第200話 押してみ!

1000円のフリー切符で走り回ったあの日。

夕方遅く、金光駅から岡山に向けて帰る電車。

なぜか、車掌さんたちと仲良くなった。

それで、車掌室でかれこれ話していた。


電車は、庭瀬駅に到着した。

乗降確認した若い車掌さんが、言った。


押してみ!


その示す先は、ドアの開閉ボタン。

中2の私は、そのボタンを押した。

列車のドアは、すべて閉まった。

程なく、電車は庭瀬駅を出発した。


自分のボタン一つで、すべてが変わるのだ。

そんな経験をさせてもらったあの日。


今ならこんなことを部外者にさせたら、オオゴトだぜ。

だけど、あの頃はすごかった。

必死で学ぼうとする少年には、誰かがいろいろと教えてくれた。

国鉄の職員さん。若い人も、年配の人もいた。

役付きの人も、そうでない人もいた。

夏でも上下白の服を着た人も、青いワイシャツの軽装の人もいた。

管理局行こうものなら、普通に背広姿のおじさんやおにいさんたち。


これなら、職場体験なんて学校でやらなくてもいいくらいや。

テメエで学んで得たものだけに、そりゃあ、身につくよ。

そういうものを積み重ねて、今があるわけだ。


逆に、当時の自由の森関係者が与えようとしたものには。。。?

それについては、ここでは言わないでおこう。

言わぬが花というものよ。

でも、ただ一言、言わせておくれ。


自分で求めて得たものしか、実につくことはない。

相手が意図して与えようとしたものは、さして身につくこともない。

ましてや、相手固めにしようと思って与えようとしたものなど、論外である。

もう一度、言っておく。


自分で求めて得たものしか、真に、自らの実につくことなど、ない!

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