スケルトン襲撃大作戦
メリアが俺を連れて来たのは騎士団の作戦室である。そこにはトライソーンを中心に騎士達が集まっていた。
「何故ウンスイがここにいる」
トライソーンは不機嫌そうにメリアに言った。メリアが話し始める前に俺が口を出した。
「私がメリアさんに無理を言って頼んだんです。微力ながらも皆様のお手伝いを出来たらと……」
俺が思っても無いことを言うとトライソーン以外は感心したような顔をした。
「じゃあ邪魔せず聞いていろ」
トライソーンは無愛想に会議に参加する事を許可した。周りの騎士達は同情的な目で俺を見た。そんな騎士達に俺は微笑み、
「私の事は気にしないで下さい」
と儚げな声で言った。
「全員集まったようだな、状況報告」
トライソーンは偉そうに部下に指示する。騎士の中の一人が前に出て緊急招集の理由を述べた。
「ブロッサムの街に程近い西の森からスケルトンの大群が出現しました。今のところ近隣の街に被害は出ていませんが市民が不安がり騎士団に出動要請が入りました」
このスケルトンはカクタスが出した奴らだ。トライソーンから情報を引き出す為にまずは聖都から連れ出し一人になる状況を作り出さなければならない。その下準備である。
て言うかあの街ブロッサムって名前なのか初めて知った。
「それで?御使様はスケルトン相手に何が出来るのかな?」
トライソーンは嫌味ったらしく俺に聞いてきた。こいつ感情を隠すとか出来ないのか?
「スケルトンは喋る事もなく動き回る魔物と聞きます。私では到底力になれません」
「そうだろう」
「ただ後学の為にご一緒出来たらと思います。現場では騎士団長様から離れる事なく待機しています。決して邪魔はしませんので」
「何で私がそんなこと……」
トライソーンは突然黙った。何か考えている様だ。そして何か思いついたようで下品な笑みを浮かべた。
「まあ、そこまで言うなら仕方ない。戦場では何が起こるか分からない。私から離れない様に」
掛かった。チョロすぎる。
「流石騎士団長様、ありがとうございます!」
俺は笑顔でお礼を言った。そこからはトライソーンはご機嫌であった。俺と二人きりになると何か良いことでもあるのかな?
今のところこちらの思い通りに事が進んでいる。スケルトン襲撃でトライソーンを外に連れ出して、俺がトライソーンと行動する事により二人きりの状況を作り出す。本当にトライソーンが現場に出てくるか不安だったが一回目で成功してくれた。今回失敗しても似た様な事をすればまた外に出てくれるだろう。
当然のことながらこの自らが囮になる献身的な作戦に俺が乗り気な訳がない。教会に着いてもいつか殺されるだろう、となると悪霊どもに着くしか俺には選択肢はない。我ながら何故こんな事に巻き込まれたのか自身の行動に後悔するばかりだ。それもこれもこんなふざけた世界に連れて来た自称女神のせいだ。やはり奴の顔面に一発蹴り飛ばす位しないと腹の虫が治らん。
その後作戦会議は滞りなく進み、終わり次第出発する事になった。その間トライソーンは終始ニヤニヤし機嫌が良かった。
仕舞いには、
「これでいい報告ができる」「愚か者め、自ら罠に飛び込むとは」「クックック、まずはテントに誘い出して……」
副騎士団長が他の騎士達に話している最中にブツブツと独り言を言い始めていた。幸いにもトライソーンは騎士達に人望が無いのか興味を持たれてないのか誰も独り言に関して言及するものはいなかった。
これにはトライソーンを警戒していたメリアも驚きの表情だ。いや、驚きと言うか呆れと言うかそんな何とも言えない表情であった。あまりに馬鹿すぎる。こんな奴の下につき仕事をしているのだ、俺は不憫だなと同情した。
本当にこいつは暗躍とかに向いていない。表情にも口にも出過ぎている。それともバレてもいいと思ってるのか?こんな奴にグラジオラスは殺されたのか、情け無い。
どちらにしてもトライソーンがその調子ならこの後の尋問も問題なく進めそうだなと確信した。
出動する為にバタバタ準備をして廊下を歩き回っている時にたまたまフィザリスとすれ違った。トライソーンから何か報告を受けたのだろう、こちらを見ながらニヤニヤ下品な笑みを浮かべていた。
本当にコイツら……なんかもういいや、馬鹿馬鹿しくなってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます