第137話 昭和55年の送り火

松田聖子がデビューした、1980年。

その年、かの少年は学校近くの短期里親さん宅に。

その家のおとまりも、これで3年目。

この「事業」は、すっかり軌道に乗っていた。


そういうわけで、この日の夕方、その家の庭。

彼は、送り火を体験することとなった。

厳密には彼は、その家の構成員ではない。

だが、何年も通ってきているからこそ、

しっかりと、彼の御先祖様もお送りしたのです。


1975年の今頃。

彼は、岡山市東部の祖父母の家にいた。

5年ぶりに迎える、家でのお盆。

昭和50年夏。ちょうど、キャンディーズがブレイクした年。

彼のほうは、ブレイク違いで岡山市の住宅地に。


そして迎えた、昭和55年の夏。

その年の夏から、何かが変わり始めていた。

その答えはもうすぐ出るところまで来ていたのだが、

無論彼は、そのことに気付いていなかった。

だがその答えは、自由の森の職員風情に止められるものではなかった。

彼を止められなくなる予兆は、このとき、確かに育まれていたのである。


鉄道少年マニア君の快進撃は、もうすぐ始まる。

あの送り火は、その狼煙(のろし)だったのかもしれない。

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