第4話~かちゃくちゃねい(大変だ)~

古びた、わらぶき屋根の家がポツンと一軒建っていた。

その庭に一羽の雀が空から降りてきた。

チュチュチュン。「ドン助どん、ドン助どん、おコメをちょうだいな。」

家には、あまりコメはなかったが、ドン助は「いいよ。少ししかなくていい?」と微笑んで答えた。

雀は、首を右左とあわただしく動かしながら嬉しそうにおコメを食べた。

雀は歌う「ドン助どん、ドン助どん、ドン助は、村一番のおっとりもの。

村一番のノロマさん~。」

その様子を天空から観ていた道明寺は、

なんなんだ。ドン助という名の男は、姿、声といい、わいそのものじゃないか。

やはりこれは夢かな?と道明寺は思った。

そのころ、ヌエという妖怪が白昼堂々と、村に現れて村一番のかわいい娘をさらっていった。

そのことで、村は大騒ぎ。村人達は怖くなり、家を閉めているところが増えて、村の通りは閑散となった。

ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。

村では毎年何人かはヌエの食い物にされていが、やはり、ヌエのことが怖くて、怖くて誰も娘を助けに行こうとする人はなかなか現れない。

その中、ドン助の家では、母親が外から戻って来て、

「ドン助、た・た・大変だよ。ハナちゃんがヌエに攫(さら)われたよ。」と、慌てて話した。

ドン助の母親は、蒼白(そうはく)な顔をしていた。

「母ちゃん、それ本当?」

「ハナちゃんのお母さんから直接聞いた話だから間違いないよ。

ハナちゃんがお前のために作った着物を、お前に届けようと家を出たところ、ヌエに攫われたと言っていたよ。なんでも、

一ヶ月程前にハナちゃんは、お前の着物がボロボロになったのを見て、ハナちゃんは新しい着物を作ったらしいよ。」

「えっ・・・・。」

ドン助は頭が真っ白になり、続ける言葉がなかった。

あのことを思いだした。

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