第3話~けやぐ(仲間)~

「ン・・。あぅわ。よく寝た。しかし、変な夢だったな~。」

確か闇田や華ちゃんと会った。それから事故に会い・・。

これは夢?それとも現実かな?

でも痛くもないしな。

上半身を起こし周りを見てみた。

「えーわいの部屋じゃない。やばい。やばい。やばいよー。」

立ち上がり、「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していた。

見たこともない奇妙な屋根のない部屋。

やはり死んだのかな?

道明寺はしゃがみ込んだ。

「う・・なんだ?」

その時、こっちに雀が近づいて来た。

なんと雀は歌をうたってる。

「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」

しかも、派手な浴衣を着て、その下にピンク色の襦袢を穿( は) き、赤色の襷(たすき)

を締め、団扇( うちわ) を片手( 片翼) に持ち、空中で激しくピョンピョンと踊っている。

こわー。やっぱ、わいは死んだんだ。そうだ。違いない。

「お願いだから、ワ・ワ・ワ~。こっちに来ないで~。」

雀はそれでも近づき道明寺の目の前にフワッと降りた。

「君はなに(何者)?」

震えながら道明寺は雀に聞いた。

「チュンチュン。わだば( わしは) 、なの( 君の) 、けやくだ~(仲間だ)。チュン。」

雀は頭を左右前後に素早く動かしながら答えた。

「どこの言葉だよ。方言?訛り( なまり) がきつくて、意味不明だよ。」

「チュンチュン。

わいはー(驚いた)。わがねんだか(知らないのか)。

チュンチュン。

そうか、分からないか。こっちの世では津軽弁が標準語なのになあ~。

フランス語に似たイントネーション。最高だとは思わないの?チュンチュン。

うんん~。いいかの~。お前の状況について、説明する。

確かにお前は実体のない(死んだ)存在となってしまったのじゃ。

そのことを教えにきたのだが。わかってチョウだい。きびしーいっ。か?。

チュンチュン。」

何を思ったか。雀は左手(左翼)を頭の回し、右耳を引っ張って格好をキメテいた(財津一郎のギャグのつもりだが、古すぎるギャグ)。

「その格好な~に?意味がわからない・・・雀。はあ~。やはり、わいは死んだのか。

で・・、教え役がなんで雀なんだ。

てっきり厳格そうな仙人や天使、それともエンマ大王が現れると思っていたのに。」

「チュンチュン。見かけで判断するのは良くないぞ。まあ、ゆっくりとこの世に馴染んでみてはどうかな。チュン。」

「う~ん。そうだね。」

「チュンチュン。その言葉はなんじゃ。こう見えて、わしは何百年もこの世界で過ごしてきたのじゃ。年上には敬~語。ほれ、敬語だろ、チュン。」

「はは~。大変申し訳ございませんでしたでござる。」

道明寺は両手を広げ大袈裟にお辞儀をした。

「チュチュチュン。お前~。わしをばかにしてないか。まあいい。後で下界を覗いてごらんチュン。それじゃあな。ババンバ・バン・バン・バン♪。アビバノンノン♪。お風呂に入れよ。宿題やれよ。歯をを磨けよ。ババンバ・バン・バン・バン♪。アービバノンノン♪。いい夢見ろよ。あばよ。元気でな。

バハハ~イ(バイバイ)。バイナラ(さようなら)。バイ、チュン。」

それを言い終えると、自分の仕事に納得したのか、雀は歌い跳ねながら飛び去っていった。最後に「らっせーいらー・・・。」と付け加えて。

「あれ?燕さん。いや、雀さん、団扇(うちわ)を忘れてるよ。おーい。戻って~。あ~あっ。行っちゃったよ。」

本当、よくわかんない、変な雀だったな。

それから、道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。

「わいがいた世界とは違うなあ。テレビもねえ。ラジオもねえ。携帯ねえ。車がない。電柱がない。アスファルトの道路までもない。なあ~にもないな~。うん~。暫く空中から覗いてみようっと」。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る