第241話 孤独に耐え抜く力を

自由の森の群れたがる雑魚どもは、家庭さえあればなんとかなると思っていた。

結婚して家族をもって子どもが生まれれば、孤独なんか無縁になる。

温かくて楽しい、笑いの絶えない家庭さえあれば、

・・・。


だが、彼にそんなものは通用しなかった。

生ぬるくむさくるしい、笑いものにもならぬ家庭。

結婚して家族をもって子どもが生まれたところで、

実態それでは意味もない。

自由の森の群れさせたがる雑魚どもの考えなど、

そのど真ん中以外のどこにもない。


小室直樹の本を読んで、彼はこの言葉を知った。

 アノミー = 無連帯

孤独に耐え抜く力がないと、生きていけない世界。

それが、執筆業。

自ら書き残していったものは、ただそこにある。

その文を自らが書いたという事実だけが、永遠に残るまでのこと。


そこには、温かさも楽しさも笑いもない。

それを見つける努力は、読む者自らに求められる。

書く者においては、言わずもがな。

懇切丁寧に助けてくれるほど、彼の文章は甘くはない。


孤独に耐え抜く力なくして、彼の仕事は成立し得ない。

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