日記体小説・人生なんて無意味だ。

柴田 康美

第1話 人生なんて無意味だ。

○月○日 


 「じゃぁ」と小さく彼女は言った。話すことなんかなにもない。列車に乗り込んで窓際に座ったとき「さよなら」と口元が呟いたようにみえた。小さな唇をみていたらキスがヘタ同士歯がガチガチ当たったことを想い出した。歯茎から血がでで歯をなめすぎてあとでベロが痛かった。ふたりは顔中血だらけになった。オレはオオカミになった。彼女は目を閉じて喘いでいたがオレが下を触ろうとすると、まだ早い。そこは触らないで。と突然正気に戻ってかッと目を見ひらきいいはなった。なんだ、しっかりするときはしっかりbするじゃないか。


 列車は停まったままでお互いじっと黙っている。だって、どーしょーもないだろー黙っているしかないんだから。いっしょにゆくわけにはいかないし。結局、ふたり無言で列車はホームを離れた。列車が短いトンエルをぬけるころ自転車で海へ向かっていた。ほかにゆくところなんかないからね。ほかにない、ただそれだけで近くはない海へいった。カッコつけていえばふたりの出会いの場所でもある神聖な岬ですか。べつにカッコよくもないか。神聖でもないか。切り通しの坂をフルスピードで下っていると急に涙が横にながれた。いまさら涙かよ。へへ、オレも泣くことがあるんだなぁー。あんがい客観的に自分で自分をみていることに気がついた。こんなことで男の子が泣くなよな。情けない。せめて大金をつかんだ時とかスポーツで優勝した時にしろ。みっともない。なにが、どうして、悲しいのか?よくわからない?彼女は必要があって東京にいった、オレは東京が必要じゃなかったから田舎に残った。それだけじゃないか。人と別れたのが悲しかったのか。だって、いままでも別れはいっぱいあった。では、彼女がキライだったのか。それだったら見送りにいかない。いままでいっぱいあった別れのそのたびに泣いたか。そんなこたぁない。きょうはどっか感情の涙腺がぶっこわれていたのかな。最初からこうなるとおもっていたのだから泣くことはないのだ。泣いても時間は戻らない。いいことだろうがわるいことだろうがどんどん時間は進む。泣いたのは彼女と別れたことばかりではない。いままでの退屈で閉じ込められた生活にこのままおめおめと戻るのがいやだった。彼女と話をしていれば少しは夢が芽生えた。まったく夢をもたない自分はそのかすかな夢にすがりつきたかった。彼女とは住む世界がぜんぜん違う。相手はいいところのお嬢さんだしこっちは貧乏人の小せがれだ。貧乏社会から一歩抜け出すのは並大抵の苦労じゃない。家族の中でひとり抜きん出ればその家のステータスは上がる。平成でもこんな古い図式が通用するんだ。こんなもんだぜ世の中はハハハ。このセリフは過去の人生でも度々口をついて出てきた。なかばすてばちに口から吐き出してきた。いくらがんばっても上に這い上がれない。まだまだ階級制度みたいなへんちくりんなものが残っているこの世間の頑固さ。その絶望には慣れた。そう、やぶれかぶれにならなければいけないとおもった。人がアッというようにいっそ断崖からから飛び込んでやろうか。そんなのいまではだれもアッと言わない。ああ、死んだかで終わりだ。海風に吹かれていてそう考えが落ち着くと不思議にすがすがしい気持ちになった。汗ばんだ皮膚の感覚が時間とともに冷えてそれといっしょに記憶も遠ざかっていった。そしてあらためて人生なんて無意味だとおもった。同時に将来に対する無力感がどっと押し寄せてきた。明日からいったいどうしようというのだ。それが夕方の暗くなった海の色のようにこころに覆い被さってきた。


 ○月○日

 

 きょうはありがとう。メールは読んだ。きづかいは無用だ。学校はもうとっくにやめている。もともとがっこうなんざ性にあってねぇ。大勢ひとの集まるとこはきらいだよ。野球をやってたころのダチがきてどうだいこのごろは寝てばかりじゃだめだといって川の土手にいった。ばあさんみたいなことをいうなって。べつだん話しもない。小一時間ほどしてかえっていった。ひとりになってから鉄橋を渡る電車をみながらこれからのことをかんがえた。いくらかんがえてもいまの自分にはなにも浮かんでこなかった。でも一歩でも二歩でもとにかく前に進むしかない。なんのために。もうどうでもいいんだけどね。マジなはなし。


 ○月○日

 うちへ帰ると母親がおまえこれからどうするんだいときいてきた。わからん。わからんものはわからん。ぜんぜん考えていないというとそんなのんきなこといって、ほんとに。父さんはどこでもいいから働けと言ってるよと言った。そうはいっても前からいってるようにオレはひとのいっぱいいるとこはだいきらいなんだよな。ひとに頭さげて金をもらうなんざあ性ににあってねぇ。ほら、いちにんまえにまたそんなぜいたくを言って。お金をかせぐのはたいへんなんだよ。食いぶちをいれなきゃだめだよ。わかってんだろ?

