔物の死体がたくさんあるけど、いくらあってもいいからな。
最近は成果物の量が多いからなのか、ご飯の質と量が良くなった。そのおかげもあり、身体はすくすくと成長している。
「お!3つの反応がある。ホブゴブリンかなぁ」
ホブゴブリンは既に安定して狩れるようになった。最初のうちは奇襲で倒すのを徹底していたが、レベルアップによるステータスの変化で2対1でも勝てるようになった。
「ん?あれは…ゴブリン2匹と小さな狼男?」
ゴブリン達と小さな狼男?はお互いに睨み合い、牽制しあっていた。この状況にどうやって介入するか考えていると、もう1匹小さな狼男?が増えた。
というか、おそらく小さな狼男?はコボルトだろう。身長はゴブリンと同じくらいで身体は白い毛で覆われている。
頭部は狼そのもので鋭い眼光と犬歯があり、武器は所持していない。どんな能力を所持しているか分からないが、俺に気づいていない今が倒すチャンスだろう。
「穿て、水の弾丸よ、
『スキル【威嚇】Lv.1を獲得しました』
『スキル【嗅覚感知】Lv.1を獲得しました』
「ガル!」
「グギャ!」
もう1匹のコボルトとゴブリンが驚いて周囲を見渡す。そして、隙だらけなところにもう一度、
いきなり、2匹のコボルトが死んだことでゴブリン達がその場から逃げ出そうとする。
(逃すわけがないだろう!)
身を潜めていた木の陰からゴブリン達に向かって走り出す。
「「グギャ!」」
ゴブリン達は俺に気付き、驚いて隙だらけになる。その隙を見逃さず、一瞬で2匹を仕留める。
『スキル【奇襲】Lv.1を習得しました』
『スキル【俊足】Lv.1を習得しました』
「ふぅ…今日は幸先が良いな」
その後、[デトキシ草]や[パライズ草]などの薬草を採取し、ホーン・ラビットなども狩ってテントに戻った。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「狩りの成果はどうだった?」
「いつも通りだよ。てか、5日間くらい狩猟採集しなくても問題ないくらいストックがあるよ」
「それは凄いな!なら、明日くらい休んだらどうだ?」
「ううん。休まないよ。早く強くなりたいからね」
「そうか…無理はするなよ」
「うん!」
父さんと会話しながら敷地内を移動し、一つのテントの前にやってくる。
「アレンだ!入っても良いか?」
「入りなさい」
老婆のようなしわがれた声で返事が帰ってきた。テントに入ると、テーブルを挟んだ向かい側に老夫婦が座っていた。
「ご健勝そうで何よりです。ジルガ爺さん、ゼリス婆さん。こちらが私の息子のアレスです」
「初めまして。アレンの息子、アレスです。よろしくお願いします」
「ほう…しっかりとした息子だな」
ジルガ爺さんは歴戦の猛者という印象を受けた。白髪に鋭い眼光、頬には切り傷があり、年老いてなお、背筋がしっかりと伸びており、鍛えられた身体に一本の芯が通っている。
「そうだね。しっかりと自己紹介ができて偉いよ」
ぜリス婆さんは見た目は完全に魔女だな。白髪に垂れた目で穏やかそうな印象を受けるが、目の奥は油断せず、こちらを値踏みするように注視している。
「アレス、今日はジルガ爺さんとぜリス婆さんにお前を鍛えてもらうために、ここへ来た」
「うん」
「この方達からたくさん学び、吸収し、己の糧としなさい。強くないたいのだろう?」
「うん!頑張るよ!」
「良い子だ!では、ジルガ爺さん、ぜリス婆さんよろしくお願いします」
父さんは俺の頭を優しく撫で、老夫婦に挨拶するとテントを出ていった。
「まずはそこにお座り、アレス坊」
「はい、失礼します」
「アレスに1つ聞きたいことがある。どうして強くなりたいのだ?」
うーん…どうして?と言われたら、権力や暴力に屈したくないからだけど…。
「権力や暴力に屈したくないという気持ちもありますが…一番の理由は大切なものを溢さないように握りしめて、その拳で傷つけるものや害するものを殴り飛ばせるようにするためです」
ジルガ爺さんは俺の目を見据える。俺もジルガ爺さんの真偽を確かめるような目を見つめる。
「…そうか。ならば、修行をつけてやろう。それを乗り越えられれば、今よりも強くなれるぞ。決して折れないことだな」
「はい!」
「アレス坊。私も一つ聞きたいことがあるよ。アレス坊は何者だい?」
「えっと…どういうことですか?」
「アレス坊は特殊すぎるね。その歳でそのスキルの保有数は異常だし、【空間魔法】は最高レベル。しかも、ユニークスキルまで所持しているなんて明らかに怪しいよ」
やっぱり、相手の情報を見抜くスキルは存在するようだ。もしかしたら、嘘を見抜けるスキルもあるかもしれないし、嘘はつけないか…。
「私はこの世界とは別の異世界から転生してきた異世界人です。ですが、アレンとマリアの息子であることには変わりありません」
「…そうかい。異世界人だったのかい」
「あれ?あまり驚かれないんですね」
「珍しいことじゃないよ。私達も異世界人に会ったことがあるからね」
そうなんだ。俺以外にも異世界人はいるのか。是非、会ってみたいな!
「その異世界人はどんな人でしたか?」
「それは色々だね。戦闘に秀でたもの、生産に秀でたもの、あとは侵略を企むものなど色々さ」
「え!?侵略を企む人なんているんですか?」
「ああ、いるよ。そいつは多分、大陸の覇権を握ろうとでも考えているんじゃないかね。勿論、心優しい異世界人もいるだろうけどね」
そっか…そりゃそうだよな。きっと俺のように
でも、誰彼構わず殺し、支配するのは許せないな。元地球人ならそのあたりの感性はまともだと思ったけど、十人十色か…。
「それじゃ、修行を始めるぞ!」
いや、今は考えている場合じゃない。今は何よりも強くなるために。
「はい!お願いします!」
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