第5話 魔法訓練

 目を覚ますし、身体を動かそうとすると全身にズキズキとした痛みが走る。


 「痛!」


 「お?目覚めたか、アレス」


 「おはよう、父さん。俺どのくらい寝てた?」


 「昨日の夕方から今日のお昼までだな」


 「めっちゃ寝過ごした!今日の仕事は?」


 「それは俺が済ませておいた」


 「ごめん…父さん」


 「気にするな。休むことも大切だ。まずはご飯を食べろ」


 「うん」


 少し冷めたご飯をしっかりと噛みながら飲み込む。


 「今日は無理に身体を動かさず、柔軟体操ストレッチをして、魔法の訓練をする。いいな?」


 「分かった」


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「それじゃ、訓練を始める。アレスは【魔力感知】を習得しているから、短期習得が可能かもしれない」


 「今日一日で習得してみせるよ!」


 「よし!その意気だ!まずは魔法について説明する。魔法とは詠唱により魔素に干渉し、事象を具現化するものだ」


 「うん」


 「凄腕の魔法使いになれば炎で辺り一体を燃やし尽くすことだってできるし、広範囲にわたって雷を落とすことだってできる」


 「かっこいいね!」


 「勿論、対象を指定し、周囲に影響を及ぼさず、敵のみを倒す魔法もある」


 「それは便利だね!」


 「魔法は全部で10種類ある。【火炎魔法】【水波魔法】【大地魔法】【風嵐魔法】【氷凍魔法】【雷電魔法】【回復魔法】【呪術魔法】【神聖魔法】【空間魔法】の10種類だ」


 「たくさん種類があるんだね」


 「俺やマリアは1種類の魔法しか使えないが、複数の魔法を行使する魔法使いはこの世界にたくさんいる。アレスは才能がありそうだから、もしかしたら全部の魔法が使えるかもしれない」


 「任せてよ!」


 「ははは!頼もしいな!では、【火炎魔法】を教えるぞ。準備はいいな?」


 よし!やってやる!絶対に父さんの期待に応えてやる!


 「いいよ!」


 「火よ、灯せ、灯火トーチ


 アレンが詠唱を唱えると指先に小さな炎が現れた。


 「どうだ?」


 「凄いよ!ちゃんと熱もあるし、熱源には困らないね」


 「そうなんだよ!この程度の魔法じゃ消費魔力も少ないし、便利な魔法さ!」


 「じゃあ、僕もやってみるね!」


 「ああ、最初は上手くいかないかもしれないが、落ち込むーーー」


 「火よ、灯せ、灯火トーチ


 俺の指先にも父さんと同じ炎が現れた。


 『魔法マジックスキル【火炎魔法】Lv.1を習得しました』


 「………」


 「やった!父さんできたよ!一発で成功だ!」


 「………」


 「父さん?」


 「あ、ああ…大丈夫だ。問題ない」


 「そう?それよりも、【火炎魔法】Lv.1で使える魔法は他にないの?」


 「他には火弾ファイア・バレットという攻撃魔法がある」


 「教えて!」


 「穿て、火の弾丸、火弾ファイア・バレット


 アレンの指先に銃弾の形をした火が現れ、詠唱を終えると真っ直ぐ飛んでいった。速度は俺では避けれないが、強者なら避けられるのかもしれない。


 真っ直ぐに螺旋を描きながら飛んでいく様に目を奪われてしまった。


 「と、父さん…凄いよ!」


 「そ、そうか!アレスもやってみろ!」


 「うん!「穿て、火の弾丸、火弾ファイア・バレット」」


 指先から火の弾丸が真っ直ぐ射出される。ああ…最高だ…。


 「アレス、ちょっと待っていなさい。マリアを呼んでくる」


 「うん」


 数十秒後、アレンがマリアの手を引き、戻ってくる。


 「どうしたの?急に?魔法の訓練をしているんじゃなかったの?」


 「いや…そうなんだが、俺の息子が天才すぎてな」


 「どういうこと?」


 「【火炎魔法】を一回で習得したのさ!」


 「…貴方、疲れてるんじゃないかしら?」


 「俺は本気だぞ!アレス、もう一回やってみろ!」


 「うん!」


 マリアの前で火弾ファイア・バレットを披露すると、マリアは目を見開いていた。


 「…本当だったのね」


 「凄いだろ!そこで、次はマリアの【水波魔法】をアレスに教えてやってほしいんだ」


 「そうね。なら、次は私が教えるわ」


 「アレス!しっかりと見ておくんだぞ!」


 「うん!」


 「穿て、水の弾丸、水弾アクア・バレット


 「おお!詠唱はあまり変わらないんだね」


 「そうね。大規模な魔法になると違ってくるけど、小規模な魔法はそこまで変わらないわね」


 「よし!やってみる!「穿て、水の弾丸、水弾アクア・バレット」」


 『魔法マジックスキル【水波魔法】Lv.1を習得しました』


 『職業ジョブスキル【魔術師】を獲得しました』


 「驚いたわ!一回で成功させるなんて!【火炎魔法】は適性があるから成功したのかもと思ったけど、【水波魔法】にも適性があったのね」


 「全魔法を習得したいから全部に適性があることを神様に祈るよ」


 「それは…そうね。それにしても、魔法の発動がスムーズよね。もしかして、【魔力操作】も所持しているの?」


 「持ってるよ!」


 「…いつ覚えたの?」


 「え、えっと…なんとなく?」


 「はあ…【魔力感知】といい、【魔力操作】といい、本当に私達の子は天才なのかもしれないわね」


 「そうさ!俺達の息子は天才だ!」


 母さんは少し疑ってるけど、父さんは親バカだな。良い両親に恵まれたな。


 「アレス、明日からはお昼まで狩猟採集を行い、昼からは格闘訓練と魔法訓練を行う。そして、一つ課題を与える。狩猟採集と格闘訓練中は【魔力操作】を維持し続けるように。いいな?」


 「分かった!頑張るよ!」



 

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