第222話 かのペンの次の標的は、何処の誰

家制度の残りカスを、あの男は活用した。

彼の自立の役に立つだろうと思ってかどうかは知らない。

だが、あの男はまったくの勘違いをしていてた。


この地でしてもらえなかったことを、

いずれ結婚して、子どもができたときに、

子どもに託して、できるようにしてやればいい。

そうして、ナントカ家(け)を・・・。


 この男は、家制度の残滓=残りカスを悪用するカスだな。


対手の若者は、そう判断した。

そして、彼に言い渡した。


 子どもに託すとか、姑息な戯言を説教ごかしても、無駄ですよ。


かの若者が進学したのは、法学部。司法試験にも手を出し始めた。

そんな人間が、出来損ないの家制度などに聞く耳を持つわけもない。

そんなことも気付かないのか、

かの男は家庭というものの良さを説こうとした。

無論、それも歯牙にさえかけられなかった。

感情込めてのアドバイスも、わが子のかわいさというものも、

かの若者の前には産廃送りの産物でしかなかった。


やがてかの若者は、彼を相手にしなくなった。

当事者能力もなく、理解力もないそんな彼に、

わざわざ出向いて話を聞くまでもないからだ。

はした飯つまんだところで、何の価値もない。


田舎者のホザく家制度の残滓など、かの若者には通用しなかった。

偽善福祉屋稼業のアホどもが!

と言わんばかりに、唾棄された。


かの若者は今、分別盛りの50代半ば。

作家業の一環として、詩を作っている。

彼にとっては、詩を作り続けることが田を作り続けることなのである。

小賢しいだけの資格取得など、彼にはもはや無用なのである。

恩人と言える人の最期のアドバイスさえも超越し、

かの元若者は、今日も、詩を作っている。


それが、総括と称して人を殺すことであるとしても、

かの作家は、その筆を下ろすことは、ない。

そのペンにかかれば、

かつて家制度の残滓をちらつかせた者共も、

田舎町の一つや二つも、

すべて叩き潰し消すための相手に過ぎない。


嗚呼、次の標的は何処の何、何処の誰?

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