第103話 一輪車

あれは、自由の森が移転後の1982年頃だったか。

なぜか、一輪車がやってきた。

老若男女、と言っても最高18歳のこの地において、

その多くがこのおもちゃともつかぬ乗り物に夢中になった。


さて、後に作家となったかの少年。

この年、自転車に乗れるようになって、ジャンジャン外出中。

一輪車を、彼は見た。

だが、何の興味も示さなかった。


実用性のないものに乗れても仕方なかろう。

自転車さえあれば、さまざまな用向きがこなせる。

そんなものに構っておるヒマなどないわ!


かくして彼は、一輪車に乗ったことは一度もありませんでしたとさ。

めでたくもあり、めでたくもなし。

そして何より、実もふたもなしね。

もとい、実「だけ」は、しっかりとっていたってことね。

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