【 覚醒の姫 】






「これで我が配下の召喚も滞りなく完了か。」彼は首を軽く鳴らしながら言った。


「貴方様の至高のお力再び感じられること、私は幸甚の至に御座います。」返す彼は、心から歓喜に打ち震えているようで、声が少々上擦っていた。


「この程度の些事であれば造作もない。……あぁ、そうであった。姫を迎えに行かねばな。」彼は、突然思い出したように言う。


「姫?…姫というのは…まさか!……“あの”で御座いますか?」その言葉を聞いた彼は、心底驚いた様子だった。


「あぁ、もう随分と前になってしまうのか。我はあやつとの戦闘時に感じ取った。確か、あやつの名は…なんと言っていたか……しかし、あやつの前哨戦となった奴は実に手強かった。───いや、強くなっていた。と、言うべきか。…あれを行使出来ねば、この様な形で留まる事さえ儘ならなかったであろうな。しかし、それであやつとの戦いには不覚をとった形となったが……」そこまで耽るように語ってから、ひと呼吸置くと。


「アルスよ。我と善戦した奴はどうなったのだ?」彼は興味ありげに、彼改めアルスに問うた。


「奴ですか。確か奴でしたら、生意気にも主殿を討ち取った輩が亡き者にしたようですよ。」一方のアルスは、あまり興味なさげにそう言った。


「……ほぅ、そうであったか。それは実に。……本当に実に愉快な事だな。」彼は口角を上げ、心底愉快そうに呟く。


「…もし仮に。あの場で我の“本当”を見たのならば、奴はどうなっていただろうか……いや、それはもはや些末な事か。少々、我の真相を知った奴の顔が見てみたくもあったのだが………終わった物語ことを思っても意味などはないか。……今はそれより…」


「崇高なる御考えの最中、申し訳ありませんが主殿よ。姫の出現より時が経ち過ぎて御座います、早急に向かわれたほうが。」



「あぁ、そうだな。急ぐとするか」





【 覚醒の姫を迎えに 】












あとがき


お読みいただきありがとうございました。


面白いなと思っていただけましたら、フォロー、応援コメント、レビュー、星評価等いただけると励みになります。


今日の更新はここまでとさせていただきまして、明日から次章 Chapter Ⅰ Prescience を更新していきますので、よければ引き続きお読みいただけると幸いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る