  

 ○月○日

 づっと家にいた。このごろ外へ出る気がしなくなった。金もないけれどひとに会いたくもない。そんなこっちゃいけないとつくづく思うのだけれどいきたくないものはいきたくない。アルバムを出してきてながめる。みんな元気だったな。このころは。どうしているのかな。じぶんは1通も年賀状も出さないのにいい気なものだ。ことし年賀状をもらったら必ず出さなきゃな。と、いっても出すのかどうかはその時の気分しだいさ。


 ○月○日

 人恋しくなったので近くのハンバーガーショップへゆく。ここのは安くておいしいんだよと同級生が教室でしゃべっていたのを聞いたことがある。へん、ハンバーガーなんかくえるかよ、と、そのときはきらいな数学の教科書をかばんから取り出しながらおもった。でも実際自分が腹を減らして食べてみるとまあまあの味だということがわかった。あとから入ってきたおじさんがセット物をテーブルに運ぶときスプーンを落とした。拾って渡すと孫でもこんなことしちゃーくれないと言ってニコニコ笑った。こんな小さな親切をいったいいつやったかなとふと考えてみた。


 ○月○日

 歯医者へいった。この医者は治療は掃除だけだっていうのに日数を空けちゃいかんと怒る。たったの歯のクリーニングだけだよ。医者は怒った日には罰としてレントゲン撮影する。金はとられるし放射能はあびるしいいことない。ほんとに医者かよ。患者のことはなにも考えていない。2カ月に1回くるようにといつもいわれるが急がしいとかなんとかごまかして3カ月に延ばすのが気にさわるらしい。液体のハミガキと電動ブラシを使っているから大丈夫だって。うそだけどね。水ですすいでいるだけだ。帰りに受付のおねえさんがあめ玉を一個くれた。ちぇ、あめ玉かバカにするなよ。いつもくれるんだけど。先生のいうとおりにきてね。怒ったらこっちにとばっちりがくるから。あほ、子供じゃねぇつーの。


 ○月○日

 こういうきもちをどう言ったらいいのか。とにかくがむしゃらに字を書いてみたくなった。相手はだれでもいい。ひさしぶりに手紙みたいなものでもノートに書こうとしている。相手のアドレスは知らない。見えないひとに向かって書く。まぁ拝啓ってやつです。おげんきですか? ぼくはすこぶるげんきです。ほんとはちっともげんきじゃないが元気と書いておくか。いまなにをやってますか? そんなことどうでもいいじゃないかといわれそう。それより自分のこと、自分のこと書くんだよ。自分のことはそんなにおもしろくないかもしれないけどまぁ書いてやってもよい。おもしろいはずがない。ふーてんだから。でも、どうして、みんな、じぶんより他人のことが気になるのだろう。


 ○月○日

 もういちど歯医者のはなし。このあいだいったとき、めずらしくグズグズ言いの医者がどっか気になっているところはないかとわざわざオレの治療している寝椅子みたいな席へきた。ちょっと警戒する。いつもそっぽを向いて話しもしないのにきょうはどーした?どういう風の吹き回しなんだい?いままで診察室に入るたびに何回もいっているじゃんか。めしを食っているとき下の唇を歯で噛んでそこから口内炎になると繰り返し訴えている。いつもこのヤブ医者は知らないふりだ。じゃぁききめがあるかどうかわからないがとニヤニヤ笑って尖った古い歯をカッターで削ってくれた。そうだよ、やればできるじゃん。黄色い歯を出して笑うなよ、歯医者のくせに。硬貨でチャラチャラ支払って外にでたとき口の内がとてもいい感じだった。ブラボー。家に帰ってせんべいをたべてもトレビアン。なぜ、こんないい感じのことをなんどいってもやってくれなかったのだ。悪いけど患者の言っていることは早くやっていただきたくおもう今日この頃です。


 ○月○日

 図書館にいった。いま、唯一オレを解放してくれる場所だ。このしずけさがたまらない。書棚をみていい本がないかさがしているとどこかのおばさんがDVDを観たいが機械の設定をおしえてくれといってきた。係のひとには頼みたくないといった。コンセントをさしこんで再生できるようにしてやった。するとそのひとはあぁかんたんじゃんわたしにもできたかもしれないといった。やれるんなら自分でやったらどうなんだ。こういうおとながおおくなった。ありがとうも言わずに。ひとをなんだとおもっているのだ。おおかた真っ昼間から図書館でふらふらしてるやつなんかろくなやつじゃないと思っているにちがいない。


 ○月○日

 あれは2学期のはじまって間もない日、授業のはじまるちょっと前でみんなが集まって雑談してどっと笑ったとき、ピーターが突然立ち上がって「学校の勉強で意味のあるものなんかなにもないよ」と言った。「まえからわかっていたけど。だからなにをしても無駄だ。」そう言ってから机にだしたばかりの教科書をカバンに詰めなおしみんなに軽くあたまをさげ教室をでていった。オレもいっしょに出ていきたかったがみんなの手前ついていく勇気がなかった。あのさよならはだれにむかってしたのだろうか。すぐには賛成できなくてもなんとなくわかるその言葉に気まずいおもいをしているクラス全員へだったのかなといまになっておもう。


