第2話 魔力
「あら?おはよう、アレス」
目を覚ますと母親のマリアが慈愛に満ちた微笑みで俺の顔を覗き込んでくる。
その微笑みを見ると自然と手が伸び、マリアは優しく俺の手を握ってくる。手の温もりを感じ、笑顔が溢れる。
マリアは俺の笑顔を見ると笑みを深め、優しく頬にキスをする。
幸福感に浸っていると、俺の父親のアレンがやってきた。
「アレス、おはよう。マリア、とても名残惜しいが休憩は終わりだ。仕事に戻ろう」
「………分かったわ」
アレンとマリアは俺の頭を優しく撫でるとどこかに行ってしまった。
二人が向かった先を見ながら思う。二人とも服装がとても見窄らしかった。俺の家族はあまり裕福ではないのかもしれない。
(それなら、俺がたくさん働いて少しでも恩返しをしよう!)
新たに決意をすると共に今できることについて考える。最初が肝心だからな。
スキルは内容的に試せないので魔法を発動できないか試してみる。これまで読んだ異世界モノの小説では、魔法を発動する時は「詠唱」が必要な場合と【魔力感知】が必要な場合の2通りだった。
「詠唱」は
現在は赤ん坊なので「詠唱」を紡ぐことができない。まずは【魔力感知】を習得することから始めよう。
小説であった設定に大気中を漂う魔素の流れを知覚できれば【魔力感知】を習得できるとあったが、何も感じることはできない。
視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚の五感で無理ならこの方法では習得できない。次は身体に巡る魔力の流れを知覚する方法で試してみよう。
目を閉じて体内に意識を向けてみたが、特に何も感じない。
(赤ん坊の内に習得するのが無理なのかもしれない…)
いや、まだ諦めるのは早い。再度、目を閉じて深呼吸をする。
無駄な力が抜ける。頭のてっぺんからつま先までの感覚と血流を
不思議な感覚だ。体内を血流とは違う何かが流れている。違いは流速だろうか。
血流は呼吸を止めると血流は不安定になるが、その何かの流れは一定でとても安定している。
(そうか。これが俺の身体を循環する魔力か!)
『スキル【魔力感知】Lv.1を習得しました』
成功したようだ。ステータスを確認すればスキルの欄に【魔力感知】Lv.1があった。
嬉しさと共に眠気が襲ってきた。今日はここまでにしよう。また、明日も頑張ろう。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
今日も目覚めたら両親と挨拶を交わし、昨日のおさらいをする。なんとなくだが、周囲に何かが漂っているのを感じる。
おそらく魔素だと思うが、認識度がスキルレベルが低いため曖昧なのだろう。
これからも起きている間は意識して魔素と魔力を知覚する訓練を続けよう。そして、今日は【魔力操作】に取り組む。
【魔力操作】は体内を循環する魔力を操作できないといけない。どうするべきか…。
いつもどおり深呼吸をし、無駄な力を抜いて身体の感覚を研ぎ澄ませる。人差し指を天辺に向けて、その指先に魔力が集まるように意識する。
体内を一定の速度で循環する魔力を指先に留める。意識的に流れを指先で留める。
一時的に魔力が指先に集中したようだが、すぐに流れは元通りになった。まだ修練が必要なようだ。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
5日後、指先に魔力を集中する練習をしていると今まで元通りになっていた流れが止まる。魔力が指先に留まり続ける。
(お!これはもう少しか!?)
魔力の流れを戻し、逆の手の指先に魔力を集める。魔力の流れはそこで止まる。次は足先に魔力が集まるように意識すると、そこに魔力が集まる。
『スキル【魔力操作】Lv.1を習得しました』
(よし!上手くいった!)
手探りの中、色々試してみたが上手くいって良かった。
改めて思う。先人達の知識は偉大だ。まあ、架空の先人達ではあるが…。
【魔力感知】も【魔力操作】も習得できたので、所持している【空間魔法】を発動させてみようと思う。
一度は「詠唱」が必要であるからと断念したが、もしかしたら、発声は不要かもしれない。
(異空間よ、開け)
何も変化ははない。「詠唱」が良くなかったのだろうか。それとも
例えば、この世界とは別の宇宙のような場所に空間を繋げるみたいな。
(異空間に繋げろ、開け)
今度は目の前に黒い穴が広がる。
(ま、まじか!)
確認のために黒い穴に手を入れる。妨げることなく手が入り、手を出して確認しても問題ない。
成功したことに喜ぶが、すぐに穴は元通りになった。現時点の魔力量はたったの「10」
長時間維持することもできないのは当たり前だな。ステータスで確認しても魔力量は「0」になっていた。
これで「詠唱」は必要ないことが分かったが、だからといって「詠唱」が不要なのかは分からない。
「詠唱」すれば魔法の威力が上がるかもしれないし、簡単に選択肢から外すのは良くないな。
攻撃や防御に使える魔法を覚えた時に試してみよう。
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