第23話
「これは、本当に簡易的な罠なのでしょうか?」
「ぐすん、危うくペシャンコになるところでした」
涙目で倒れてきたドアの隣にへたり込むファティマ。
「この様子だと、残りの二つも何かしらの罠が仕掛けられているでしょうね」
「ですが、これで確率は二分の一! どちらか一個は当たりですよマテウス中佐!」
ファティマに促され、自信満々に頷くマテウス中佐。
「私は運がいいのです! 見ていて下さいファティマ殿、私があたりの扉を引いて見せましょう!」
マテウス中佐は真ん中の扉の前に立つ。
「先ほどの扉はドアノブを引いていれば、押し潰されずに素早く逃げることができたのでしょう。 つまりこの三つの扉は、ドアノブに仕掛けをしていると見せかけてドアの方に仕掛けを施しているのでしょう!」
得意げな表情で大きく頷くマテウス中佐は、なんの迷いもなくドアノブに手を伸ばす。
「ここは余計なことはせず、ドアノブを使って扉を開けヴァババババババババッバ」
ドアノブに触れた瞬間、マテウス中佐は全身けいれんしながら高速振動し始める。 そして、薄暗い部屋の中でマテウス中佐が青白い雷閃を纏う。
その光景を見て慌ててマテウス中佐に駆け寄るファティマ。
「ま、マテウス中佐! まさか、そのドアノブには雷石がっタタタタタタタタタタ!」
マテウス中佐をひきはがそうと、腰に腕を回した瞬間、ファティマまでもがけいれんしながら青白い雷閃を纏い始めた。 心なしか全身の骨が透けて見えている気がする。
数分後、無理やりドアノブから引きはがしたマテウス中佐と、巻き添いを食らったファティマが地面の上で半泣き状態で横たわっていた。
「もう、もう嫌です! もう嫌ですぞ!」
「うう、私は巻き添えにされました。 災難です」
第二関門の時点で悲鳴を上げている二人。 しばらくの間涙ぐんでいたのだが、数分後にのそのそと起き上がる。
「はぁ、この扉があたりだったのですか」
「三分の一の確率だったというのに、二連続でハズレを引くとは……」
二人は潤んだ瞳で立ち上がり、最後の扉の前に立った。 お互いを見つめ合い、確認し合うようにゆっくりと頷く。
そうして二人は同時にドアノブへ手を伸ばした。 ガチャリ、と乾いた音を立てながらゆっくりと開く扉を見て、二人は顔を見合わせて歓喜の表情を浮かべる。
「当たりを引けました! これで先に進めますぞ!」
「ここまでほんっとうに大変でした! これでようやく……」
ファティマは言葉の途中で眉を歪める。
「あの、この先……真っ暗でよく見えません」
「た、確かに。 ランタンが欲しいところですが、仕方がないですね」
部屋に用意されていたランタンの灯りがギリギリ届いていなかったため、扉の先は真っ暗闇だ。 マテウス中佐は訝しみながらも扉の向こうへ一歩踏み出す。
すると、
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「マテウス中佐ぁぁぁぁぁ!」
マテウス中佐は一瞬にして姿を消し、ファティマは悲鳴を上げながらドアの向こうに体を乗り出した。 すると、下方からばしゃあんと音が鳴り、ファティマの元まで水飛沫が上がってきた。
「え?」
ファティマは恐る恐る、ドアの淵に捕まりながら暗闇の中へ足を出したのだが、
「落とし穴じゃないですか」
死んだ魚のような目で、苛立ちを含んだぼやきを漏らした。
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