  ○月○日

 きょうはがまんの日だとおもった。コンビニでジンを買おうとすると後ろのおやじに子供がそんなもの飲んじゃいけないと言われた。そんなのオレのかってじゃないか。おまけに前の客がばら銭をぶちまけてそれが四方八方に広がりレジはおおさわぎさ。客は拾ったけどまだ20円足りないと言っておねいさんにグズグズごねている。やだなーもう、このままカネを払わずジンもってちゃうぞ。やっとカネを払って外にでると客同士がケンカしていた。おまえがうしろをよくみて発車しなかったからぶつかるところだったといっている。相手は女房が後ろの席でもみじ饅頭買うのを忘れてもういちどすぐに買いに行きたいとうるさかったと弁解している。すまんとあやまっているから事故なんかじゃないじゃないか。なんでそんなつまらないことで大声をだしているのか。おまわりを呼ぶぞ。こっちのほうがむしゃくしゃしてくる。きょう家をでるときオヤジがこんな生活を続けているならいますぐ家を出て行けと言われた。こっちだって好き好んでこんな生活をしているわけじゃないんだ。いまのオレの状況を正しくはスランプともいうことがある。


  ○月○日

 毎月駅の近くの美容サロンへいっている。床屋よりおカネがかかると思っているひとがいるがそんなことはない。カットだけなら3千円でできる。家に帰ってきてフロに入るときヘアシャンプーすればよい。きのう予約してある時間にいったらあとからきたおねーさんが急いでいるから先にやらせてちょーだいといってきた。こーゆーおんなのひと多いんだよね。とくにこのごろ急に。なにをそんなに急ぐのか。なんでもゆったらゆるされるとおもっているのか。係の美容師も苦笑いだ。しょうがない。いいですよ。どうぞと言わざるをえない。どーもすみませーん、と言う声をあとにじかんをつぶしに外へでた。しかたがないので星乃珈琲店へいった。あんがい味が苦くてオレはスキだ。パチンコ屋と駐車場が共有でギャンブル好きの客もくる。負けたひとはだいたいわかる。元気ないもの。そんなにチカラを落とすならパチンコはやめろよな。


 ○月○日

 日曜日一晩考えてみた。いまは月曜日の朝だ。結局いい考えは浮かんでこなかった。こういうときの自分の頭脳はどうなっているのだろうか。回転がすこぶる悪い。中古車の始動セルが回らないのとよく似ている。ちょっとむずかしい問題はいつもあとまわしになる。ガールフレンドはいまとんでもなく忙しい。なぜなら卒業後の就職先を選ばなくてはならない。だから、オレたちの来週のデートの行く先なんてどうでもいいカテゴリーにはいる。こっちはどうでもよくないがデートは相手が必要だ。だからお相手があとまわしあとまわしといってるからあとまわしになる。めんどうくさい。デートの日がきまっていないのにその交通手段の連絡ををさらにLINEで電話をかけようがインスタで電話をかけようがどちゃでもいいことだよな。相手にとっても自分にとっても。そんなことを一晩中考えているなんて自分で自分をほんとにバカだとおもった。


  ○月○日

 昨夜から雨が降っている。やみそうもない雨。傘をさして裏木戸を通り西側の増水した川をみる。長く住んでいるのに川の名前は知らなかった。

先日まわってきた回覧板で彷僧川だとようやくわかった。僧が彷徨うのか。おそろしい名前の川だとおもった。上流に水源などはなくいつも少量のもうしわけ程度の水が流れているがひとたび大雨が降ると急速に水位が上昇していまにも氾濫しそうになるがなぜか水は溢れない。溢れそうになって溢れない。溢れそうになってぴたりと止まる。誰かが災いをとめているようにしかおもえない。ふしぎな川だ。このごろ眠るまえにいろいろ考えるのがクセになった。なにか想像もつかぬおおきな手が人の行く先を左右していることがこの世にはきっとあるのだろうなと考えている間に夜の底に引きずり込まれていった。            

               

  ○月○日

 彼女のことをおもうと急にせつなくなった。そしていまやどうすることもできないと悟ると寝られなくなった。東京へ出て行っていまごろは幸せやっているのだろうか。だれか悪い男にひっかかって悲惨な状況になっているのではないか。仕事がなくて生活できず食べる物も食べていないのではないか。考えだすと心配とまらなくなった。あした電話してみようかとまで考えたがまてよ電話番号を聞いてないことに気がついた。別れたんだからね。そりゃそうさ。とうとうほんとの男友達もなく彼女もいなくてまったくのひとりになった。心底さみしかった。あれほどひとりにはオレは強いといっていた人間がふとんのなかで泣くようなハメになった。


○月○日

 今朝は頭が重い。鉛でも頭の周りに巻いているようだ。いやな夢をみた。昨夜の夢は海岸で溺れた子供の遺体が見つからず砂浜で泣き崩れている親の姿だった。どうしたらいい、どうしたらいい。オレは朝早くから釣りにきていた。夜が明けるとこのどうにもならない光景だ。釣りどころではない。捜索といっても何も持たない素人のやることはただ海の向こうを見つめているだけだ。朝日がうねった海面を照らしはじめた。なんでもこの子供は夕べからいなくなって死んでやるといって家を飛び出したそうだ。前にもこんなことがあってそのときも海が好きだから海で死ぬといってたそうだ。あきらめた親は生きていることを望んではいなくてただその姿を見たいと半狂乱だった。おーい、警察がきたぞーと言う声で目が覚めた。

                                        ○月○日                        

いま、夕方の5時25分だ。きょうも外に一歩もでなかった。このごろ散歩にでなくとも平気になった。むしろ、散歩を嫌っている。外へでようという欲求は皆無だ。あれほど毎日あれを買いにこれを買いにと自分に理由をつけては外出していたデベ助はどこへいった。まあ、理由がたいしたものじゃなかったのだ。買っても買わなくてもいい薄弱なものだった。でも買い物の理由付けはどうであれ散歩して歩かなければ自然に足は萎えてくる。若いころ運動を休むとすぐにみるみる筋肉が減って足が細くなって走れなくなった怖さは分り過ぎるほど分っている。今のうちに歩かなかったら早晩歩けなくなくなるだろう怖さも目前に迫ってきている。

                

 

 ○月○日

 時間よとまれこの胸に。そんな淡い希いも無残に打ち砕き時間が刻一刻と確実進んでゆく。なにがあろうと進む。それにつれこの世に住む人間たちも変わるし自分も変わる。何事も一つところに滞まってはいない。日夜大河の流れる如しである。よく分かってはいるが長く親しんだひとたちが変わってゆくのをこの眼で見るのはかなしいことだ。見たくはない。見ないですぐ死にたいくらいだ。でも、考えてみれば自分もいままでそうやってひとをかなしませてきたに違いない。そう思うとオレはやりきれない気がした。


  ○月○日

 きょうはいつになく暑いと思ったが球場にきた。暑くてもなんでも歩かなければならない。泣き言はぜったい言いたくないがどうしても自分にグチが出てくる。幸い曇っていて強い日差しはない。フェンスの外周を歩いて400メートル。グランドに学生の姿はない。少し伸びた芝生のうえを梅雨休みのじっとりした風が渡ってくる。いつも練習の大声が響いているベンチやグラウンド。いまは風だけだ。自分に関係はなくても元気いっぱいの声を聴くのは気持ちがいい。そうしてのんびりしていると、車のすぐ後ろに白バイとどことをこかのおじさんの軽トラが停まった。何事かと車を降りると軽い接触事故らしく警邏の警察官が2台を仔細に眺めて検分している。そのうちパトカーと覆面車まで現れてみるみるおおごとになった。やはり、公用車が事故を起こすと煩いらしい。例えそれがなにも物的損傷がなくても調べるらしい。余計なことを質問せずさっさと退散するに限る。べつに悪いことはしていないがなんとなく気持ちがそわそわするので去る。


 

○月○日

  あッ、とおもった。前を歩いているひとの日傘が飛んできた。ちょっとびっくり。ころころ転がって足元で止まった。自分の足がなかったもっと先へいったかもしれないころころところがって。赤い傘に聞いてみないとわからないけど傘はもっと先にゆきたかったのかな。強い風が吹く公園を散歩していた。すみませぇーん、どこかあたりませんでしたか?若い娘くらいの女性ふたり連れがかけよってきた。いえいえ、そんな、気にしないでください。ご心配なく。だいじょうぶ。散歩コースは一周2000メートル。二周目にかかるときまたふたり連れに追いついた。すると、丸顔のほうが、あの、どこかでお茶しませんか?といってきた。えぇまたちょっとびっくりした。なんで、オレと?べつに喫茶店くらいいってもいいけど。ころころ傘なら気にしなくていいんですよと言って一度は断った。あまりすげなくしていても悪い。それに最近若い女性とお茶を飲んだことない。たまにはいいのかなと近くの「petite」の名前を言った。わかった、知ってる、とふたりは双子のように同時に発声した。平日の午後なので店内に客だれもいなかった。コーヒーを注文するとさっそく雑談開始。ふたりは大学生だった。就職が決まったのでいちど帰省したかったので帰ってきたと言っている。オレは、ああ、そーうとか、へぇーとか、なるほどとか、てきとうにあいずちをうつしかない。ふたりに話しがおいつかない。いよいよ年をとったなとおもった。もっとびっくりしたのは帰り際だった。細面のほうが一週間後に服など身の回りの物をとりにまた実家に来る予定がある。そのときまたお茶を飲むか水泳かゴルフの練習をしませんかと誘ってきた。あまりに突然のことなので思わずいいですよとつっかえながら答えてケータイ番号を教えた。家に着いてからまてよこれはロマンス詐欺かなんかじゃないかと疑ってしまった。かぶっていたキャップをとったらSSU(静岡産業大学)のロゴがはいった物だった。去年、パソコンのExcelを受講したとき在校生から記念にもらったキャップだった。気に入っていていつも愛用している。詐欺でなければあのふたりはなにか間違えているのではないかとミネラルウオーターを飲むのも忘れて考えていた。オレのきままな人生先行き不透明警報発令。こりゃーいったいなんだい。


  ○月○日

スーパーへアイスクリームを買いにいった。親子連れがいた。ちいさな女の子があーさはじゃどこから来るかしら、あの空こえて雲こえて、と片手で冷ケースの縁を持って歌っている。おや?古い歌を知ってるね。そして、ねぇねぇ、ママ、あさはどこから来るかおしえてよ。知ってる?あたし知りたいんだ。うるさいわねぇ。そんなのどこからでもいいでしょう。たぶん、地球の裏側じゃないかしら。よくわからないけど。それより、いそいで帰って宿題やらなきゃね遅れちゃうし。オレもガキのころあーやって母親に聞いたのかな。ぜんぜん覚えはないけれど。そればかりかだいたい小学校時代のことがまるっきり浮かんでこない。スッポリ欠落している。オレには小学校時代はなかった。どうせ貧乏でいい記憶じゃない。物が無い時代で楽しいことはなかった。もちろんアイスクリームなんて無かった。やはり物やおカネがないとだめだよね。だからおもいださなくてもいい。みんなオール貧乏だったのだけれど食べられないのは苦しかったよ。おなかいっぱいまんじゅう食べたかった。でも、いま、物がいっぱいあって楽しいでしょうと言われても、うーん、どーかなーと考えざるをえない。生きてくってめんどうくさいな。あまりいろいろ考えないようにしようとおもう。


  ○月○日

 酷暑。まだ雨がふるのかと思っていたら晴れの太陽大魔神が突然やってきた。来るなら来ると一言わたしに言ってくれればいいのに。しばらく涼しかったから強烈な戻りパンチである。静岡市は39度を越えたという。激しい暑さである。熱中症アラートが鳴る。こんなに暑ければこのときのことをよく覚えていられるはずなのだ。しかし去年のいまごろは暑さ対策グッズにどんな物を使っていたのかなと考えても今年になってみるとまったく思いだせない。一年たったらきれいさっぱりみんな忘れちゃうんだね。楽しいことはもちろん苦しいことでさえも。それだからのんきなことを言って生きていられるんだ。去年の物が使えるはずもないのに一時の間に合わせにと押し入れをみる。ない。なんにもない。捨てたはずだと無理に納得させる。ネットをみると太いネックレスのようなものを首にかけた写真が目にとまった。これは首輪だ。輪っかを冷やして体感温度を調整してさげるらしい。これじゃイヌみたいだよ。暑いよ。わんわん。オレもとうとう階級がイヌに成り下がったのか。


○月○日

 相談ごとだ、と彼に訊いた。ここで?そのひとが好きで好きでたまらないときはどうするか。オレは強風に声を遮られながらフェルナンデスにきいた。突然の質問にも彼はあわてなかった。こうするのさ、と、ウエットスーツのまま二三歩歩いたかとおもうと断崖から身を躍らせ30メートル下の海へ飛び込んだ。まさか飛び込むとは。彼の固まりはゆっくりと映画のように落ちていった。恐怖のあまり腹ばいになり身をのりだして目をこらしていた。暗くなってきたあたりの波間を必死にさがした。海面になかなか出てこない。彼があまり泳ぐのが得意でないことはオレは知っている。気の遠くなるほどの時間実際長い間の時間をそう感じた。正確には何分くらいたったのか白い波がくだけるあんがい岸よりに黒い点のようなものが浮かんだ。ああ、助かった。あたりまえだ。彼は自殺しようとしたわけではない。オレは、彼女のことが好きだったらどうするかときいただけだ。それに対して、海へ彼は飛び込んだ。彼は前へ前へと進めと言っているとおもった。彼が戻ってくるには時間がかかる。まず、おおきな岩山を裏側へぐるりと回りこみルートをさがしながら頂上をめざしてここへくるのだ。こんな岩の絶壁を飛び込むような人間はいないから戻る道などない。でも、彼はきっとここへ戻ってくるとおもった。ビバークの準備をする。避難アイテムのツェルトとシェラーフザックを出して寝る準備をする。この岩の台地で朝まで必ず待っていようと風が強くなってきた孤島の上でいつまでも立ち尽くしていた。寒くて凍えたがこころは温もっていた。


  ○月○日

 ボーっとしているときが多い。別段深く考えているわけではない。つまらない些事だ。みんなに言われる。話をしているときでもどこか遠いところを見ている表情をすることがある。あれはひとのはなしを聞いていないのかと友人に窘められた。話しをしているときスポンと会話がぬけて別の声が聞こえることもある。まえからのクセだからしかたがない。病気ではないとおもう。小説を書くにはどうするか?ぼーっとした脳内くんから質問がきた。第一にそれは書かれたそれが面白くなくてはならない。面白くないものなんかだれも読まれない。面白くするには読者の意表をつくことだ。ありきたりではない筋立てと練られた登場人物のキャラが重要になる。クマやカワウソが家を訪ねてくる話はどうか。自分が空を飛んだり消えて無くなるのはどうか。難しいのは荒唐無稽だけでは漫画の世界になる。リアリティを追求すればこの世のどこにでもある話になる。同じものでも視点を変えれば違った見方になる。横からみたり斜めから見たりすることが必要になるのだ。まぁ好きでなければやれないことですね。

                       

○月○日

 エミリーからLINEがきた。イヤな予感がした。彼女からメッセージがくるとろくなことはない。読むと、あなたとはもうお別れしますとあった。理由としてはいろいろあるけれどまずことば遣いが悪いからとあった。電話でくどくどと聞くのがいやだったのだけど確かめなければ詳しいことはわからない。どこかで飲んでいるらしくグラスのふれ合う音がした。いつものように、ああと、気の無いかったるい返事をした。オレはこの女のどこがよかったのだ。騒ぎからちょっとはずれたところにきてから、なあーにっ、なんか用と言った。なあーにってさ、言葉遣いが悪いってどーういうことよ?うん、そのことね。例をあげていうと、といって話しだした。そんなに酔ってはいない。つまりぃー、電話かけたよ、じゃなくって、暑くてたいへんだとおもったからきみのために電話かけたよ、っていうのよ。つまりぃいたわりよぉー。チッと聞えないくらい小さな舌打ちがでた。それから、送ってっく、じゃない。遅くまで身体がたいへんそうなので心配だから車で送るよ、なの、わかったぁ。彼女の複雑で変質的な性格に振り回されていた。でも煩悶する状態にありながらもその性格はオレを魅了してやまなかった。でも、それは、かつてはだ。いままでは、ということ。オレのキモチの限界というやつもある。話しているとますます気が重くなる。公衆電話をすぐきった。安アパートに帰ったらムラムラと怒りがこみあげてきた。バカヤロー、チキショー、ふざけやがって、オレをなんだとおもってるんだ。クズだとおもってやがるのか。ああそーかい、わかったよ。しつれいしました。ぶちぎれた。安物のタンスを蹴ったら穴があいた。花瓶を投げたら中の水が一面にこぼれた。おいてあった自転車を窓から放り投げた。彼女のぬいぐるはゴミ箱に捨てた。みるみる六畳間はごみの山になった。隣のよく飲みに行く兄ちゃんがとんできた。どうしたんだ、こんな夜に。いちいち説明するのもいやだったのでフトンをかぶって寝てしまった。遠くで汽笛が鳴っている。やっぱひとりはさみしいなとおもった。口中に思い出したように苦々しさがひろがってきた。で、も、しょうがない。人間、やはり最後はひとりになるのだとおもった。ふたりの生活というのは自分たちだけが作った妄想だった。やせがまんではないそれぞれが自立した暮らしが希望だった。でも実際こうして別れようとしてみると清々しい自由さも同時に感じた。キッチンへいって茶碗に焼酎をそそぎストレイトで飲んだ。歯ににしみるほど苦かった。


○月○日

 新聞を読んだ。TBS NEWS DIGによれば日本女性がスイスで安楽死したという。64歳でまだ若く記者が他の選択支もあるのではと引き止めると本人はこれしかないときっぱり否定して笑っていたという。念願かなったとも書いてあった。あまりに潔い最期。なんて神経のず太い人だろうと思った。それにひきかえオレは情けないくらい弱い人間だろうと恥ずかしくなった。父も母も知らせを聞いてわたしが病院へいったときすでに葬儀場へ向かった後だった。オレはは忙しいと仕事になすりつけわざと面会をさけた。どうしてもそこで別れを確認するのはイヤだった。親の、最期の苦しさをしっかり見ないように逃げていた。情けないやつだ。今までほんとに苦しいことは無かったのではなくいつも苦しいことを見ることから逃げていた。ほんとのことを直視しない弱さ。そんなんで小説なんて書けるのか?笑っちゃうよ。そしてあらためてこの人はすごい人だなと感服した。このように生きたら自分もどんな逆境も乗り越えられるだろうとおもった。一方で、死にたいくらい苦しいこともたくさんあっただろうなとも想像した。死ぬほうが楽だと本人も言っている。死を選んだのはけして単純な理由ではないだろう。進行性の難病パーキンソン病を患っていたGさんは当日医師に促され自ら手に薬を持って飲み込んだ。そしてレマン湖に散骨された。補足になるが高校生の頃母親が男を引っ張りこみ早く家を出たかった話しや、仏人の恋人がいて最期を看取ることになっていたところ最近男に重い病気が見つかり別れたという。こんな悲惨な実話を次から次へとさらさら書かれては小説の立場も危うくなる。          

              

 ○月○日


 蝉が鳴く季節になった。静かな林を歩いているといつのまにか夏になったんだなと思い込まされる。さて、さてといっても別にやらなければいけない仕事はない。あのーう。向こうから歩いてきた若いふたりずれの男のほうが急に声をかけてきた。なんでしょうか?ペットボトルの栓が開かないので開けて欲しい、と言っている。でも、それを、なぜ、すれ違うオレに頼むのか?マジマジと相手の顔をみた。いきなり歩いている人間にそういうことを言うひとはいない。女のほうもすみませんと少し会釈した。仕方がないので首からタオルを外し受け取ったボトルの栓の上にかぶせ右にひねる。すぐ外れた。ふたりは一斉におおといった。おおと言われるものでもない。かんたんですよという顔をして渡す。ふたりはありがとうございましたといってから夫が工場で機械に腕を挟まれいまはぜんぜん使えなくなったと話した。女ももともと生まれつき小児マヒの後遺症 があり力が要る作業はできないといった。ふーん、そうだったのか。分らないものだな外見からは。お互い身体の不自由な者同士だった。毎日の生活はどうしているのかなとちょっと気になったが深入りし過ぎる。いつの間にかあたりに夕闇がせまっいて蝉の声は聴こえなくなっていた。


 ○月○日


 桶から水がこぼれ出た。あたりに霧の虹をかけ勢いよく出た。冷たい水だ。きれいな水だ。あの夏の日の朝ひとりの米兵が村にやってきた。喉をならして深いつるべ井戸の水を飲んだ。腕にけがをして血がでていた。みんな怖がって逃げた。戸を閉め外の様子を覗いた。兄弟や親や叔父さんを殺した敵だ。仲良くなんかするものか。助けないぞ。米兵は疲れきっていた。夜になった。空腹になった米兵はあたりをうろつきまわった。夫が戦争にかりだされた家は固く閉ざしたままだ。開けるものか。手にはカマを握っていた。とっととどこかへ立ち去れ。早く行け。翌朝とうとうオレの家の扉前に立った。オレは怖さに振るえながら戸を少し開けた。そしてその開けた隙間からおそるおそる蒸したサツマイモとトウモロコシを差し出した。それは素早く消えた。食べ物を急いで噛んでいる音がした。夜遅くジープがやってきた。なにか英語らしき言葉を無線で話していたがやがてその男を乗せてどこかへ立去った。夜、寝てからその米兵が泣く夢をみた。外人でも泣くことがあるんんだなとおもった。朝がきた。そんな米兵のうわさをする村人はひとりもいなかった。いつもの夏の気だるい一日がはじまっていた。


○月○日


 結局、アレなんですかね。ひとが生きてゆくのにいちばん大切なことは愛情なんですかね。愛情ですよ。愛情。お金なんかなくてもどうにかなる。でも愛情が無くては人生けっこう苦労する。男のオレがこんなこと言うのもこっぱずかしいのですが。愛といっても男女間の恋愛とかいうんじゃなくもっと大きな人類愛とか家族愛とか郷土愛とか愛国心といったものです。愛というからには対価をいっさい求めない。これやってあげたからこれやってくださいじゃない。やってもらったからやってあげますじゃない。自身で実行したらきっと自分もすがすがしくなるアレです。こういうのはやろうとしてできるものじゃない。自然に自分の魂の奥深くに蓄えられるものではないでしょうか。やれるひとはさっとやりますね。もう考えてませんね。そんなことをあれこれ考えている間にどんどん齢をとってきます。だから高齢になるのもまんざら悪いことばかりじゃないとおもうんですよね。オレは。 

             

   ○月○日


 そのころ人になにかを頼むというのがとてもいやだった。けれどもじぶんでできなければ人に頼むしかない。いっとき、ひとにあれこれ依頼するのは恥じだと思っていた。なんであんなに頑なに自分の説を曲げなかったのか。頼むというのは自分ができないことを証明しているわけだからそれをあからさまにするのがいやだった。へんちくりんなプライドです。これなんですね。これがあると伸びません。だって、いくらがんばったところで自分の実力以上のものはでないのです。おのれのもっているものだけしか結果に反映してきませんから。突然変異はないわけです。努力したら努力した分までしかでません。ところが、ひとに頼んだ場合はかならず新しい発見があります。他に脳があるとたいへんなことになってきます。自分に無い才能がたくさん出てきますから。それらが作成作品に集積されてくるのですからさらに驚くような技能の発露となります。真似ても真似以上の作品を生み出せばそれは新しいものになります。こんなことも気がつかなかったなんて無知っておそろしいことです。

 

 ○月○日


 国宝曜変天目茶碗。陶器に興味がなくても知らない人はいない。主として内側に弱い光でもまばゆく輝く星の数々。小さな宇宙と呼ぶ人もいる。これが、制作の段階での溶剤塗布の失敗かあるいは意図して作られた物かは論議されているそうだ。どちらにせよ美しいものは美しい。意図しょうがしまいがそんなことは関係のないことだ。こういうことに労力をかけ延々とやっているのはまいどで実にばかげた話しだ。仮に失敗作だったらどうなる。すでに、天下に名品として流布されている。いまさら贋作ですと言うのか。混乱はかえっておおきくなる。こういうひとはテーブルの上におく箸の位置も決めているんだろうね。右だ。上だ。こっちだ。あっちだ。ほんとにどっちでもいいじゃんか。おいしいメインディシュがもう湯気があがってでているのに。料理が冷めちまうぜ。いいレストランへなにしにきた。仲間ともたのしい会話もせず、バカ話で笑いもせず、おんななの人に好きだよといいもせず、たまにはケンカもせず。そういうひとになりたくはない。容れ物はどうでもいい。


 ○月○日

 木陰にいた。小さなベンチに腰掛けている。背後には池が広がっていた。西風が強く吹いていてさざなみがたっている。緑陰に入ると思ったよりも暑くない。真夏の空は透明でいがいに澄んだ色をしている。空の下のほうに灰色の積雲が流れている。稲穂も伸びてきた。鮮やかな緑の色が左右に波打っている。イヤホンからQueenの曲が聴こえてきた。

 ♪ママー、人を殺したんだ。頭に銃口を向けて。引き金を引いたら、死んだ。ママー、人生は始まったばかり。なのに、もう何もかも投げ捨てた。ママー、 泣かせるつもりは無かったんだ。ママー、もし明日の今頃僕が帰って来なくても今と変わらず過ごしてね。ママー♪。と歌う。よくとおる声だ。いい歌だとおもった。こんな明るいスコーンとした田園で聴くような歌じゃないと最初は思った。だが聴いているうちに違和感はしだいになくなってきた。なじんできたというべきか。透き通った青いそらよ。大きく波打つ稲よ。広がる池のみなもよ。吹き渡る夏風よ。ママー、オレまだ死にたくない。どこまでも絶叫し続ける。聴いているのは現実であたまで考えているのは夢だ。たったひとりのたんぼのなかの白日夢ではある。


○月○日


 走る。海岸線は湾曲して左にカーヴしている。その先に朧気な岬が見える。それがゆっくりせり出しながら近づいてくる。夜明け前の静かな海。日が再生される朝。不遜にも自分を中心にまわる天体というやつを感じる。すべてが自分のために用意されたとっておきのステージ。さくっさくっ。スニーカーが黒砂にめりこむ。右手は松林の土手の影が連なっている。潮の匂いが強くなる。ふと、昨夜なにを食べたのかおもいだせないでいる。そうだ。急に友人が訪ねてきたんだ。ふたりで近くの喫茶店へいった。なんかあったのと聞くと、別れたいときりだされた。唐突だったので、えっ、だれとって、思わず聞いた。ホンカノだよ。あ、そうか。とにかくこういうときは飲むにかぎる。スナックへいってビールを飲んで一曲歌う。歌うことに興味はない。品の無い歌を聴きたくはないし歌いたくはない。無理してもう一軒くらいいったかな。太った女が真っ赤な口紅をつけて横に座った。なんだか知らないが胸にバラをつけていた。知人が亡くなったなったという。頼んだチューハイはオーダーストップ。暑苦しかった。会話もはずまない。俗っぽいバカ話をするのは苦手だ。酒が弱くなっきた。おにいさん店が終わったらこないとささやかれた。そんな趣味はない。帰ってショパンでも聴いたほうがいい。それからのことはよく覚えていない。相談のことはもう一度よく考えてみるということでその場は帰っていった。家に帰ったら2時だった。そのまま寝た。寝苦しい夜だった。明け方自分が死んだ夢をみた。自分は棺おけにはいっている。周りを取り囲んだ少数のひとが花を棺に入れた。なにを話しているのかぼそぼそする。そのうち長いトンネルに連れて行かれた向こうのほうには出口がみえている。ここはどこですかと聞こうとして目がさめた。あたまが重かった。そのまま夜も食べないで今朝もなにも食べないで今朝走っていたのだ。断食しているわけではないが成り行きでこうなった。このごろしっかり食べてないなあ。オレもしっかりしなくちゃな。ただそうおもってみただけだよ。本気ではない。

 

○月○日


 水を飲む。冷たいやつがのどをとおりすぎてゆく。ゴクリ。おーまてまてオレをおいてゆくな。くすりが言う、かぜの錠剤だ。そんなところでまだうろうろしていたか。早くしろよ。飲むぞ。コレステロールのくすりと導眠剤とかが文句を言っている。その日の気分であっち飲んだりこっちを飲んだり。とくに決まりはない。



  

            (未完の完)        

 




 この「人生なんて無意味だ」を未完にいたします。いままで適切な推敲もせず書いてきました。このへんでこの文章だけでなくいろいろな文章を丁寧に手直しする必要がございます。拙作をお読みいただきまことにありがとうございました。

       

                          y.shibata


今日は令和6年10月8日(火)だ。書くための詳細なプロットがいまもってきまらない。思考力が散漫だ。衰えている。一時、ワードか一太郎で書こうとおもった。だが、いろいろ煩雑なことが分った。それで、書くならばやはりこの欄で再開しょうとおもっている。書きたいという衝動は、X、インスタ、で多少はいやされている。とくに問題はない。さて、これからどうしょうかな。


                          y.shibata








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

日記体小説・人生なんて無意味だ。 柴田 康美 @x28wwscw

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る