善行
「えげつないの」
カクタスはそう言った。俺も同じ感想だ。我ながらえげつない事をしたと思っている。
グラジオラスがルーピンを屋敷に届けているのを俺達は森の中で待っていた。
「本当にこれで改心するのか?」
メリアは心配そうにこちらを見ている。
「メリアはアレをやられて改心しないのか」
「ワシはするのう」
「私も……するだろう」
「まあこれでダメなら今度は夜に直接屋敷を襲撃すればいい」
「はっは、それは気の毒なことだ」
カクタスは笑っているがメリアは頭を抱えている。騎士としては褒められたやり方ではないのだろう。カクタスは案外乗り気でこの作戦にスケルトンを快く動かしてくれた。一方グラジオラスはというと。
「待たせたな、ルーピンは屋敷に逃げ込んだ。これで安心だろう」
グラジオラスは馬車に乗って帰ってきた。
「それにしても病みつきになりそうだ、デュラハンになって初めて首が取れる事を感謝したよ」
グラジオラスもこの作戦にノリノリであった。何処の世界も男って奴はこういうドッキリが好きなのだ。憧れの騎士であるグラジオラスも楽しんでいるのを見てメリアは更に頭を抱えた。
翌日、ルーピンから減税の御達しがあった。その事は一夜にして決まった事ですぐさま周辺の村々に伝達された。
数日この街に滞在して様子を見るつもりであったがあっさりしたものだ。おかげで直ぐに出発する事になった。
村の司祭は頭を下げて俺達にお礼を言った。
「この度は本当にありがとうございます。メリア様」
「いや、今回私は何もしていない。全てはウンスイがやってくれた」
「そうでしたか、ウンスイ様ありがとうございました」
村の司祭は俺の手を握って頭を下げた。メリアは自分の手柄にしなかった。俺の事は嫌いだが手柄を横取りする様な人間ではないらしい。
個人的にはメリアと俺のどちらかがやったと明確ならない方がいい。その後状況によってどうとでも対応出来るからだ。メリアに全ての責任を擦りつけるのも一つの手である。逃げ道は幾らでもあったほうがいい。
俺達は教会から出て馬宿に向かった。その道中にもメリアは市民にお礼を言われていた。この街には村から出稼ぎに来てる人も多いとか。その一人一人に訂正する事も出来ないのでメリアはバツの悪そうな顔で笑うだけであった。
馬車に乗り込み森で待機している化け物共を回収しに行く。
「何故ウンスイは助けたのだ?今回は除霊でも無ければ金も手に入らないのに」
「気に入らなかったって言ったろ」
「それだけか?」
「そうだよ、俺も労働者階級だ。搾取されるのは真っ平御免なんだよ」
「詐欺師は労働者じゃないだろ」
「痛いとこを突くな」
「まあ、今回は良くやったと思っている」
コイツが俺を素直に褒めている。
「何だ?お前もグラジオラスとカクタスに脅されたか?」
「うるさい!」
メリアは手綱を操り馬のスピードを上げた。
「うお!」
馬車はガタガタ揺れて喋れなくなってしまった。照れ隠しはもっと優しい感じのにしろよ。
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